
【浮世絵徹底ガイド】ゴッホも認めた日本独自の美術――浮世絵の世界へ
江戸時代に庶民文化として花開いた浮世絵はいま再び注目を集めています。木版画として大量に親しまれ、当時の暮らしや風景、人々の姿を生き生きと描いた浮世絵は、日本のみならず世界の美術にも大きな影響を与えてきました。本記事では、その成り立ちや魅力を基礎からひも解き、実際に浮世絵を体験できる施設までご紹介します。
はじめに
浮世絵は、江戸時代に大流行した日本の絵画です。いま、日本では空前の浮世絵ブームが起きています。というのも、2025年現在、日本の歴史と文化を描く国民的番組であるNHK大河ドラマのシリーズで、「べらぼう」が放送されています。この「べらぼう」は江戸時代の浮世絵の版元である蔦屋重三郎が主人公だからです。それに伴って、改めて浮世絵に興味をもつ人が増えています。江戸時代の浮世絵の名作の数々に、現代の日本人も魅了されているのです。

浮世絵は日本だけでなく150年以上前から世界でも受け入れられてきました。19世紀後半、モネやゴッホは自由でオリジナリティ溢れる浮世絵に出会い、西欧のアカデミズムにはない斬新な作風に虜になりました。そして生まれたのが革新的な「印象派」です。日本の浮世絵の構図を参考にしたと考えられる作品が数多く残っています。
浮世絵とは
その時代に生きる人々の生活の様子などを描いた絵画を「風俗画」といいますが、浮世絵はこの風俗画のジャンルに入ります。浮世絵の「浮世」は「憂き世」が語源になっています。「憂き世」とは「つらい世」という意味。
その後「浮世」とかいて「この世、ただ今」の意味になりました。つまり、「きょうこの瞬間を生きる人たち」を描いたのが浮世絵です。
そんな浮世絵は、基本的に木版画です。同じ絵を安く大量に生産できたため、商人や町人などの庶民も購入することができ、江戸時代に一大ブームとなりました。大量生産可能なため、数千枚単位で摺られた大ヒット作もありました。値段は時代によって異なりますが、一枚、だいたい「かけそば一杯分」の値段だったと言われています。浮世絵に描かれている題材はさまざまで、庶民の生活から自然の風景、美人な女性やかっこいい歌舞伎俳優まであります。浮世絵は絵画として飾られるだけではありませんでした。アイドルのポスターのような感覚で部屋に飾ったり、子どものおもちゃ「双六」になったり、厄除けのお守り代わりになったりしている浮世絵まであります。
さまざまなシーンで浮世絵が登場し、江戸の人たちにとって、身近なものだったことがうかがえます。
浮世絵の歴史
浮世絵が生まれたのは江戸時代。1670年頃のことです。創始者とされるのは、「見返り美人図」の絵師、菱川師宣(ひしかわもろのぶ)です。

菱川師宣は浮世絵の中でも菱川派の祖で、工房を設立して多くの弟子をもったといわれています。
浮世絵は大きくわけて3つに分かれます。
①木版による版本(はんぽん)の挿絵②木版による一枚絵③肉筆浮世絵です。①と②は手摺りで量産されるもので、③は絵師による直筆の絵画です。このなかで、現代においても「浮世絵」と指すものは一般的に②のものです。木版による一枚絵は、進化し続け、江戸後期には、木版画としては当時世界最高峰のカラー技術を確立しました。
菱川師宣はもともと①の版本の挿絵を描いていましたが、版本から絵を独立させて一枚絵としての浮世絵を生み出しました。
江戸で浮世絵が広がり始めた頃は墨の1色のみでした。この浮世絵のことを「墨摺絵(すみずりえ)」と呼びます。そしてそのおよそ20年後の1688年頃からは浮世絵がカラーになります。墨摺絵の1枚1枚に手作業で、筆で色を塗っていました。墨摺りとして浮世絵は量産できるようになりましたが、カラーにするには手作業で時間がかかる…。
色も木版で摺ることができたら効率的に浮世絵を作ることができます。そうして、浮世絵木版がはじめて登場した約80年後の1744年頃に誕生したのが、「紅摺絵(べにずりえ)」と呼ばれるものです。これは使う色ごとに色の版を彫って、墨摺絵に摺り重ねる技法です。当時としては、とても大きな技術革新でした。
それでも色は、赤色、草色、黄色の2〜3色程度でした。その20年後、浮世絵はさらなる多色摺りの時代を迎えます。色彩が7〜8色に増えました。この多色摺りは人気を呼び、「錦絵」と呼ばれるようになりました。

