【大地の芸術祭完全ガイド】お勧めの作品・モデルコースまで完全網羅!

【大地の芸術祭完全ガイド】お勧めの作品・モデルコースまで完全網羅!

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筆者 :  GOOD LUCK TRIP

新潟の里山ならではの体験ができる現代アートの祭典「大地の芸術祭」。
アートを楽しめるのはもちろん、日本の原風景とも言える景色や、古くから受け継がれる文化も五感で堪能できるのが魅力だ。
この記事では、見どころ盛りだくさんの大地の芸術祭を満喫するために、必要な情報を網羅的に紹介する。
現代アート、里山文化・民俗、地方創生、四季折々に異なる風景、そんなワードに心惹かれる方は、ぜひ一読してほしい。

世界最大級の国際芸術祭「大地の芸術祭」

新潟県の越後妻有地域(十日町市、津南町)で開催される地域芸術祭が「大地の芸術祭」だ。
地域芸術祭とは、地域固有の文化や自然と現代アートとを融合させ、アートを通して地域の魅力を発信する取組で、「大地の芸術祭」はそのパイオニアである。
大地の芸術祭は2000年から3年に一度のペースで開催している。
次回は2027年に、第10回展を開催予定だ。
大地の芸術祭では、アート作品やプロジェクトを通して、雪深い里山の自然・文化を感じ、学び、楽しめる。
豊かな自然を活かした作品、空き家や廃校を活用した作品、トイレや公園、トンネル改修など公共事業としての作品などを地域の人々と作り上げる。
なかには食事や宿泊ができるアート作品もあり、五感を通して越後妻有の魅力を体感できる。
開催期間以外でも、200点以上の作品を鑑賞できるほか、季節ごとに企画展やイベントが行われている。

アートを通じて里山の魅力を満喫しよう(作品:内海昭子「たくさんの失われた窓のために」)
アートを通じて里山の魅力を満喫しよう(作品:内海昭子「たくさんの失われた窓のために」)

越後妻有ってどんなところ?

日本海側に位置する新潟県の南部に広がる越後妻有。
現在の十日町市が成立する前の区分である、十日町エリア・川西エリア・中里エリア・松代エリア・松之山エリアの5つのエリアに、津南町(津南エリア)を加えた6つのエリアから成る地域だ。
日本有数の豪雪地帯で、冬には2〜3m、山の中の集落では4mを超える雪が積もる。
信濃川や中津川が流れる山間地には、河岸段丘や棚田が広がり、雪解け水を利用した稲作が盛んだ。
魚沼産コシヒカリをはじめ、高品質な米を育てる地域としても知られる。
春は山菜、秋はきのこや木の実など、里山の恵みが暮らしを支え、雪下野菜や味噌、漬物など、雪国ならではの食文化が受け継がれてきた。
冬の農閑期には織物や木工が発展し、十日町織物などの地場産業を育んだ。
また、「清津峡」や「美人林」といった豊かな自然や、「星峠の棚田」といった農耕文化が造りあげた美しい景観も越後妻有の魅力である。
雪や自然の恵みがある一方で、険しい山々に囲まれ、雪深い地域ではひとりでは生きていけない過酷さもある。
そのため、越後妻有の人々は古くから助け合い、知恵を出し合いながら暮らしてきた。
大地の芸術祭に足を運んだ観光客を、地域住民が作品受付で出迎え、にこやかに語りかける姿などに、その助け合いの精神性は今も息づいている。
農業などを通して大地と関わってきた里山の暮らし・助け合いの精神性が、今も豊かに残っている地域が越後妻有だ。

雪深い里山だからこそ生まれた魅力を持つ地域・越後妻有
雪深い里山だからこそ生まれた魅力を持つ地域・越後妻有

大地の芸術祭のコンセプト

大地の芸術祭は10のコンセプトを元に、様々なプログラムを開催している。

1. アートを道しるべに里山を巡る旅

合理性の対極にある“非効率”を意識し、アートを点在させることで、訪れる人が五感を開き、生の素晴らしさや記憶を全身に蘇らせる。

2. 他者の土地にものをつくる

先祖から受け継いできた土地に他者が入るには地域の了承を得なければならない。
作家は地域を学び、作品プランを練り、熱心に伝えて地域との信頼関係を築いていく。
違う人間の考えの種が他者の土地に植えられ育つことで、建前や立場を超えて協働が生まれる。

3. 人間は自然に内包される

豪雪地帯での営みによって築かれた、人と自然の関係性を起点に、すべての活動に「人間は自然に内包される」という理念が貫かれている。

4. アートは地域を発見する

よくある里山の風景が、アートにより切り取られ浮かびあがる。
地域にとって見慣れた風景、道具、集落などが、外からきた作家に発見され、表現される。
そしてアートは場の力、作品の奥に広がる風景を際立たせる仕組みにもなった。

