
訪日外国人が日本で困ったことはどう変わった?最新調査から読み解く受入課題
旅行ガイドブック『地球の歩き方』を制作する企業が運営するインバウンド向け旅行メディア『GOOD LUCK TRIP』では、様々なテーマで訪日外国人の意識調査を独自に行なっている。
2023年と2025年の年末には、訪日外国人が日本旅行で「困ったこと」をテーマに独自調査を実施。
2023年の調査では、Wi-Fi環境が最も大きな課題として挙げられていたが、2025年の調査では、ゴミ箱や喫煙所など、複数の項目が並ぶ結果となった。
この記事では、2つの独自調査の結果をもとに、訪日外国人が日本旅行中に困ったことの変化を整理し、現在のインバウンド受入環境における課題の傾向を読み解く。
訪日外国人の困ったことに関する2023年・2025年の独自調査概要
この記事で比較する2つの独自調査について、調査対象や調査方法などの前提条件を紹介する。
どちらの調査も海外に住む外国人を対象にした、「日本旅行中に困ったこと」に関する定量調査だ。
調査方法や回答者数などには違いがあるため、それぞれの調査条件を踏まえたうえで傾向を読み解いていく。
2023年の独自調査の概要
『GOOD LUCK TRIP』に訪れた海外在住10代~60代以上の男女891人を対象に、「訪日中に困ったこと」について、インターネット調査を実施。
- 調査対象
- 海外に住む10代~60代以上の男女
- 回答者数
- 891人(英語圏106人、韓国語圏102人、簡体字圏103人、繁体字圏580人)
- 調査期間
- 2023年5月9日(火)~2023年5月15日(月)
- 調査主体
- 訪日外国人向け多言語旅行情報サイト『GOOD LUCK TRIP』
- 調査方法
- インターネット調査
2025年の独自調査の概要
2025年の定量調査の対象は、過去10年以内に訪日経験のある外国人。
訪日外国人がどのような点で困りやすいのかを、言語圏別の傾向も含めて数値で把握できるよう設計されている。
- 調査対象
- 海外に住む10代~60代以上の男女/過去10年以内に訪日経験のある男女
- 回答者数
- 1,163人(繁体字圏809人、韓国語圏143、英語圏124人、簡体字圏87人)
- 調査期間
- 2025年12月10日(水)~2025年12月21日(日)
- 調査主体
- 訪日外国人向け多言語旅行情報サイト『GOOD LUCK TRIP』
- 調査方法
- インターネット調査
2023年の独自調査で訪日外国人が最も困ったことは「Wi-Fi環境」
2023年に実施した独自調査では、訪日外国人が日本旅行中に困ったこととして、「Wi-Fi環境」が31.5%と最も多く挙げられた。
次点の「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」は20.2%で、1位とは大きく差がついている。
調査時点では、公共施設や観光地、交通機関などで無料Wi-Fiが充分に整備されておらず、インターネットに接続しづらいと感じる場面が多かったことが背景にあると考えられる。
海外の主要都市と比較すると、
- Wi-Fiが完備された場所以外では拾いにくい
- 公衆Wi-Fiの数が少ない
- どこでWi-Fiが利用できるのかわかりにくい
という声も多かった。
訪日外国人にとって、スマートフォンは移動手段の検索や地図アプリの利用、翻訳、情報収集など、旅行中の行動を支える重要なツールだ。
そのため、Wi-Fi環境の不足は、日本旅行全体の利便性に直結する「困ったこと」として強く認識されていた。
この結果から、2023年時点では、受け入れ環境における最大の課題が通信インフラにあったことがうかがえる。

2025年の独自調査で明らかになった訪日外国人の困ったことの多様化
2025年に実施した最新の独自調査では、訪日外国人が日本旅行中に困ったこととして挙げる項目に変化が見られた。
2023年の独自調査では「Wi-Fi環境」が最も多かったのに対し、最新調査では「ゴミ箱の少なさ・場所のわかりにくさ」が最多となっている。
続いて、「公衆無線やLAN環境」「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」が上位に並んだ。
注目したいのは、これらの困りごとが、観光スポットそのものの魅力や施設・店舗の接客品質とは直接関係しない点だ。
旅行中に「捨てる」「読む」といった日常的な行動を取る場面で支障が出やすい項目が、困りごとの中心になっている。
特にゴミ箱や多言語表示は、その場での判断や行動が求められるため、少し迷うだけでも行動が止まりやすい。
結果として、探し回る時間が増えたり、周囲の人の流れを妨げてしまったりするケースも考えられる。
一方、2023年の調査では、訪日外国人が最も困ったことはWi-Fi環境だった。
当時は通信環境が大きな課題として認識されており、受け入れ環境の中でも特に優先度の高い項目だったといえる。
これらを比較すると、訪日外国人の困りごとは、特定の1つの課題に集中する状態から、旅行中の複数の場面にまたがる課題へと広がってきていることがわかる。
旅行者の体験価値を高めるためにも、受け入れ環境の整備をより幅広い視点で進めていく必要があるだろう。