この錦絵が登場したことにより、浮世絵ブームは加速します。優秀な人材もどんどん誕生しました。後世に残る傑作が次々に生み出されたのです。
浮世絵ができるまで
浮世絵の制作工程に携わる人たち
まず、浮世絵の制作工程に携わる人たちをご紹介します。
浮世絵はどのように作られていたのでしょうか。実は浮世絵は分業化されていて、それぞれの工程で、その工程を専門とする人たちの手によって合作で1枚の浮世絵ができあがっているのです。
それぞれの工程をご紹介する前に工程に関わる4分野の専門職のひとたちをご紹介しましょう。
1. 版元(はんもと)
浮世絵版画を企画、制作、販売するのが版元です。2025年放送のNHK大河ドラマ「べらぼう」では、この版元が主人公。江戸時代にヒット作を連発させた「蔦重(つたじゅう)」こと、蔦屋重三郎の人生を描いています。

版元は、現代でいう出版社のこと。現代でも出版社のことを版元と呼ぶことがありますが、江戸時代の版元もいまの出版社のような役割を担っていたのです。また、プロデューサー的役回りもしていました。
版元は、企画したあとは、絵師、彫師、摺師の選定、打ち合わせ、制作、必要な資金の調達と管理、販売までのすべてを統括していました。ヒット作を連発する版元であればあるほど、いい絵師、いい彫師、いい摺師が集まります。お抱えの絵師、彫師、摺師がいた版元もあります。版元は、売れ線の浮世絵を世に送り出すために、時代の空気や需要を読みとく鋭い感性と新しい才能を育てる財力が必要なのです。
2. 絵師
浮世絵の構図を決めて絵を描く人を絵師といいます。浮世絵の絵師は300人以上を数えると言われています。その中でも現在においても名を残している有名な絵師は20人ほどしかいません。
多色摺の創始者であり美人画を得意とした鈴木春信(すずきはるのぶ)、鳥居清長(とりいきよなが)、蔦屋重三郎に見いだされた美人画の達人である喜多川歌麿(きたがわうたまろ)、歌舞伎俳優を描いた役者絵が得意な東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)、89歳で亡くなるまでに3万点以上の作品を残し、「富嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)」などで世界的にも名が知られている葛飾北斎(かつしかほくさい)、人々の暮らしや四季の移ろいなどを表現した歌川広重(うたがわひろしげ)は「六大絵師」とされています。
3. 彫師
絵師が書いた版下絵を版木に貼って、ノミなどを使って彫っていくのが彫師です。墨摺り用の墨版を作ったあと、絵師が色を指定します。その指示通りに今度は色版を彫ります。
4. 摺師
彫師が作った墨版と色版を受け取って、順に紙に摺って浮世絵を完成させるのが摺師です。
見本摺りができたら絵師がチェックを行って、修正があれば直しを入れるのも摺師の仕事です。
浮世絵の制作工程
ここまで浮世絵の制作工程に携わる人たちをご紹介しました。次は、制作工程についてお伝えします。
1. 版元が企画を立て、絵師に依頼
版元が売れそうな企画を立て、絵師に作画を依頼します。話がまとまれば制作スタート。
2. 絵師が下絵を描く
版元が考えた企画をもとに、墨一色で下絵を描きます。全体の構図を練りながら下書きをします。版元の意向に沿った下絵を作る必要があります。下絵ができたら、別の薄い紙に写し取って墨線を入れ、黒くしたいところは墨で塗りつぶします。
3. 彫師が彫る
まずは墨摺絵の版木を彫ります。版木に使われるのはヤマザクラの木です。版木は何度も摺るため、摩耗しないようにある程度の硬さが必要ですが、彫るときに彫れないほどの硬さだと困ります。ヤマザクラはどちらも兼ね備えたちょうどいい硬さだったそうです。版下絵を版木の上に裏返して貼り、小刀やノミを使って彫っていきます。できあがった墨摺絵を絵師に見せ、絵師が色を指定します。
その後、彫師は絵師の色指定に従って、色ごとの色版を彫ります。重ねながら多色に摺るため、ずれがでては困ります。そのため、摺師が摺りやすいように、「見当」という目印も彫られます。
4. 摺師が摺る
最初に墨版である主版を摺ります。そして色版は薄い色から順に摺り重ねていきます。
初摺りの際は絵師も立ち会って行われます。絵師がチェックをして彫りの修正は彫師に、色の修正は摺師に指示を出して、完成します。ちなみに新作の初摺りは200枚と言われています。