5. あるものを活かし、新しい価値をつくる

空き家や廃校を舞台にした作品により、土地の記憶や知恵を次世代へと継承。
これらの建物は地域コミュニティの一部としても生き続けている。

6. 世代、地域、ジャンルを超えた協働

アーティスト、ボランティアに訪れた都市の若者などに対し、地域住民ははじめ困惑し衝突もしたが、活動の熱意はやがて協働という動きを生み出すに至った。

7. 公共事業のアート化

公園・トイレ・宿・トンネルなど、公共事業をアートプロジェクト化し、多くの作品が生まれた。

8. ユニークな拠点施設

越後妻有の文化・自然を凝縮した施設が世界的建築家やアーティストによって設計され、集落をつなぐ存在となっている。

9. 生活芸術

人間の作ってきたものは全て「美術」である。さらにその最も基本的な表れは「食」であるという理念により、地元の人々を主役に「食」に力を入れている。

10. グローバル/ローカル

国際的なアーティストや文化機関の参加を通じて、過疎の里山が世界とつながる“ヒューマンスケール”の交流拠点へと発展。これが、あらゆることへの可能性となる。

コンセプトを知ることでより深く楽しめる大地の芸術祭

大地の芸術祭は、越後妻有という土地に根ざした営みを、世界的な芸術活動として再編成しながら、地域再生の新しいモデルを提示するプロジェクトと言っても良いだろう。
例えば、地域住民の蔵や倉庫に眠っていた物を作品に昇華した「農具の時間」などからは、コンセプトを強く感じられる。
また、ボランティアとして大地の芸術祭を支える「こへび隊」に参加し、アート作品の受付や管理、メンテナンス、ツアーガイドを通して、アーティスト・地域住民・訪れる人々と交流すれば、このコンセプトをより一層深く感じられるはずだ。

いつ訪れても大地の芸術祭の魅力を感じられる「通年プログラム」

越後妻有では3年に1度の開催期間だけでなく、年間を通じて地元住民・アーティスト・こへび隊など様々な団体が協力し、多彩な活動を展開している。
特に、通年プログラムと呼ばれる毎年のイベントでは、アートを道しるべに越後妻有の四季を楽しむことができる。
また、小中学生向けには、アーティストや専門家が講師となり、アートやスポーツのワークショップ、農業体験、集落のお祭りなど、遊びながら学べる「越後妻有の林間学校」が開催される。
通年展示されているアート作品と、これらの活動があるため、開催期間以外に訪れても大地の芸術祭の魅力を充分に感じられるだろう。

冬には豪雪地帯だからこそできる雪遊びの体験イベントも
Photo by Nakamura Osamu 冬には豪雪地帯だからこそできる雪遊びの体験イベントも

大地の芸術祭の会場

越後妻有の以下6つのエリアが、大地の芸術祭の会場となる。

  • 十日町エリア
  • 川西エリア
  • 中里エリア
  • 松代エリア
  • 松之山エリア
  • 津南エリア

作品のみならず、各エリアが持つ魅力も併せて楽しもう。
ここからは各エリアの魅力と主要施設、お勧めの作品を紹介していく。

会場となる越後妻有エリア
会場となる越後妻有エリア

大地の芸術祭の玄関口・拠点となる「十日町エリア」

5つある十日町市内のエリアの中でも、中心部で交通の要衝となるエリア。
北越急行ほくほく線とJR飯山線が通る「十日町駅」があり、大地の芸術祭の玄関口として多くの人々が訪れる。
駅周辺には観光拠点となる施設が充実しており、大地の芸術祭の主要施設である「越後妻有里山現代美術館MonET」、「明石の湯」も徒歩圏内だ。
両施設には、食堂や土産店などが揃う道の駅「クロステン」も隣接する。
十日町エリアは、河岸段丘の平地を活かした稲作をはじめ、切り花・きのこ栽培などの複合農業が盛んで、街の随所に織物文化の面影が残るのも特徴だ。
また、新潟県唯一の国宝・火焔型土器の出土地でもあり、縄文時代(紀元前約1万8000年頃〜紀元前300年頃)の貴重な遺跡が存在する。
「十日町市博物館」では、火焔型土器をはじめとする縄文時代の資料や雪国の暮らしを学べる展示を楽しめる。
ここからは、そんな十日町エリアの主要施設とお勧めの作品を紹介する。

