
東京の下町、江戸川区へ お江戸・東京の野菜を探しに行こう!
東京発祥の野菜で近年、日本国内をはじめ、海外に広まっている野菜があることを知っているだろうか。それは「小松菜」だ。東京の東側、下町の江戸川区の地名(小松川地区)の名がついている。小松菜は「江戸東京野菜」と呼ばれる東京ローカルの野菜のひとつ。江戸っ子になじみの深いこの野菜をテーマに、江戸東京の歴史、伝統と先進の東京食材の秘密に迫る。
(この記事は2025年10月18日に行われた観光ガイド・ボランティアと都内留学生向けの農業体験ツアー“東京産食材トリビアの旅”第2回小松菜編を基に、東京産食材のトリビア紹介していく)
「東京」に多様な食材がある理由
大都会のイメージが強い東京だが、多くの野菜や食材が生産されている。農地は決して多いとは言えないが、山から下町、そして島しょまで、多様な地形や気候があり、それに適した野菜や果物が作られている。日本の中でも穏やかな気候や、肥沃な土、そして豊かな海の恵みがそれを支えている。
1. 江戸から東京へ 歴史が育む野菜と食文化
東京湾の入り江と川に囲まれた江戸・東京は江戸時代に幕府が置かれ、そこから急速に発展していった。かつては水田や畑が広がり、漁業も盛んな地域であった。かつての田園風景、豊かな入り江は浮世絵の中にも見ることができる。
江戸時代(1603〜1868年)には、諸大名が一定期間ごとに江戸(現在の東京)と地元を往復する「参勤交代」という制度があった。この制度により、各地から江戸へ多くの人々が集まり、各地との交流も盛んにおこなわれた。日本各地から集まる働き手、この大名の参勤交代の影響もあり、日本各地の食べ物、食文化が江戸(昔の東京)に集まってくる。江戸では、西の京都、大阪とはまた違った食文化が育まれてきた。

そして明治〜大正時代(1868〜1926年)には、西洋の食文化もいち早く東京に導入された。西洋の野菜も持ち込まれ、ここから日本各地に広まっていった。例えばトンカツの名脇役、キャベツも東京に持ち込まれ、日本の食べ方にあったものが取り入れらた。
現在でも東京ではさまざまな種類の野菜が育てられており、農家も多くの野菜の栽培方法に精通している。東京には伝統的なものから流行最先端のものまで、多種多様な野菜や食材が取り入れられ、今も根付いている。
2. 江戸東京の歴史を伝える「江戸東京野菜」
江戸東京野菜とは、江戸期から始まる東京の野菜文化を継承するとともに、種苗の大半が自給または、近隣の種苗商により確保されていた昭和中期までのいわゆる在来種、または在来の栽培法等に由来する野菜のこと。
江戸時代から東京の食生活を支えてきた江戸東京野菜だが、現代では当時と食生活が変わってきていることもあり、一時は、その姿が食卓から消えそうな時期もあった。しかし、今日まで引き継がれてきた命を絶やしてはいけないと、現在、伝統野菜を普及させようという活動が広がっている。江戸川区が発祥の地の野菜、「小松菜」もその一つなのだ。
3. 美味しさと伝統を今に伝える農家たち
東京は園芸の先進地だった歴史もあり、東京の農家たちは過去、いろいろな野菜の栽培に挑戦してきた。畑を隅々まで効率よく使用し、そして、消費者に喜ばれる美味しい野菜作りに取り組む。まさに職人技のような技術を東京では当たり前の風景として見られる。
小松菜は、伝統的な品種から絶えず改良がおこなわれている。改良された小松菜は、より栽培しやすくなり、今では一年中出荷されるように。どんな料理にも使いやすい葉物野菜として日本各地はもとより、海外にも栽培が広まっている。
4. 本場の小松菜を味わおう
ほろ苦い味と評される小松菜ですが、本場東京の小松菜の味わいは、苦くなく、シャキシャキとした食感を愉しむことができる。
鍋物や炒め物、おひたし、ナムルなどさまざまな料理との相性も抜群。
茎部分も柔らかいため、生のコマツナをサラダにして食べるのもおすすめだ。