訪日外国人の喫煙者にとって「喫煙所不足・わかりにくさ」は継続的な課題
2025年に実施した独自調査では、「喫煙できる場所の少なさ・場所のわかりにくさ」も、訪日外国人が日本旅行中に困ったこととして上位に挙げられた。
回答者全体では41.1%だったのに対し、喫煙者に限ると、その割合は96.0%にまで上昇している。

この傾向は、2025年の独自調査で新たに浮かび上がったものではない。
2023年の独自調査においても、喫煙者が最も困ったこととして挙げていたのは、同じく「喫煙できる場所の少なさ・場所のわかりにくさ」だった。
さらに、喫煙者を対象に「日本の喫煙できる場所(喫煙所、分煙施設、飲食店、カフェなど)は十分にあると思うか」と尋ねたところ、「喫煙できる場所は少ないと思う」と回答した人が51.9%と半数を超えた。
これらの結果から、喫煙所不足は一時的な問題ではなく、訪日外国人の中でも喫煙者にとって、長期的かつ構造的な課題だといえる。

喫煙所不足は“個人の不便”だけでなく都市への評価にも影響する
喫煙所不足の問題は、喫煙者本人の不便さにとどまらない。
喫煙できる場所が見つからないことで、路上喫煙やそれに伴うトラブルの発生につながる可能性が高まる。
2025年の独自調査「日本を旅行中、探しても『喫煙所』がない場合、あなたが取りそうな行動として近い方を選んでください」では、56.6%が「喫煙所以外で吸ってしまいそう」と回答した。
この結果は、喫煙者の多くが「ルールを守りたい」という意思を持っていても、守れる環境が充分に整っていない状況を示唆している。
訪日外国人のマナーの問題というよりも、受け入れ環境の不備が行動に影響を与えていると捉える方が自然だろう。
また、喫煙所が不足していると、限られた喫煙可能エリアに人が集中しやすくなる。
その結果、周辺は混雑し、景観の悪化や歩行の妨げといった二次的な問題が生じる可能性もある。
清潔感や秩序、街の快適さは、訪日外国人がその都市をどう評価するかに直結する要素だ。
喫煙所不足は、受け入れ環境の評価を左右しかねない課題といえる。

喫煙ルールの「分かりにくさ」も混乱を招く要因
喫煙所不足に加えて、喫煙ルールそのものの分かりにくさも、訪日外国人の混乱を招きやすい要因のひとつと考えられる。
喫煙に関するルールは国によって異なるが、海外では喫煙に厳しい国であっても、「喫煙できる場所」が明示されているケースは少なくない。
一方、日本では、喫煙・禁煙のルールが自治体や施設ごとに異なり、訪日外国人にとって判断が難しい場面が見られる。
飲食店ひとつをとっても、全面禁煙・分煙・加熱式たばこのみ可など条件が細かく、短時間で正確に理解するのは容易ではない。
こうしたルールの複雑さや情報の分かりにくさが、喫煙所の少なさと重なることで、
「ルールを守りたい意思はあるが、守れる環境が整っていない」というギャップを、より大きくしている可能性がある。

「情報の届け方」も受け入れ環境を整備する上で重要
訪日外国人喫煙者の困りごとが生まれる背景には、喫煙所の数やルールそのものだけでなく、喫煙に関する情報が届いていないことも要因のひとつとして考えられる。
喫煙ルールや喫煙所の場所は、自治体の公式サイトや案内パンフレット、広告で発信されることが多い。
ただ、旅行中に自治体の公式サイトを自発的に確認する訪日外国人は多くなく、パンフレットも喫煙ルールを調べる目的で積極的に手に取られるケースは限られる。
広告も掲載期間が限定されるため、継続的に情報を届けるのは難しい。
その結果、喫煙ルールや喫煙所の情報自体は存在しているものの、喫煙者に届いていないケースも少なくない。
つまり、訪日外国人の喫煙者の困りごとは、喫煙所を増やす、ルールを定めるといった対応だけでは解消しきれない。
情報を必要としている喫煙者に対し、喫煙所の場所やルールを確実に認識・理解してもらうための情報の届け方も、受け入れ環境を考えるうえで欠かせない要素といえる。