越後妻有里山現代美術館 MonET

2021年にリニューアルオープンした現代美術館で、10数点の作品を常設。
越後妻有の風土・文化の特質に深く向き合った作品や、展示する空間や時間の変化を体感できる作品を楽しめる。
建築家・原広司(はら ひろし)が設計した半屋外のコンクリートの回廊とガラス張りの建築、その中央の池にはレアンドロ・エルリッヒが建築と融合させた作品を手掛けるなど、建物そのものも見どころだ。
館内には、大地の芸術祭のロゴグッズやアーティストグッズ、地元の名産品を購入できる「MonETミュージアムショップ」や、アートな空間でドリンクとスイーツを味わえる「サロン MonET」も併設されている。

鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館

廃校となった小学校を、絵本作家・田島征三(たしませいぞう)が「鉢&田島征三絵本と木の実の美術館」として再生。
学校全体が一冊の大きな絵本のようになっており、体育館・校舎・グラウンドを進むと物語が進んでいく“空間絵本”だ。
黒板や廊下、教室には木の実や流木、廃材を使った立体オブジェが並ぶ。
最後の在校生やオバケなどの登場人物が物語として息づき、建物と展示が一体となった独特の空間を体験できる。
校庭にも絵本の世界が広がり、ヤギの「しずか」親子が暮らし、休耕田を活用したビオトープでは四季折々の小さな生き物を観察可能。
里山に生息する生き物たちの気配を感じられる美術館となっている。
館内には、地元食材を使った軽食やスイーツを味わえる「Hachi Café(ハチカフェ)」、田島征三の絵本やオリジナルグッズを扱うショップ「本屋くさむら」も併設。

うぶすなの家

築100年ほどの茅葺き古民家を改修し、日本を代表する陶芸家たちが暮らしの空間をやきもので彩ったのが「うぶすなの家」。
かまどや囲炉裏、洗面台、浴槽まで陶器でつくられた館内で、作品を眺めながら食事を楽しめる。
1階の食事処では、棚田で育った米や旬の山菜など、地元の食材を使った定食を提供。
焼き物の器で味わう料理は、地域の人々の温かみと自然の恵みを同時に感じられる。
2階には三つの茶室があり、落ち着いた空間で焼き物作品を鑑賞できる。
一棟貸しの宿泊にも対応しており、里山の夜と朝をゆったり過ごせるのも魅力だ。

十日町エリアで特にお勧めの作品

これまで紹介してきた施設や作品以外にも、十日町エリアには様々な作品が展示されている。
その中でも特にお勧めの作品を紹介しよう。

作品名 作家 概要
もうひとつの特異点 アントニー・
ゴームリー
壁を外し骨組みが露出した家に、壁床天井から682本のコードが張られ、多面体の中心で作者の身体像が凝集する。宇宙の起点を示す題名に重ね、時空の誕生を内包する試み。
アスファルト・スポット R&Sie
建築事務所
作品は駐車場であり、地形の一部で道の延長でもある。十日町市を少し拡大して信濃川とつなぎ、背景の山並みと対応した地形となった。日本一停めづらい駐車場とも言われている。

静かな里山でアート鑑賞を楽しめる「川西エリア」

信濃川西岸の河岸段丘に広がる里山「川西エリア」。
平らな段丘面を生かした稲作が盛んで、魚沼産コシヒカリの田んぼが景観を形づくる。そばや酒、餅などの特産品もこの土地から生まれてきた。
集落や田園に作品が点在し、四季や時間帯で表情が変わる風景を楽しめる。
その静かな環境は、屋外作品の鑑賞や滞在型作品の体験に最適だ。
鑑賞の合間には、中心部にある源泉かけ流しの天然温泉「千手温泉 千年の湯」に立ち寄るのもお勧め。地元の食を味わえる直売所「じろばた」も隣接する。
アートと農業の景色が地続きにあり、里山の暮らしとともに作品を味わえるのが川西エリアの魅力だ。

光の館

見晴らしの良い場所に建つジェームズ・タレルの宿泊型アート施設。
滞在時間を通して、ジェームズ・タレルの作品世界を体感することを目的に設計され、静けさと光に向き合える空間が広がる。
2階の和室「アウトサイドイン(12.5畳)」は可動式の屋根を開けると、四角く切り取られた空が現れる。
日没時には光量を変化させるライトプログラムと相まって、空の色の移ろいがより鮮やかに感じられるだろう。
光ファイバー照明が施されている浴室「Light Bath」では、水面の光は揺らぎ、水中のものは発光して見えるなど、幻想的な体験ができる。
宿泊しなくても館内を見学できるが、浴室「Light Bath」は宿泊者のみ利用可能だ。