5. 版元が販売
完成したら版元が売ります。売れ行きがいい作品だと、追加で摺られることもありました。
浮世絵のジャンル
浮世絵にはさまざまなテーマがありました。なかでも美人画と役者絵は人気でした。
また、江戸時代には江戸と各地を結ぶ街道が整備されたため、旅ブームが起こります。
その際に風景画も広く流通しました。
美人画
美人な女性をモデルに描いたものです。
遊郭や芸者たちから茶屋の看板娘なども描かれています。
女性が振り返った様子の菱川師宣の「見返り美人図」は特に有名です。

役者絵
歌舞伎俳優を描いた浮世絵で、上方で発展した浮世絵を代表するのが、この役者絵です。
アイドルのブロマイドのように扱われており、ファンが買い集めました。

風景画
全国津々浦々の風景を描いたものです。
葛飾北斎の「富嶽三十六景」などはよく目にする風景画のうちのひとつです。
風景画は江戸で発展した浮世絵の代表です。

戯画(ぎが)
だまし絵や絵解きクイズなど、エンターテインメント性にあふれる浮世絵です。
化け物絵
幽霊や妖怪などのおどろおどろしいものを描いています。当時は電気の明かりがない時代ですから、人々の妄想は膨らんで、お化けが身近なものだったようです。
花鳥画(かちょうが)
草花などの植物や鳥や動物などを描いた浮世絵です。俳句や和歌が添えられているものもあります。
武者絵・物語絵
実際に存在した武士や架空の英雄までを迫力ある構図で描いたものです。
春画(しゅんが)
男女、あるいは同性の性愛を描いた浮世絵です。艶っぽい絵が多く描かれています。
浮世絵の鑑賞と制作体験ができる「上方浮世絵館」
風景画を得意とした江戸と役者絵を得意とした上方でそれぞれ浮世絵が発展していきましたが、そのうちの「上方浮世絵」をじっくりと見ることができる私設美術館が大阪にあります。大阪市中央区にある「上方浮世絵館」です。約25年前に開館しました。世界で唯一の上方浮世絵の美術館です。
4階建ての建物で、1階は受付とグッズショップ、2階〜3階は展示スペース、4階は体験施設になっています。
ここでは江戸時代後期から明治時代初期にかけての大坂歌舞伎俳優の浮世絵が展示されています。館長の高野征子さんはもともと、長年、浮世絵を集めるのが趣味でした。その趣味が高じて、自身の所蔵する浮世絵の数々を展示したいと考え、上方浮世絵の美術館を作ったのです。上方浮世絵館がある場所はなんばの法善寺の門前。かつて、法善寺の参道として発展した場所です。

