• 詳しく見る

    熊本・熊本城(銀杏城)
    旅は熊本から始まり、熊本で終わりを迎えた。熊本城の前に立ち、白と黒が織りなす天守、重厚な石垣、そして今も修復が続く歴史の痕跡を眺めて、どれほど堅固な城も自然の力にはかなわないのだと、初めて実感した。加藤清正が築いたこの名城は、戦火や火災を経てもなおそびえ立っていたが、2016年の熊本地震で大きな被害を受けた。現在も歴史的な工法に則って一歩ずつ再建が進められ、文化が受け継がれている。
    今回の旅で目にしたのは、雄大な古城だけではない。文化財を尊重する日本人の姿勢と、災害に直面しても屈しない精神も目の当たりにした。歴史は単に本に書かれた文字ではなく、一枚一枚の瓦、一つ一つの石、一本一本の木組みに実際に残されている物語だ。人の一生もやがて歴史の一ページとなる。旅の価値とは、立ち止まるたびに視野を広げ、見聞を積み重ね、より多くの場所を訪れ、より多くの物語を見届けることで、人生をさらに豊かなものにすることにある。

陳泰任さんのその他のレビュー