川西エリアで特にお勧めの作品

川西エリアで楽しめるのは「光の館」だけではない。
地域の歴史を感じられる作品や、地域の人々と協力して生み出された作品など、多彩な作品が展示されている。
なかでも、以下2つの作品はぜひ鑑賞してほしい。

作品名 作家 概要
時の回廊 十日町高倉博物館 力五山ー加藤力・
渡辺五大・山崎真一ー
地域の重要な民具や農具が保管されていた体育館全体を作品とした回廊型の展示。地域やこの施設で積み重ねてきた時間や営みの痕跡を見られる。
たほりつこ グリーン
ヴィラ
越後三山を望む本作品は5つの言葉、火、水、農、藝、天神の象形文字を新たな地肌に刻印する地上絵である。

四季折々の絶景とアート両方に触れられる「中里エリア」

信濃川と清津川・釜川・七川に恵まれた水の里「中里エリア」。
象徴的な存在は、清津川沿いに広がる「清津峡」。日本三大峡谷のひとつで、名勝・天然記念物にも指定されている。
釜川沿いにある「田代の七ツ釜」も同じく名勝・天然記念物で、この地を代表する景勝地だ。
訪れる季節によって表情が変わる景色や、異なる体験ができるのも魅力。
春は「黄桜の丘公園」に淡い黄色の花びらが舞い、里が優しい色合いに包まれる。
夏は信濃川でのラフティングや、河岸段丘を望むキャンプ場でのアウトドア体験が人気。
秋は柱状節理の岩肌と紅葉が織りなす鮮やかな渓谷美が見られる。
冬は雪質の良いスキー場で、ウィンタースポーツが満喫できる。
また、泉質の異なる温泉も各所にあり、作品鑑賞の合間に体を癒やせるのも嬉しい。
優れた自然景観とアートの両方に触れるのが、中里エリアならではの楽しみ方だ。

Tunnel of Light(清津峡渓谷トンネル)

「Tunnel of Light」(清津峡渓谷トンネル)は、清津峡の歩行トンネル全体をアートとして体験できる、中里エリアの主要施設だ。
2018年の改修時にマ・ヤンソン/MADアーキテクツがトンネル全体を外界から遮断された潜水艦に見立て、トンネル内の各見晴所を潜望鏡として外の景色を取り込む仕掛けとともに、自然の5大要素(木・土・金属・火・水)を感じさせる空間に生まれ変わらせた。
各見晴所からは、峡谷の岩肌や流れを間近に望める。
終点のパノラマステーションでは、水面に谷と空が映り込む幻想的な景色が広がる。入口周辺にはカフェや足湯、ショップ、トイレ、駐車場が整い、鑑賞の合間に休憩や食事、買い物も楽しめるのも嬉しいポイント。
なお、期間によっては事前予約が必要なため、訪問前に公式ページで確認しておくと安心だ。

磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館[SoKo]

旧清津峡小学校を改修して誕生した「磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館[SoKo]」。
「展示しながら、保管する」をコンセプトに、体育館と校舎棟で現代アート作品を公開している。
校舎棟では、磯辺行久(いそべゆきひさ)の作品群を常設展示の中心に据え、地域の地勢と暮らしをアートで読み解く展示を行う。
木床を外してコンクリート基礎を見せた無機質な体育館では、大型彫刻やインスタレーション作品を鑑賞できる。
越後妻有でのプロジェクトをはじめ、様々な企画展も開催。
主に特別プログラム期や土日祝に合わせて開館されるため、訪問前に公式ページを確認してほしい。

中里エリアで特にお勧めの作品

紹介する施設とあわせて、中里の自然に点在する作品を見て回ろう。
数ある作品の中でも、特に以下2つの作品には足を運んでほしい。

作品名 作家 概要
カクラ・クルクル・アット・ツマリ ダダン・
クリスタント
竹が主な素材である風車、バリ島の郷土民芸品「カクラ・クル・クル」を棚田に設置。心地良い竹の音と草花の匂いに包まれる。3年に1度のトリエンナーレ時のみ公開。
ポチョムキン カサグランデ&
リンターラ建築事務所
古い田んぼと川の間に立つ「後期産業社会の神殿」。廃棄物が不法投棄された過去をもつこの場所を公園として再生した作品。現代人と自然の関係を考える場として構想されたインスタレーション。

里山の暮らしとアートが地続きにある「松代エリア」

「松代エリア」は、信濃川の支流「渋海川」沿いを中心に広がる丘陵地帯。
周囲を山に囲まれ、標高はおよそ150mから600mに及ぶ。
主な産業は稲作で、斜面を切り開いた棚田や、川の流れを変えて田をつくる「瀬替え」などの知恵が息づく。
越後妻有の西の玄関口として機能している「まつだい駅」のすぐそばには、大地の芸術祭の拠点のひとつ「まつだい『農舞台』」があり、館内展示と周辺の屋外作品を通年で楽しめる。
里山の暮らしとアートが地続きにある、一体感こそが松代エリアの魅力だ。