大阪の人気観光スポットのひとつ、道頓堀の「グリコの看板」からほど近い場所にあります。なぜこの地に「上方浮世絵」の美術館を作ったのか。それには上方浮世絵の発展と深い関係があります。江戸時代の人形浄瑠璃の作者、井原西鶴や同じく人形浄瑠璃や歌舞伎の作者、近松門左衛門を生み出した大坂・道頓堀。この地域には歌舞伎や浄瑠璃の芝居小屋が立ち並んでいました。まさに江戸時代のブロードウェイ。スターの歌舞伎俳優をひとめ見ようと多くの人が詰めかけました。今でも名が残る芝居小屋「角座」や「中座」で上演された歌舞伎芝居を描いたのが「上方浮世絵」でした。
上演期間中にその演目に出演している歌舞伎俳優を描いたのです。ファンはそれを買い求めていました。現代でいう、舞台写真やブロマイドのようなものでした。道頓堀より北側に位置する心斎橋筋は江戸時代には版元が立ち並び、浮世絵が売られていたのです。まさに上方浮世絵館がある地域の周辺は、上方浮世絵文化の中心地。そんな場所に立地しています。ちなみにチケットに描かれているのも上方浮世絵で、これはかつての大坂で道頓堀川から船に乗って芝居小屋へ歌舞伎俳優が入る「船乗り込み」が行われていた様子です。
浮世絵は光に弱く、館内は照明が暗めになっています。じっくり浮世絵を鑑賞したい方は、受付でLEDライトを貸し出ししているので、利用してみてください。
施設概要
- 施設名称
- 上方浮世絵館
- 住所
- 大阪府大阪市中央区難波1-6-4 Googleマップ
- 開館
- 11:00〜18:00(入館は17:30まで)
- 休館
- 毎週月曜日、年末(月曜日が祝祭日・振替休日の場合、翌日)
- 電話
- 06-6211-0303
- 料金
- 大人700円、高校生500円、小中生300円
上方浮世絵館の展示内容
3ヶ月に1回、テーマを変えて、展示の入れ替えが行われていて、毎回30点ほど展示されています。
今回訪ねたのは、2025年11月。この日は「四天-衣裳と役柄-」というテーマでの展示でした。

花魁の重厚な俎帯や打掛、深窓の姫の豪華な振袖から、武家の正装である裃や素襖は豪華絢爛な衣装が描かれた浮世絵を展示しています。なかには、歌舞伎の衣裳として独特の発展をとげた「小忌衣(おみごろも)」のようなエキセントリックなデザインも浮世絵から見ることもできました。
江戸の浮世絵も展示されていて、上方浮世絵との違いを見比べることができるのもよかったです。例えば、こちらの浮世絵。同じ歌舞伎俳優の中村歌右衛門を描いています。


江戸浮世絵はスタイリッシュにかっこよく描かれています。一方で、上方浮世絵は、歌右衛門の親しみやすさを表現したり、本人に似せたりして描かれているのが特徴です。こうして見比べると、違いがよくわかります。このように、上方浮世絵館ではたくさんの人に浮世絵の魅力や楽しさを知ってもらおうと、さまざまな工夫を凝らして展示されています。3ヶ月で展示内容が入れ替わるため、何度来ても楽しめる施設になっています。
4階の和室では浮世絵摺り体験もできます。浮世絵が描かれた「ぬりえ」も配布されていて、色鉛筆を使ってその場で仕上げることができます。

このぬりえは無料で体験することができますよ。その場で仕上げてもよし、母国に持って帰って旅の楽しい思い出を思い返しながらぬりえをするもよしです。
浮世絵グッズも販売
せっかく上方浮世絵館に来たのですから、ぜひ浮世絵にまつわるお土産も購入してみてください。1階にはグッズショップが併設されています。
浮世絵のポストカードは、上方浮世絵館のインスタグラムをフォローすると1枚プレゼントでいただくことができます!

