相撲の魅力と基礎知識をわかりやすく解説!相撲入門ガイド
日本の国技であり、日本の伝統文化が競技の中に色濃く残る「相撲」。
その歴史の長さとは裏腹に「相撲」のことをよく知らない方も多いが、他のスポーツや格闘技と同じく「相撲」にも奥深い魅力がある。
この記事では相撲のことを全く知らない方向けに、基本的な知識と相撲の魅力をお伝えしよう。
相撲とは
腰に褌(ふんどし)の一種である廻しを着けた2人が、土を入れた俵を円形に敷き詰めた土俵の上で相手を押したり投げたりして、土俵の外に出すか土俵に足の裏以外をつけさせて勝敗をつける競技。
相撲を行う人は「力士」や「相撲取」と呼ばれ、「本場所」と呼ばれる興行で「取組」と呼ばれる試合を行い、その勝敗によって格付けされる。
柔道やボクシングなどのように、体重ごとに階級が分けられていないため、体重200kgを超える力士とその半分ぐらいの体重しかない力士で取組(試合)が行われることもある。
時代に合わせて変化し続けた相撲の歴史
日本の国技である相撲の歴史は深く、その起源は神話の時代まで遡る。
現存する日本最古の歴史書である「古事記」・「日本書紀」の中に出てくる、神話時代の力比べ伝説が相撲の始まりとされている。
日本で稲作が始まった時代には、収穫を占う儀式としての相撲が始まり、後に宮廷の行事となって約300年も続いた。
武士が活躍していた鎌倉時代(1185年〜1333年)・戦国時代(1467年〜1573年)には、武士の戦闘訓練としても相撲が行われるようになり、織田信長(おだのぶなが)も相撲をこよなく愛したと伝わっている。
江戸時代(1603年〜1868年)に入ると、相撲は庶民の娯楽として発展し、相撲を職業にする人たちが現れた。
観衆の前で相撲が行われた様子が描かれた浮世絵も残っている。
力比べの競技として始まり、豊作を祈る儀式へと変化し、戦闘訓練としても取り入れられ、庶民の娯楽として発展していった相撲は、日本の時代の変化に合わせて発展していった文化と言っても過言ではない。
そんな長い年月をかけて洗練され、様式化された相撲には、今もなお日本の伝統文化が色濃く残っている。
まずはココに注目!相撲の3つの見どころ
サッカーや野球のように、相撲もルールを詳しく知らなくても楽しめる。
知識がある方が楽しめるのは間違いないが、まずはこれから紹介する3つの見どころに注目して、相撲を見てみよう。
1. 体格が大きい力士が全力でぶつかり合う迫力
100kgを優に超える体格の大きい力士が、全力で身体や頭をぶつけ合う様子は大迫力。
ぶつかり合った時の音も凄まじく、映像だけでなく生で取組(試合)を見て、迫力を感じてほしい。
2. 体格が小さい力士と体格が大きい力士の取組
相撲は体重によって階級が分かれていないため、200kgを超える力士とその半分以下の力士が取組(試合)を行うこともある。
小さい力士がパワーだけでなく、スピードやテクニックを使って、体格が大きい力士を押し出したり、投げ飛ばしたりする様子も見どころのひとつだ。
3. 相撲の所作や動作に色濃く残る日本の伝統文化
豊作を祈る儀式としての相撲が約300年続いたため、所作や動作の中にその面影が色濃く残っている。
例えば、力士が土俵の上で片足を高く上げ、その足で土俵を強く踏み締める行為である「四股を踏む」という所作には、大地を強く踏み締めることで邪気を払い、五穀豊穣・無病息災をもたらすという意味を持つ。
土俵に塩をまくのも、同じように邪気などを払う意味を持っている。
その他にも儀式的な意味を持つ所作や動作は多いため、一つひとつの所作・動作が持つ意味を調べると、日本の歴史や文化に触れられる。
相撲を生で見る3つの方法
相撲を見たい方は、これから紹介する3つの方法のいずれかで相撲を観戦しよう。
相撲を見られる機会・場所は限られているため、タイミングがあれば、時間を作ってでも相撲を見に行くことをお勧めする。
1. 相撲の緊張感と迫力を最も感じられる「本場所」
「日本相撲協会」が行う大相撲の興行である「本場所」では、相撲のトップを決める取組(試合)が行われる。
「本場所」の勝敗結果によって、力士の番付(格付け)が決められる。
1年に6回の興行があり、正式名称と開催場所については、下記の通りだ。
開催月 | 正式名称 | 通称 | 会場 | 開催地 |
---|---|---|---|---|