まつだい「農舞台」フィールドミュージアム

まつだい「農舞台」フィールドミュージアムは、オランダの建築家グループMVRDVが設計した拠点施設「まつだい『農舞台』」を起点に、山頂の松代城までの約2kmに約40点の作品が点在する“屋外美術館”だ。
館内展示と屋外作品を合わせて巡ることで、棚田や瀬替えなど雪国の農耕文化と景観を体感できる。
”食”と”農”をテーマにしたプログラムを楽しめるのも魅力のひとつ。
レストラン「越後まつだい里山食堂」は、空間自体がフランスのジャン=リュック・ヴィルムートの作品空間(「カフェ・ルフレ」)であり、アート空間の中で地元食材を使った料理を味わえる。
敷地内には田んぼがあり、地域の人々の暮らしや稲作の様子を垣間見られる。
春は山菜取り、夏は里山散策、秋は稲刈り、冬は雪遊びなど、地域の自然文化に触れられる体験プログラムも多数開催。
敷地内は広く作品数も多いため、車で巡るのがお勧めだ。

まつだい郷土資料館

「まつだい郷土資料館」は、築約140年のけやき造り古民家を移築・活用した資料館だ。
豪雪に耐える太い梁と約10mの大黒柱が家を支え、江戸時代(1603年〜1868年)の囲炉裏や座敷、茶の間が当時のまま残っている。
2024年に、尾花賢一の作品「まつだい郷土しりょう館」を館内に展示。
郷土品や施設に新たな視点を与え、場所が持つ固有の物語を炙り出した。
そのほか、国の重要文化財である「松苧神社」の資料や、「にほんの里100選」に選ばれた棚田の映像も公開している。
個別鑑賞券のほか、まつだい「農舞台」フィールドミュージアム券でも入館可能だ。

奴奈川キャンパス

2014年に閉校した奴奈川小学校を丸ごと活用した「奴奈川キャンパス」。
見るだけでなく、触れる・聞く・嗅ぐなど、五感で楽しめるアートを展開している。
校舎内外には、木の球に浸かる「木湯」、グラウンドの周りをトロッコで進む「はなしるべ」、回転するガラスで色の移ろいを楽しむ「Saiyah #2.10」など、多彩な作品が点在。
ワークショップも多数開催しており、館内作品に登場する猫「Hoppe」をモチーフにした塗り絵なども人気だ。

松代エリアで特にお勧めの作品

松代エリアの住民と協力して作り上げた作品をご紹介。
紹介する作品を鑑賞することで、より松代という地域を肌で感じられるはずだ。

作品名 作家 概要
黄金の遊戯場 豊福亮 日用品や工業部品を金色で覆った“遊び場”。実際に遊べる体験型で、回を重ねるごとに要素を増やし続けている。
リバース・シティー パスカル・
マルティン・
タイユー
太い柱に吊るされた大きな鉛筆の群れ。一本一本には世界の都市名が書かれている。逆さまに吊るされたカラフルな都市は、人びとに先端を向け、見上げる者にその迫力とともに脅威を感じさせる。

雪深い里山の魅力に触れられる「松之山エリア」

「松之山エリア」は、長野県境に位置する山に囲まれた標高200mから600mの丘陵地帯。
平均積雪は3mをこえ、多い年は5mに達する雪深い地域だ。
春は雪解け水が棚田を潤し、稲作が景観を形づくる。
山菜やきのこなどの特産品に加え、日本三大薬湯のひとつ「松之山温泉」も有名。
冬の温泉街は雪に包まれ、旅館が並ぶ情景にいっそうの趣が漂う。
四季折々の表情が美しいブナ林「美人林」も人気が高い。
「森の学校」キョロロを拠点に、里山の生態系への理解を深める取り組みが進み、自然と触れ合いながら学べる場が整っている。

越後松之山「森の学校」キョロロ

雪国の里山の生物多様性をテーマにした参加体験型の小さな自然科学館。
常設展と企画展では、雪国の里山の生物多様性を科学的に解説し、体験的に楽しみながら学べる展示やプログラムを展開している。
定番の「里山の生き物探検」では、学芸スタッフと一緒に里山へ出かけ、季節ごとの自然の変化を感じながら、生き物の採集・観察を行う。
隣接する美人林では、四季折々の絶景と様々な野鳥を見られるので、あわせて足を運んでほしい。