ほかに、浮世絵が描かれたルービックキューブや、浮世絵のおりがみも販売していました。マグネットは手のひらサイズで、友人や家族のお土産にもちょうどよさそうです。

そしていま、とても人気なお土産は、表紙が浮世絵になった御朱印帳です。
この御朱印帳を購入して、ぜひ1ページ目は、上方浮世絵館の前にある法善寺にお参りをしてから御朱印をいただいてみてください。

浮世絵制作体験ができる!
なんと、上方浮世絵館では、浮世絵の制作体験ができます。
浮世絵は「絵師」、「彫り師」、「摺り師」による共同作業で完成しているとご紹介しましたが、こちらでは、版木による「摺り」の体験ができます。コースは3つ。「初級コース」、「中級コース」、「上級コース」です。
今回は中級コースを体験しました。中級コースは4色摺りです。
図柄は、法善寺横丁とかわいい町娘のデザインです。
- コース名称
- 中級コース
- 料金
- 1名1,200円(※2名以上での予約が必要)
- 体験時間
- 約30〜45分
体験は建物4階で行われています。階段を上っていくと、4階は畳の和室になっていて、靴を脱いであがります。

長机の上に置かれているのは、4つの版木です。中級コースは4色の摺りですから、それぞれの色ごとに版木があります。この4つの版木で摺っていくと、1枚の絵が完成するということです。右から黒色→だいだい色→赤色→緑色の順で色をつけて、摺っていきます。

1. 黒(主版)の絵の具を塗る
まずはじめの版木は主版と言って、絵の輪郭である黒色部分の摺りを行います。木版の凸部分を中心に黒色の絵の具(墨)をハケで広げます。

塗り忘れているところがあると、その部分はかすれや欠落してしまうので、塗り忘れがないようにしっかりと塗り広げましょう。塗り広げたあとは、中心に少しだけのりを落とします。

そして今度は毛が密集しているブラシでのりをなじませます。
さっとで問題ありません。のりを広げることで、絵の具の密着度を高めます。

2. 和紙を見当にあてて摺る
続いて摺りの作業です。とても緊張する瞬間です。版木には左下の角と、左辺にくぼみでできた印があります。これを「見当」といいます。
何色も摺り重ねたときに、和紙がずれてしまうと、うまく浮世絵ができあがりません。そこで、この「見当」を目印に和紙を合わせるのです。ちなみにこの見当は、日本語の「推測や判断が誤っていること」を表す「見当はずれ」や「見当ちがい」の言葉の語源になっていることを教わりました。浮世絵もうまく摺るには「見当はずれ」にならないように、和紙をしっかりと「見当」に合わせることがポイントです。

和紙はつるつるした面とざらざらした面があるので、つるつるした面を下にして摺りましょう。左下の角と左辺の見当だけに和紙をあてます。まだ和紙を下ろさないように。左下の角と左辺の見当の部分を親指と人差し指でしっかりと押さえます。ずれないように慎重に!しっかりと押さえたら、和紙をおろします。そのときに、和紙を手で上から押さえるのはNGです。必ず馬連を人差し指から小指の4本でしっかりと持ち、中腰になって、押さえつけるように馬連を和紙にこすります。中腰になるのは、体重を馬連にかけるため。それくらい力を使って圧をかけながらこする必要があるのです。

くるくると回すように、何度もこすってください。ここで結構力を使います。力強くこすりつけないと、うまく摺れず、かすれが生じます。そうならないように、しっかりと何度も強くこすりましょう。ある程度こすれたら、一気に和紙をはがさずに、少し和紙を持ち上げてちゃんと摺れているか確認しましょう。このときも見当のところで和紙を押さえている親指と人差し指は離さないようにしましょう!確認してOKであればそのまま和紙を離しますが、もしかすれている部分があれば、もう一度馬連で和紙をこすります。これでまずは主版のパートが終わりです。

どうでしょうか。なかなかきれいに摺れたのではないでしょうか。ここでも達成感がかなりあるのですが、これをあと3回繰り返さなければ1枚の絵が完成しません。しかもこれからは柄がずれないように摺っていかなければなりません。緊張しつつ、次の工程に向かっていきます。
3. だいだい色
続いてだいだい色を摺ります。だいだい色は看板部分と着物の柄や帯の色になります。手順は主版のときと同じです。版木にだいだい色の絵の具を塗り広げます。

そして、のりを絵の中心部分に少し落としてブラシを使ってさっと広げます。見当に和紙をあてて、しっかりと親指と人差し指で押さえます。和紙をそっと置いたら、再び中腰になって体重をかけるように馬連に圧をかけながらこすります。さあ、どうでしょうか。