1月 | 1月場所 | 初場所 | 両国国技館 | 東京都 |
3月 | 3月場所 | 春場所 | エディオンアリーナ大阪 | 大阪府 |
5月 | 5月場所 | 夏場所 | 両国国技館 | 東京都 |
7月 | 7月場所 | 名古屋場所 | ドルフィンアリーナ | 愛知県 |
9月 | 9月場所 | 秋場所 | 両国国技館 | 東京都 |
11月 | 11月場所 | 九州場所 | 福岡国際センター | 福岡県 |
1つの場所ごとに取組(試合)が15日間連続で行われ、
- 1日目は初日
- 8日目は中日
- 15日目は千秋楽
と呼ばれる。
日によって多少の前後はあるものの、8時30分頃から取組が始まり、18時頃には最後の取り組みが終わる。
2. 力士と触れ合える「巡業」
相撲の普及や地域の活性化、青少年育成を目的として行われる「巡業」も相撲が見られる機会の一つだ。
「本場所」を運営している「日本相撲協会」に所属している力士達が各地を巡って、稽古と取組(試合)を観衆の前で行う。
力士の番付(格付け)を決める「本場所」とは異なり、力士と記念撮影や握手ができるなど、力士と触れ合える機会がある。
3. 力士の日常と本気の稽古が見られる「相撲部屋の見学」
力士の養成所である「相撲部屋」では、力士達の稽古を見学できる。
中には見学だけでなく、相撲部屋の名物である「ちゃんこ鍋」を食べられる相撲部屋もある。
見学できるかどうかは「相撲部屋」によって異なり、予約制だったり先着順だったりと、申込方法も「相撲部屋」によって異なる。
見学したい方はネットで予約できる「相撲部屋見学ツアー」に申し込むことをお勧めする。
最低限持っておきたい相撲の基礎知識
相撲を楽しむために、最低限知っておきたいことを紹介していこう。
相撲に興味がある方は、これから紹介する内容をベースに、さらに深掘りしてほしい。
1. 服装・給料など全てが決まる「番付(格付け)」とは
力士は本場所の成績によって格付けされ、その格付けによって給料や待遇だけでなく、服装まで決まる。
格付けのことを「番付」と呼び、成績に合わせて下記いずれかの階級となる。
上から順に高い階級となっており、横綱に近づけば近づくほど、待遇が上がっていく。
番付 | 月給 |
---|---|
横綱 | 約300万円 |
大関 | 約250万円 |
関脇 | 約180万円 |
小結 | 約180万円 |
前頭 | 約140万円 |
十両 | 約110万円 |
幕下 | 月給はなく、場所ごとの手当のみ |
三段目 | 月給はなく、場所ごとの手当のみ |
序二段 | 月給はなく、場所ごとの手当のみ |
序ノ口 | 月給はなく、場所ごとの手当のみ |
十両以上になると100万円以上の月給を貰えるが、幕下以下の力士は「場所」ごとの手当のみとなり、待遇にはかなりの差がある。
もちろん、力士の収入は月給だけではない。
各場所で優勝すると賞金では1,000万円が与えられ、その他にも取組(試合)ごとに提供される懸賞金など様々な収入があり、年収1億円以上稼ぐ力士もいる。
待遇だけでなく、階級ごとに服装も決められている。
「十両」を超えると一人前の力士として認められ、力士の特徴でもある髪型「大銀杏」を結える。
2. 力士の養成所「相撲部屋」
「年寄」や「親方」と呼ばれる指導者が経営する、力士の養成所「相撲部屋」の生活スペースと稽古場で、力士としての鍛錬を積み重ねていく。
「本場所」に出場するためには、必ず「相撲部屋」に所属しなければいけないため、力士を目指すものは必ず相撲部屋に所属することになる。
3. 知っておくと相撲がもっと楽しくなる「決まり手」
力士の取組(試合)で勝ちが決まった時の技を「決まり手」と呼び、日本相撲協会が定めた八十二種類の技を「決まり手八十二手」と呼ぶ。
決まり手の種類は基本技・投げ手・掛け手・反り手・捻り手・特殊技に加えて、5つの勝負結果がある。
決まり手の種類も知っておくと、相撲観戦をより楽しめるだろう。
日本相撲協会がまとめた過去5年間の決まり手ランキングでは、50%が「押し出し」と「寄り切り」が占めている。
順位 | 決まり手 | 割合 |
---|---|---|
1位 | 押し出し | 25.8% |
2位 | 寄り切り | 24.5% |
3位 | 叩き込み | 8.5% |
4位 | 突き落とし | 5.7% |
