
鉄道会社のインバウンド担当者が知るべき、沿線周遊を実現する情報発信
多言語旅行メディア『GOOD LUCK TRIP』では、これまで多くの鉄道会社とインバウンド向けの情報発信に取り組んできた。
その中で共通して見えてきた課題が「観光客が特定の駅にしか来ない」ことだ。
この記事では、『GOOD LUCK TRIP』が実際に沿線周遊を実現した経験をもとに、有効な情報発信の仕方を解説する。
同じ課題を抱えている担当者の方は、ぜひ参考にしてほしい。
観光客が主要駅以外に足を運ばない理由
観光客が主要駅にしか来ない理由はとてもシンプルだ。
その駅からアクセスできる知名度の高いスポットへ行く予定しかないからだ。
沿線上に点在するスポットは認知されていないため、そもそも立ち寄る予定もない。
その結果、出発地点と目的地の間にある駅は素通りされてしまう。
この状況は、多くの鉄道会社の担当者が既に認識していることだろう。
その課題を解決するために、パンフレットを作り、多言語サイトを整備し、SNSで情報を発信しているはずだ。
それでも思うように訪日外国人が動かないのはなぜか。
その原因は、訪日外国人の心理状況や行動パターンをふまえた情報発信になっていないからだ。

鉄道会社のインバウンド向け情報発信でよくある失敗
『GOOD LUCK TRIP』がこれまで多くの鉄道会社の情報発信を見てきた中で、よくある失敗が3つある。
いずれも沿線にあるスポットの認知獲得で終わり、目的地の有名スポットへ向かうプランにどう組み込めばいいかを提案できていない点が共通している。
自社のインバウンド向けサイトで沿線情報を横並び・網羅的に発信する
鉄道会社が運営するインバウンド向けの情報発信サイトに多いのが、沿線の観光スポットを駅ごとに横並び・網羅的に紹介するスタイルだ。
- A駅:カフェ・公園・商店街
- B駅:寺・グルメ・温泉
- C駅:自然・展望台
といった形で、確かに情報量は充実している。
ただ、訪日外国人には、既に目的地の有名スポットへ向かうプランがある。
その中に沿線の他のスポットをどう組み込めばいいのかがわからなければ、いくら情報量が多くても行動にはつながらない。

訪日外国人の導線がない駅にパンフレットを置く
沿線の観光情報をまとめたパンフレットを制作し、駅や施設に設置する施策も多く見られる。
しかし、そのパンフレットを置く場所が訪日外国人の訪れない駅や施設であれば、そもそも手に取られることはない。
仮に有名観光スポットや主要駅で手に取ってもらえたとしても、その時点で観光プランは既に固まっている。
現地で急に予定を変更するのはハードルが高く、沿線周遊にはつながりにくい。
さらに、パンフレットの内容も「B駅周辺にはこんなスポットがある」といった紹介にとどまり、有名スポットからの所要時間やアクセス情報など、実際の行動に必要な情報が書かれていないケースが多い。

FacebookやInstagramでの情報発信が沿線スポットの認知獲得で終わっている
FacebookやInstagramに広告を出して、沿線スポットの認知獲得を狙うケースも多く見られる。
ただ、「いいね」などのリアクションが集まっても実際の行動につながらないケースは多い。
前述した2つの施策と同じく、「有名スポットの観光プランにどう組み込めばいいのか」という情報がなければ、観光プランに組み込まれない。
有名スポットからの所要時間・アクセス、そのスポットを中心としたモデルコースなど、観光プランに組み込むための情報があって初めて、沿線周遊へとつながる。

『GOOD LUCK TRIP』が実践した沿線周遊を促す情報発信
先述した「よくある失敗」に共通するのは、訪日外国人には「目的地の有名スポットへ向かう観光プラン」があることを前提にした情報発信ができていないことだ。
沿線周遊を実現するには、そのプランに沿線の他のスポットを自然に組み込んでもらう必要がある。
そのためには、検索エンジンを起点としたWEBメディアで情報発信に取り組むのが最も効果的だ。
具体的には、
“有名スポットへ訪れる予定の顕在層と、訪れる可能性のある潜在層、それぞれに情報を届ける土台を作った上で、沿線上の観光情報を適切に提供する”
といった段階的な情報発信が必要となる。
ここからは、その情報発信の仕方を具体的に解説していこう。
まずは訪問顕在層を集める情報発信を行う
はじめに行うべきは、目的地となるスポットを調べる訪問顕在層へのアプローチだ。
そのスポットに関するコンテンツを徹底的に充実させて、そのスポットに関連する主な検索キーワードで上位表示させる。
訪日外国人が主体的に情報収集する際、ほとんどの場合がGoogleで検索する。
沿線上の有名スポットへ行くことを検討している場合、もしくは決定している場合、必ず「有名スポット名」単体や「有名スポット名+〇〇」を含む、様々なキーワードで検索する。
例えば、以下のようなキーワードだ。
- 有名スポット名+交通
- 有名スポット名+グルメ
- 有名スポット名+お土産
これらのキーワードで上位表示するために、
- 有名スポットへの交通情報
- 有名スポットのグルメ情報
- 有名スポットで買うべきお土産情報
といったコンテンツを制作し、実用的な情報を網羅する。
そうすれば、「そのスポットに行きたい」という顕在層のアクセスを集めつつ、ニーズにしっかり応えられ、顕在層へ沿線の観光情報を届けられる土台ができる。