…。少し着物の柄の部分がずれてしまいました。見当はずれになってしまいましたね。
でも「法善寺横丁」と書かれた看板の部分はいい感じにできたような気がします。
4. 赤色
次に赤色を摺っていきます。同じ要領で進めていきましょう。赤はちょうちんや、着物の柄、帯の色付けです。同じ要領で絵の具を塗り広げ、のりをたらし、ブラシを使って広げていきます。見当をたよりに和紙を置く瞬間が一番緊張するかもしれません。今度は「見当はずれ」にならなかったでしょうか。

うーん…。
やはり着物のところが少しずれてしまっていますね。まあでも雰囲気は出てきたのでOKとしましょう。
5. 緑色
さあ、いよいよ最後の緑色をするときがきました。
屋根の瓦と、石畳を緑色で表現します。同じ手順ですが、最後なのでひときわ気合いを入れて作業します。

お!細かいところがうまくできたかどうかは置いておいて、なんか雰囲気があっていい感じです。味わい深い感じですね。悪くはないかなと思いました。これで完成です!!
実際に摺り体験をしてみて感じたのは、とにかく柄を合わせるのが難しいということ。展示されている浮世絵は何枚もの版木を使って多色で何度も摺ったように見えず、まるで筆で描いて塗ったように見えます。展示されている浮世絵は、全くかすれやずれがないのです。どれだけ高い技術で作られたのかよくわかりました。実際に体験することで、その精巧さを理解することができたので、ぜひこちらの上方浮世絵館に来館の際は体験も併せてしてみてください。
私が体験した日は、ドイツからの旅行客も来ていたのですが、私が体験しているのを横で見ていて、ぜひやってみたい!ということで、飛び込みでされていました。この日はたまたま空きがあったので対応されていましたが、実はこの体験、かなり人気で、先着順の予約のため、予約が詰まっている方が多いです。そのため、体験したければ絶対に予約をしてから来館するようにしてください。
予約は体験希望日の3日前までです。ホームページからできます。
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申し込みは2名以上から。
-
別途入館料が必要です。
-
小学生以下は保護者同伴が必要です。
-
10名以上の場合は入れ替え制になります。
その他のコースの体験内容
上記紹介した中級コース以外、ほかにも体験できるコースがあるので、ご紹介します。
・初級コース
初級コースは3色摺りを体験することができます。図柄は、歌舞伎の十八番のひとつである「景清(かげきよ)」と「弁慶(べんけい)」の隈取。
隈取は歌舞伎のお化粧のことで、線が細く目力が強いほど、スーパーヒーローであることを表します。目力が強い隈取を、ぜひ力強く仕上げてみてください。

- 料金
- 1名800円
- 時間
- 約30分(1人あたり10分が目安)
・上級コース
上級コースは高度な技に挑戦します。4色摺りで、かつ、法善寺の石畳をグラデーションで表現します。
また、上方浮世絵館の外観のシンボルである歌舞伎招き猫に二度摺りをします。グラデーションや二度摺りといった高度な技術を使うことでより立体感のある作品を仕上げることができます。

- 料金
- 1名1,500円
- 時間
- 約45〜60分(1人あたり15分〜20分が目安)
まとめ
江戸時代、世界がうなるほどのたくさんの名画が誕生しました。複数の版木を使って、ずれなく精巧に作り上げるところに、日本人の誠実であったり丁寧であったりする性格が垣間見えます。現代では芸術作品として美術館で展示されることが多い浮世絵ですが、当時は人気の絵師の作品であっても、ポスターやブロマイドに近い感覚で買い集められたのも、いまの感覚とは違って、非常に面白く感じます。
写真技術が入ってくるまで、浮世絵は「現在の日常の姿」を映し出していました。江戸時代の文化や風俗を知る手がかりにもなっています。いまから150年以上前の日本人がどういう暮らしをしていたのか、ぜひ浮世絵を見て感じてみてください。