5位 | 寄り倒し | 4.7% |
日本相撲協会の公式ホームページには、写真やイラスト付きで決まり手が載っているので、調べてみよう。
4. ルールとして覚えておきたい「反則行為」
相撲は相手を土俵の外に出すか、土俵に足の裏以外をつけることで勝敗に決着がつくが、反則行為である「禁じ手」を用いた場合にも決着がつく。
禁じ手とされている行為は、下記8つだ。
- 握り拳で殴る
- 意図的に髪の毛を掴む
- 目やみぞおちなどの急所を突くこと
- 両耳を同時に両手で張る
- 局部を覆っている廻しを掴む、もしくは手を入れて引っ張る
- 喉を掴む
- 胸か腹を蹴り上げる
- 手の指を折り返す
5. 力士の食文化を体験できる「ちゃんこ鍋」
相撲の文化を最も手軽に体験できるのが「ちゃんこ鍋」だ。
「ちゃんこ」とは力士の食事を意味する言葉で、力士が食べる「鍋」のことを「ちゃんこ鍋」と呼ぶ。
鶏ガラで出汁を取り、醤油や味噌で味付けしたスープに、肉団子や白菜をはじめとする肉と野菜が入っている鍋だが、使われる具材や味付けに決まったものはなく、相撲部屋によってそれぞれ異なる。
相撲は体重ごとに階級が分かれていないため、身体の大きい方が有利な競技だ。
そのため、稽古だけでなく食事も大切にしており、身体を効率的に大きくするために、バランス良く栄養が取りやすい「ちゃんこ鍋」がよく食べられている。
引退した力士が開いた飲食店で「ちゃんこ鍋」が食べられるため、日本に観光へ訪れた際にはぜひ「ちゃんこ鍋」に挑戦してほしい。
東京観光するなら訪れておきたい相撲の聖地「両国国技館」
両国国技館は大相撲の東京場所が年に3回開催される「相撲」の聖地。
両国国技館の正面入り口には昔の相撲の取り組みを描いた絵や優勝杯が展示されており、相撲の歴史を楽しめる。
売店や相撲部屋監修のちゃんこ鍋店などの飲食店や博物館などもあり、相撲が行われていない日でも見どころが盛りだくさん。
相撲に興味がある方で、東京観光する機会があれば、ぜひ訪れてほしい。
「両国国技館」を観光したら「ちゃんこ鍋」を食べよう
相撲の聖地である「両国国技館」の近くには、「ちゃんこ鍋」が食べられるお店がいくつもある。
その中でも特にお勧めのお店を3つ紹介するので、「両国国技館」を観光したら「ちゃんこ鍋」でお腹を満たそう。
1. ちゃんこ霧島 両国本店
元力士の経営する、相撲部屋直伝の「ちゃんこ鍋」が食べられるお店。
鶏ガラ豚骨のベースに醤油と味噌を合わせたオリジナルスープが特徴。
隠し味の柚子胡椒がピリリと味を引き締め、スープを吸った秘伝の鶏ミンチが絶品。
2. 相撲茶屋ちゃんこ江戸沢 両国総本店
鶏がらを煮込んで作られたスープ(=ソップ)と、様々な具材が楽しめる「鶏ソップ鍋」の専門店。
秘伝のスープをベースに醤油・塩・味噌風味の3種類の味から選べる。
和風の店内は、畳の香りや相撲の絵などが描かれており、日本の伝統文化に触れることができ、ゆっくり寛げる個室もある。
3. ちゃんこダイニング 安美 両国総本店
ちゃんこ鍋屋とは思えない、隠れ家的なおしゃれな雰囲気のお店で、伊勢ヶ濱部屋直伝のちゃんこ鍋を堪能できる。
この店オリジナルの焼いた国産鶏を丸々1羽フランベする「焼きちゃんこ」が美味しいと評判。
相撲に関するよくある質問
Q
相撲のルールは?
相手を土俵の外に押し出すか、土俵に足の裏以外をつけさせた力士が勝つという、シンプルなルールです。
Q
力士の格付けを教えて
本場所の勝敗によって力士は格付けされ、その格付けを「番付」と呼びます。上から順番に横綱・大関・関脇・小結・前頭・十両・幕下・三段目・序二段・序ノ口となっています。
Q
四股名って何?
本名とは別につけられる、力士としての名前のことです。
Q
力士の給料はどうやって決まるの?
番付によって給料は決められており、それ以外にも本場所での賞金や後援会など関係者からのご祝儀など、給与以外にも様々な形で収入を得られます。
まとめ
相撲を楽しむために必要最低限の知識をお伝えしてきたが、もっと深く知りたい方はこの記事の情報を参考に、ご自身でも色々調べてほしい。
相撲の取組(試合)は動画でもアップされているので、まずは動画を見てみるのもお勧めだ。
もし日本を観光する予定があるなら、「本場所」か「巡業」、「相撲部屋の稽古」に参加して、相撲の生の迫力を感じてほしい。