夢の家

里山の古民家を“夢を見るための宿”として再生した宿泊体験型のアート。
「あわただしい日常の中で自分と向き合ってほしい」という思いから生まれた作品だ。
作家がデザインしたパジャマに着替え、特製のベッドで眠り、翌朝に見た夢を書き残す。
記された夢は「夢の本」として蓄積され、宿泊者と体験そのものが作品となる。
宿泊者だけでなく、公開日には館内見学も可能。展示や記録資料、ベッドやパジャマ、夢の本の一部を通して作品の核心に触れられる。
公開日や予約方法は公式ページで確認してほしい。

松之山エリアでお勧めの作品

松之山の自然を感じられる作品だけでなく、多彩な作品も点在。
その中でも、特に以下の作品はぜひ鑑賞してほしい。

作品名 作家 概要
最後の教室 クリスチャン・ボルタンスキー
+ジャン・カルマン
人間の不在をテーマにする作家が、旧東川小学校全体を舞台に、かつてこの場所にあった子供たちや教師の賑わいと、その不在を感じさせる作品。
家の記憶 塩田千春 空き家の1階から天井裏まで黒い毛糸を張りめぐらせ、住民から集めた“捨てられない物”とともに家に眠る記憶を可視化する。
ステップ イン プラン ジョン・クルメリング
(テキストデザイン浅葉克己)
松之山の入り口に現れる巨大看板。松之山の地図にもなっており、登ることもできる。看板の文字は日本のタイポグラファーの一人者である浅葉克己が担当。

多様な地形と自然景観とともにアートを楽しめる「津南エリア」

新潟県の南端、長野県との県境にある里山が「津南エリア」だ。
南に苗場山が聳え、信濃川に志久見川・中津川・清津川が合流し、川沿いには河岸段丘が幾重にも重なり、その上に田畑と集落が広がる。
秘境「秋山郷」には、マタギ文化をはじめ、独自の文化や風習、生活様式が残る。
中津川に沿って山深い谷あいに集落が連なる地域で、春は雪解けと新緑、夏は渓流と木陰、秋は渓谷一面の紅葉、冬は静かな雪景色と、四季の表情がくっきり変わる。
名所「龍ヶ窪」や夏の「津南ひまわり広場」に加え、段丘の縁からの眺めも外せない。
アートとあわせて、地形や季節の移ろいを体感できるエリアだ。

アケヤマ -秋山郷立大赤沢小学校-

「アケヤマ -秋山郷立大赤沢小学校-」は、廃校となった小学校を活用した“山の学校”。
秋山郷で受け継がれてきた暮らしの知恵や技術を、アーティストと住民、研究者がともに学び、作品として展開している。
2階の元体育館は建築家・佐藤研吾(さとうけんご)が設計し、展示ブース自体も作品として楽しめる。
館内には、民具や記録、インスタレーションが並び、山の暮らしの技や知恵を五感で感じられる。
ワークショップが随時開催され、地元の名人と一緒に山の暮らしを体験できるのが特徴。

越後妻有「上郷クローブ座」

2012年に閉校した中学校を2015年に再生したパフォーミング・アーツ(演劇やダンス、音楽などの舞台芸術)の拠点。
滞在制作や合宿稽古に対応するほか、公演が行われる劇場としての機能も備えている。
時期ごとに多彩な公演を開催しており、そのひとつが、地元の女性が演じながら料理をふるまう期間限定の「上郷クローブ座レストラン」。公演スケジュールは公式サイトで確認できる。
魚沼産コシヒカリや津南の旬を味わいながら、物語に入り込むひとときを過ごせる。
館内には、自動人形が歌を奏でる「上郷バンドー四季の歌」や、自然光と色彩が織りなす空間表現「太陽の移ろい」、農具を楽器に見立てて音を響かせる「農具は楽器だ」などの作品も展示。

津南エリアで特にお勧めの作品

津南エリアには、里山と国外を繋ぐ拠点や作品が存在する。
相反するローカルとグローバルが同時に存在する場所へ足を運んでみよう。

作品名 作家 概要
香港ハウス イップ・チュンハン
(葉晉亨)
空き家を改修した交流拠点。香港のアーティストが滞在し、会期に合わせて展示やパフォーマンス、カフェなどを開く。
国境を越えて・山 リン・シュンロン
(林舜龍)
集落の公園に現れた大きな門。交趾焼の陶俑が踊り、奥にブロンズの水牛がのぞき、台湾文化への入口を示す。
0121-1110=109071 イ・ジェヒョ
(李在孝)
作家は何の変哲もない木を組み合わせ、美しく豊かな表情の木をつくり出した。3つの巨大な球体はいずれ植物に覆われ、周囲の環境と調和してゆく。

