関西の強みを活かした「量から質へ」という観光政策を見事に具体化して頂きました――
Interviewee:一般財団法人関西観光本部 デジタルマーケティング室長 桑原宗久氏
インタビュー日:2023年7月11日
実施内容
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「量から質へ」という観光政策を“関西広域観光圏での高付加価値旅行プロデュース”で具体化
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コロナ禍、効率的に来訪動機を形成するための、疑似体験動画制作ならびにウェブ記事制作
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「GOOD LUCK TRIP」の記事掲載による情報発信連携
― どのようなことをミッションに活動されていますか?
桑原氏 : 「関西(KANSAI)」のグローバル・ディスティネーション化、つまり、海外旅行検討層が、次の旅先として「関西広域観光圏」を想起し、渡航地として「関西(KANSAI)」を選んでくれることです。私たちは広域連携DMOとして、関西2府8県の力を結集し、関西への来訪動機に資する質の高い情報発信をしていくことに取り組んでいます。それら成果として訪日旅行検討層の「関西を訪れたい」という意向(関西来訪意向)を経年で調査しており、関西来訪意向率を重要指標にしています。お陰様で2018年から始めたこの地域来訪意向調査において、直近の2022年の調査結果と2018年の調査結果との差分の全国トップエリアは関西で、その差分は+14.9%でした。万博開催まで2年を切り、日本初のIR開催地として選ばれた関西は、外国人観光客のニーズが高い文化観光資源の宝庫ですので、来訪動機に資する質の高い情報発信を継続することで、さらなる関西来訪意向を醸成できると考えています。
― 「特別な空間」で「その道を究めた文化人」と触れ合える「特別文化体験ツアー」をプロデュースされました。これはどのような背景から生み出されたのでしょうか?
桑原氏 : 「量から質へ」と転換された観光政策が発想のきっかけでした。先ず「関西の強み」は何なのか?を再考しました。関西は、日本建国の地を含み、かつて栄えた都を擁するエリアです。日本が世界に誇る伝統文化が芽生え華ひらき全国へと広がっていきました。ゆえに、「関西には、日本文化の源流がある」と捉えることができます。次に「質の高い旅行者」とはいったい誰なのか?を考えました。それは、旅行消費額を拡大してくれる2つの層をターゲットに位置付けました。長期滞在旅行者(ロングホール市場)層と、自分たちの趣味関心に対する消費を惜しまないSIT(Special Interest Tour)層です。そして、そのような旅行者がわざわざ遠く離れた日本の関西へ訪れたいと思う「旅の提供価値=来訪動機」とは何なのかを熟考しました。過去の外国人観光客ニーズ調査データも念頭に置きながら、「関西の強みを活かし、かつ、ターゲットニーズに応えられる “Like no other(唯一無二)な旅の提供価値”は……、2府8県それぞれに特色のある特別文化体験ではないか!」というのが企画の原点です。
― 特別文化体験ツアー造成事業を当社が拝命しました。ご満足いただく結果につながりましたか?
桑原氏 : 前例のない特別文化体験ツアーのプロデュースをするということで、とても難易度の高いチャレンジでしたが、見事に本構想を実現して頂きました。もともと『地球の歩き方』は、私の学生時代の旅のバイブルでしたので、旅に関するプロ集団がいらっしゃるというイメージがありました。私の期待通りに、本プロジェクトに携わって頂いた方々は、みなさんプロフェッショナルな方ばかりで、本プロジェクトを遂行できたのは、間違いなく御社の知見とknow-howを思う存分に発揮頂けたからだと感じています。そして、大切なこととして、仕事に対するパッションを皆さんがお持ちだということを挙げさせて頂きます。
― 「GOOD LUCK TRIP」と情報発信連携されたのはどのような理由からでしょうか?
桑原氏 : 当本部が運営している関西の広域観光情報プラットフォーム「The KANSAI Guide(以下TKG)」と、「GOOD LUCK TRIP(以下GLT)」を連携させたのは、GLTが関西のインバウンド市場の7割を占めるアジアに強いという点。そして、何よりも御社には我々の課題であったSEOのプロがいらっしゃったという点です。関西広域観光圏の認知及び来訪意向の上昇と、万博やIRなど世界中の注目が集まるビックプロジェクトの機運醸成との相乗効果により、関西に関する検索行動数が確実に伸びることが予想できます。だからTKGを検索エンジンの上位に表示させる情報発信力の効率化が必須なのです。それに何といっても「GOOD LUCK TRIP」という名前がワクワクして気に入りました(笑)。
― 特別文化体験ツアーのプロデュース、情報発信の一連の活動による成果を教えてください。
桑原氏 : 当本部が、訪日旅行検討層に対して、京都の特別文化体験ツアーを例示して行った購入意向調査によると、ツアー購入意向は全体の78.1%と高い結果が出ました。さらに、中国市場では94.7%と興味関心の高さが顕著でした。また、本ツアーは、有形・無形の文化財の保全・継承等、伝統文化関係者が抱える課題の解決につながるように、ツアー売上の一部を関わる文化財に還流させる仕組みとしました。旅行者のSDGs に対する取り組みの参加意欲と来訪意向を促すという、「好循環サイクル」を創発させることができたという点も、本ツアーをプロデュースした大きな意義だったと考えます。
― これからの貴本部の活動、関西地域の展望についてお聞かせください。
桑原氏 : 我々は関西がこれからの日本のインバウンドを牽引していかなければならないと本気で考えています。2025年万博開催を契機として、その先のIR(統合型リゾート)開業に向けて、関西一円に外国人観光客が訪れ、地域が賑わい潤い、再来訪したくなる“持続可能な広域観光圏”を、地域のみなさま、関係者のみなさまと共創していければと思います。