訪日外国人へ喫煙ルールを届ける『GOOD LUCK TRIP』の取り組み
「訪日外国人の喫煙者に情報が届いていない」という課題に対して、『GOOD LUCK TRIP』が取り組んだ事例を紹介する。
ここで紹介するのは、東京都港区を訪れる訪日外国人に向けて、港区が定める「みなとタバコルール」の情報を届けるための取り組みだ。
『GOOD LUCK TRIP』には、Googleなどの検索サイト経由で、港区内の観光スポットや六本木・お台場エリアへの訪問を検討している訪日外国人が集まっている。
そこで、港区を訪れる予定のある訪日外国人の喫煙者に向けて、以下2点の施策を実施した。
1. 「みなとタバコルール」を多言語で分かりやすくまとめた記事の制作
東京都港区環境課とともに、港区が定める喫煙ルールを訪日外国人向けに分かりやすく整理した記事を制作した。対応言語は、日本語・繁体字・簡体字・英語・韓国語の5言語。
単にルールを説明するだけでなく、港区内の指定喫煙場所をまとめたGoogleマップも併せて掲載。
Googleマップのブックマークを促すことで、喫煙したいタイミングで、すぐに喫煙所の場所を確認できる導線を設けている。

2. 港区内の観光スポット・飲食店の公式GLTページにバナーを設置
公式GLTページとは、観光スポットや施設ごとに用意された専用の紹介ページを指す。
「東京タワー」や「麻布台ヒルズ」などの公式GLTページには、そのスポットに興味を持つ人や、訪問を予定している訪日外国人が集まっている。
港区内の観光スポットや飲食店を訪れる予定の喫煙者であれば、区内の喫煙ルールや指定喫煙場所の情報を必要とする可能性は高い。
そこで、港区内の観光スポット・飲食店を中心とした約120件の公式GLTページに、「みなとタバコルール」を解説した記事へのバナーを表示。
観光情報を調べる流れの中で自然に喫煙ルールが届く仕組みを作った。


訪日外国人の困ったことを「情報発信」で解決する『GOOD LUCK TRIP』
訪日外国人の困ったことは、設備を整えたり、ルールを作ったりするだけでは解消しきれない。
必要としている情報を、必要としているタイミングで届けることも重要だ。
一方で「訪日外国人へ、どのように情報を発信すればよいかわからない」と感じている自治体や観光事業者も少なくない。
そうした課題に対応するために用意されているのが、『GOOD LUCK TRIP』の「OMAKASEプラン」だ。
OMAKASEプランでは、特定のエリアやテーマに関心を持つ訪日外国人が集まる記事内に、プランで制作した記事広告への導線を設置する。
記事内容や目的に応じて、どのページから誘導すれば効果的かを『GOOD LUCK TRIP』が設計・提案するため、実際に訪れる可能性が高い人へ情報を届けられる。
さらに、観光スポットや施設ごとに用意された公式GLTページから、記事広告へ誘導するオプションも用意されている。
行き先を具体的に検討している訪日外国人が閲覧するページから情報を届けられるため、旅ナカで必要になるルールや注意喚起とも相性が良い。
OMAKASEプランを活用すれば、訪日外国人にとっての「まだ知られていない」を、「知られている」へと変えられる。
訪日外国人への情報発信に課題を感じている自治体・観光事業者は、OMAKASEプランの利用も選択肢のひとつとして検討してほしい。
まとめ
独自調査によると、2023年は「Wi-Fi環境」が訪日外国人にとって最大の困ったことだった。
一方、2025年の調査では、ゴミ箱や喫煙所など、旅行中の行動を直接妨げる課題が上位に複数並んでいる。
喫煙者に限って見ると、喫煙所の少なさや場所の分かりにくさは、継続的な困りごととして浮かび上がった。
これらの結果から、受け入れ環境の課題は特定の設備不足にとどまらず、行動の各場面で生じる不便さへと広がっていることがわかる。
また、設備やルールを整備しても、その存在や内容が伝わらなければ、課題の解消にはつながりにくい。
今後は設備やルールを整えることに加え、誰に・どのタイミングで・どの情報を届けるかという視点を持つことが、受け入れ環境を考えるうえで欠かせない。