
【和傘徹底ガイド】1本の和傘に宿る職人の手仕事
日本の伝統技法で作られる和傘は、和紙と竹など天然素材を用いた、暮らしに深く根付く工芸品。産地ごとに個性があり、岐阜は繊細で遊び心ある意匠、京都はわび・さびを感じる簡素美、鳥取・富山は雪に耐える堅牢さが魅力。今回は、和傘が日本人の暮らしに寄り添ってきた歴史と、ミニ和傘制作体験ができる老舗店をご紹介します。

日本の伝統的な「和傘」は、和紙や竹などの天然素材を用いた工芸品。色彩や形状、骨の細さなど産地ごとに特色がある。岐阜の「和傘」は遊び心ある細身のデザイン、京都のものは簡素でわび・さびの美を重んじる一方、鳥取や富山などでは雪に耐える堅牢さが特徴。装飾的にも実用的にも用いられ、贈答や観賞、日常の雨具としての価値も高い。
「和傘」の起源は明確でないが、古代エジプトやギリシャ、ペルシャでは既に傘が用いられていた。日本では6世紀、百済から贈られた「蓋(きぬがさ)」が最古の記録とされている。平安時代(794〜1185年)には絵巻物に登場。開閉可能な形状に改良されたのは安土桃山時代(1573〜1600年)で、庶民にも普及したのは江戸中期(1700年代半ば頃)以降だ。歌舞伎や茶道などの舞台芸術にも取り入れられ、日本文化の象徴的存在となった。
「和傘」の素材は主に和紙と竹で構成され、布製の洋傘と異なり軽量かつ通気性が良い。職人が手作業で骨組を組み、和紙を張り、柿渋などで防水処理を施す。細部には精密な技術が反映され、開閉の滑らかさや耐久性、色彩の豊かさに職人の個性が表れる。
現代では観賞用や伝統体験、舞台小道具として使用されることが多い。住宅や商業空間の装飾としても人気で、伝統的価値を保ちつつ現代生活に調和させ利用されている。「和傘」の手作りならではの質感や色彩、形状は、日本文化の継承と現代的活用を結びつける重要な存在となっている。

普段使いの雨傘的な役割の「番傘」

蛇の目のように丸が描かれた「蛇の目傘」

婚礼などの行事に用いられる「差し掛け傘」

和傘職人がひとつ一つ丁寧に仕上げる

細く割った竹骨で和紙を支えるようにして開く

ライトアップの美術道具に用いられることも