短期間で大地の芸術祭を満喫する1泊2日のモデルコース

大地の芸術祭は越後妻有の広大な大地に、多彩な作品が点在している。
各エリアの魅力もあわせて楽しもうとすると、どれだけ時間があっても足りない。
そこで、1泊2日で効率良く大地の芸術祭を満喫できるモデルコースを紹介する。
なるべく多くの施設や作品を巡れるよう、レンタカーの利用を前提としているため、車を運転する準備を事前に整えておきたい。

1日目

スタート地点は上越新幹線の停まる越後湯沢駅。
駅周辺でレンタカーを借りて、中里エリアの作品と十日町エリアの主要施設を巡り、日本三大薬湯のひとつ「松之山温泉」の旅館に泊まる。

  1. 越後湯沢駅周辺の営業所でレンタカーを借りて出発
  2. 作品「中里かかしの庭」の鑑賞
  3. 作品「日本に向けて北を定めよ(74°33’2”)」の鑑賞
  4. 十日町駅周辺でランチし、十日町駅観光案内所で情報収集
  5. 越後妻有里山現代美術館 MonET」の作品を鑑賞
  6. 鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」の作品を鑑賞
  7. 松之山温泉の旅館に宿泊

十日町駅周辺でランチを食べる際には、以下ページの内容も参考にしてほしい。

2日目

次の日は松之山エリア・松代エリア・中里エリアと幅広く巡り、大地の芸術祭の中でも有名な作品であるTunnel of Light(清津峡渓谷トンネル)へ。
越後湯沢駅周辺の営業所でレンタカーを返却したら、帰路へ着こう。

  1. 松之山温泉の旅館を出発
  2. 作品「最後の教室」を鑑賞
  3. まつだい「農舞台」フィールドミュージアムの松代城下に点在する作品を鑑賞
  4. 越後まつだい里山食堂」でランチ
  5. 作品「たくさんの失われた窓のために」を鑑賞
  6. Tunnel of Light」(清津峡渓谷トンネル)を探索
  7. 越後湯沢駅周辺の営業所でレンタカーを返却して帰路へ

旅の記念にピッタリ!大地の芸術祭の公式グッズ

オンラインショップや現地施設では、大地の芸術祭のオリジナルグッズを販売している。
公式ガイドブックやロゴ入りのピンバッジ、Tシャツ、トートバッグなど、旅の記念やお土産に適したアイテムが揃う。
大きなマップには、作品場所や各作品の写真も載っているので全体像がわかりお勧めだ。
また、参加アーティストのグッズや越後妻有の文化を感じられる品にも注目してほしい。
越後妻有里山現代美術館 MonET」2Fの「MonETミュージアムショップ」は、特に多くのアイテムを取り扱っているので、旅の途中に立ち寄ってみよう。

季節ごとに異なる大地の芸術祭と越後妻有の魅力

大地の芸術祭は、会期外も含めて季節に合わせたイベントが各地で開かれるため、訪れる時期によって体験できる内容が異なる。
越後妻有の景観は季節ごとに大きく変化し、自然の中に設置されたアート作品の見え方も移ろう。
ここからは、季節ごとの魅力と楽しみ方を紹介する。
好みに合う季節を選べば、大地の芸術祭と越後妻有をより深く味わえるだろう。

残雪が彩る里山風景に出会える越後妻有の春

春の越後妻有には、まだ雪が残る里山に多彩な花々が咲き誇り、春の訪れを感じさせる景色が広がる。
条件が揃えば、残雪と桜のコラボレーションが楽しめるスポットもある。
雪解け水で満たされた棚田が広がる風景も美しい。
また、春の山菜を使った郷土料理を楽しめるのもこの季節の魅力だ。

残雪と桜を同時に見られるスポットも
残雪と桜を同時に見られるスポットも
雪解け水で満たされた棚田
雪解け水で満たされた棚田

アウトドアも満喫できる越後妻有の夏

夏といえば、津南エリアにあるひまわり畑が有名。約50万本のひまわりが一面を黄色に染める光景は圧巻だ。
越後妻有里山現代美術館「MonET」の池では水遊びができ、川沿いのキャンプ場ではアウトドアも満喫できる。

津南エリアのひまわり畑
津南エリアのひまわり畑

多彩な紅葉スポットが魅力の越後妻有の秋

秋になると、越後妻有の山々は鮮やかな紅葉に包まれる。なかでも津南エリアの秋山郷と中里エリアの清津峡はひときわ美しい。
秋山郷には多彩な紅葉スポットが点在し、場所ごとに異なる景観を楽しめる。
清津峡では柱状節理と紅葉が織りなす絶景を、「Tunnel of Light」(清津峡渓谷トンネル)から望むのがお勧め。
さらに秋は新米の季節で、越後まつだい里山食堂の新米フェアでは、炊きたての新米を試食し、その香りと食感を楽しめる。