次に訪問潜在層を集められる情報発信を行う
訪問潜在層を押さえるだけでは、情報を届けられる母数に限りがある。
そのため、目的地の起点となる地域を観光予定の層へのアプローチも必要だ。
この層は、沿線上の有名スポットへ足をのばす可能性がある訪問潜在層だ。
その潜在層へアプローチするために、起点となる地域の様々な観光情報を発信し、地域を調べる訪日外国人が検索するキーワードでも上位表示を狙う。
その上で、沿線上の有名スポットを紹介することで、潜在層から顕在層へと引き上げられる。
ここまでできれば、顕在層だけでなく潜在層にまで、沿線の観光情報を届けられるようになる。

土台を活かして訪問顕在層・訪問潜在層に沿線の観光情報を届ける
訪問顕在層・訪問潜在層に情報を届けられる土台を作ったら、いよいよ沿線周遊を促すコンテンツの展開だ。
「有名スポットに訪れる予定のある人」に対して、「そのスポットと合わせて楽しめる+oneの体験」を提案しよう。
有名スポットを中心としたモデルコース記事を複数制作し、「有名スポットと合わせてどう動けばいいか」を具体的に提示することで、沿線への回遊を自然に促す。
この一連の情報発信と土台ができれば、訪日外国人の観光プランに沿線上の様々なスポットが組み込まれるようになる。

ワンポイントアドバイス)特筆すべき観光スポットがない駅でも諦めない
近年の訪日外国人のニーズは「日本人の日常を体験したい」という方向に移り変わっている。
定番スポットの混雑を避けたいリピーター層も増えており、切り口次第でどんな場所でも「行きたい場所」になり得る。
不便な場所でも「体験としての演出」や「日本人の日常を楽しむ」という切り口で情報を発信すれば、充分に魅力を伝えられる。

『GOOD LUCK TRIP』を活用して沿線周遊が成功した事例
ここまで紹介した情報発信の戦略を実際に実践し、成果を上げているのが「京王電鉄様」だ。
訪日外国人向けのPRを実施していたものの、「広く浅いPR」になりがちで、本当にこの情報が訪日外国人旅行者に魅力的に感じてもらえているのかという悩みを抱えていた。
『GOOD LUCK TRIP』との取り組みを通じて、沿線の有名スポットを軸にした情報発信へと転換。
当初3年間で計画していたPVを、1年以上前倒しで達成する見込みとなっている。
取り組みの詳細や担当者の声は、以下の事例ページで紹介している。
鉄道会社が情報発信を自社のみで成功させるのが難しい理由
ここまで紹介してきた情報発信は、鉄道会社が自社だけで実践するのは現実的ではない。
その理由は以下2点だ。
- 自社サイトで沿線外の観光情報を発信するのが現実的ではない
- 情報発信の戦略から実行までに多様な専門知識が必要
この2つを詳しく説明していこう。
自社サイトで沿線外の観光情報を発信するのが現実的ではない
潜在層へアプローチするためには、沿線外の地域に関するコンテンツも必要になる。しかし、自社の沿線と関係ないエリアの観光情報を自社サイトで発信するのは、役割の観点から適切ではない。
また、目的となるスポットの起点が複数の地域にまたがる場合、各地域のコンテンツを用意する必要があり、リソース的にも現実的ではない。

情報発信の戦略から実行までに多様な専門知識が必要
この記事で紹介してきた情報発信を行うためには、インバウンド集客の知識だけでなく、多言語SEOやコンテンツ設計など、幅広い専門知識が求められる。
鉄道会社が社内にそれだけの専門知識を持つ人材を集めて、情報発信し続けるのは現実的とは言えない。
だからこそ、
- 観光情報の発信は、すでに訪日観光客が集まっているWEBメディアに任せる
- 自社のリソースは、時刻表や乗換案内などの多言語化に集中する
といった体制を構築することが、沿線周遊を実現するための重要な一歩だ。

まとめ
多くの鉄道会社が抱える「観光客が主要駅にしか来ない」という課題を解決するための情報発信の仕方を紹介してきた。
ただ、この情報発信を自社だけで実現しようとすると、専門知識やリソースの面でハードルが高いのも事実だ。
『GOOD LUCK TRIP』には、鉄道会社のインバウンド集客を支援してきた豊富な実績がある。
沿線周遊を実現したいと考えている担当者の方も、「何から始めればいいかわからない」と感じている担当者の方も、まずは気軽に相談してほしい。