秋山郷の紅葉スポット「津南見玉公園」
秋山郷の紅葉スポット「津南見玉公園」
紅葉で染まる清津峡
紅葉で染まる清津峡

深い雪に覆われる越後妻有の冬

冬の魅力といえば、深い雪に包まれた里山の風景。
各施設ではスノーシュー体験や雪そり、スノーチューブなど、雪国ならではのアクティビティイベントが行われる。
また、厳しい冬を乗り越えるための栄養豊富な料理を、かつて各家庭で行われていた冠婚葬祭用のお膳と器で提供する、大地の芸術祭の特別プログラム「雪見御膳」も芸術祭のコンセプトを深く感じることができる。
雪見御膳を堪能したい場合は、大地の芸術祭の公式ツアーへの参加が必須だ。

豪雪地帯の越後妻有ならではの風景が広がる
豪雪地帯の越後妻有ならではの風景が広がる
地域の人々がもてなす雪見御膳
Photo by Nakamura Osamu 地域の人々がもてなす雪見御膳

大地の芸術祭を巡る前に知っておきたいポイント

大地の芸術祭を満喫するためにも、これから紹介するポイントを参考にしてほしい。

山間部では電波が悪いため紙のマップも用意する

山間は電波が弱い場所が多く、地図アプリが読み込めないことがある。
そのため、観光案内所や主要拠点で販売する紙のマップを携帯するか、スマホにマップを保存しておくと安心だ。
その上でモバイルバッテリーも携帯しておこう。

電波が入らない場所に行く可能性も考慮して準備を
電波が入らない場所に行く可能性も考慮して準備を

土の上を歩く機会があるため動きやすい服装と靴を準備する

田畑のあぜ道や山道、山中に作品が点在しているため、舗装されていない土の上を歩くこともある。
滑りにくいスニーカーやトレッキングシューズを履き、両手が自由になるバッグを持っていくと歩きやすい。
加えて、帽子や日焼け止め、薄手の雨具を準備しよう。夏は虫よけ、春秋は体温調節がしやすい上着があると、より快適に散策できる。

歩きやすい靴と服装を用意しておこう
歩きやすい靴と服装を用意しておこう

紅葉の時期は車やスポットも混雑する

紅葉の見頃には越後妻有内の道路が混雑し、予定より移動時間が長くなる場合がある。
時間に余裕を持ったプランを組むと安心だ。
また、人気の「Tunnel of Light」(清津峡渓谷トンネル)は季節によっては入場に事前予約が必要なので、出発前に手続きを済ませておこう。

秋に訪れるなら渋滞するリスクを考慮したプランを立てておこう
秋に訪れるなら渋滞するリスクを考慮したプランを立てておこう

雪道ならではの装備・運転を心がける

越後妻有は豪雪地帯のため、冬は雪道の運転が避けられない。
国道など交通量の多い道路は除雪されているが、山道は凍結しやすく、カーブや橋の上は特に滑りやすい。速度を落とすなど、いつも以上に慎重な運転が求められる。
レンタカーを利用する際は、スタッドレスタイヤが装着されているか必ず確認してから出発しよう。

雪道の運転はいつも以上に気をつけよう
雪道の運転はいつも以上に気をつけよう

大地の芸術祭に関するよくある質問

Q

大地の芸術祭はどこで開催されるの?

A

新潟県の南部に広がる十日町市と津南町で開催され、この2市町をあわせて「越後妻有」と呼んでいます。東京から電車で約2時間、車で約3時間半のアクセスしやすい場所です。

Q

次の大地の芸術祭はいつ?

A

トリエンナーレは2027年に開催予定ですが、それ以外の年も作品公開や企画展、イベントを開催しています。

Q

大地の芸術祭は電車とバスだけでも巡れる?

A

十日町エリアと松代エリアの駅周辺の作品なら巡れますが、その他のエリアの作品をなるべく多く巡りたいならレンタカーや公式ツアーの利用がお勧めです。公式ツアーは、新幹線停車駅である越後湯沢駅発着なのでとても便利です。

まとめ

大地の芸術祭の魅力や、開催される地域の魅力、主要施設やお勧めの作品など、満喫するために必要な情報を網羅的に紹介してきた。
開催期間外でもアート作品は展示され、季節ごとに異なるイベントも開催されているので、日本の原風景や古くから息づく文化を体感したい方は、ぜひ越後妻有に足を運んでみてほしい。