「東京産野菜」使用の料理を堪能できるスポット
東京産野菜を食べてみたいと思っても、流通量が少ないため、都心部で手に入れるのは難しい場合も多い。
ここでは東京産野菜を堪能できるスポットを紹介する。
最適な調理法で東京産野菜を味わえるレストラン
東京産野菜を使った料理を提供しているレストランは都内に多数点在している。
カフェや和食店、イタリアンレストランなど、さまざまな料理で東京産食材の味わいを楽しむことができる。
東京ならではの旬の味を体験できるレストランリストがあるので、東京旅行の旅程のひとつに加えてみるのもいいだろう。小松菜の栽培が多い江戸川区、葛飾区、足立区のレストランでは、地元の小松菜が食べられる店も多い。

「東京産野菜」の魅力を世界へ!
東京都が取り組む地域食材のプロモーション「東京産食材トリビアの旅」とは?
2025年、東京都は地域食材のプロモーションの「東京産食材トリビアの旅」を開始した。これは東京産食材の情報を世界に発信する取り組みの一つ。東京をよく知る観光ガイド・ボランティアや都内留学生に東京の野菜を実際に見て・知って・食べて魅力を知ってもらい、自分の言葉で世界に魅力を発信してもらうプロジェクト。
第2回は東京を代表する野菜「小松菜」を取り上げ、その発祥の地の江戸川区で小松菜の魅力を学んだ。日本をはじめ、中国や韓国、ブルネイ、イタリアの5カ国・地域の総勢16名の留学生や観光ガイドが参加した。
移動中のバス車内で披露される「東京産野菜のトリビア」
第1回目から引き続き、お笑い芸人・岩井ジョニ男氏と共にバスへと乗り込み、ワークショップがスタート。
収穫体験の江戸川区内農園に移動するまでの間、早速、江戸川区や小松菜に関するトリビアが披露された。


「眞利子ファーム」で東京産野菜・コマツナの収穫体験
バスで移動し到着したのは江戸川区松本にある「眞利子ファーム」。江戸時代からの歴史ある農園だ。農家の眞利子遼太郎さんが地域の特産野菜、小松菜の特徴を紹介してくれた。
眞利子ファームでは、種まきから40日ほどで収穫ができるコマツナを年6回収穫しているという。
ファーム内のビニールハウスに等間隔にぎっしりと育てることで、効率よくできるのだそう。小松菜の大きさが揃っているのは実は技術を駆使しているからだと、東京都の案内者からも解説があり、なるほどと納得。
コマツナのレクチャーを受けた後、眞利子さんが丹精込めて育てたコマツナを参加者で収穫。
採れたての新鮮なコマツナを前に、土を払って味見をする参加者も見られた。



江戸川区郷土資料室で歴史や生活、文化に触れる
収穫体験の後は「江戸川区郷土資料室」へ。
参加者たちは、古民家や台所、農具などの展示を見学。なかでも、海苔養殖と板海苔づくりの道具に関心を寄せていた。おにぎりの食材としてなじみ深い海苔はかつて東京湾岸で盛んに養殖されていた特産食材。留学生たちが、身近な食材から東京の歴史に触れる瞬間だった。

「コマツナ」を使った多彩な日本料理を味わう
続いては料理家島田恵子氏による試食紹介。
収穫体験をしたコマツナと、東京産食材にこだわった料理を披露した。メニューは雑煮・手巻き寿司・サラダ・浅漬け・おひたし・白玉(餅)スイーツの6品が用意された。
まずは日本のお正月に欠かせない雑煮。雑煮に使われる「出汁」づくりを実演。石のように硬い鰹節を削り器で薄く削って、そこから出汁を取ります。削りたての鰹節からはとても良い香りが広がりました。



誰もが楽しめる料理として手巻き寿司を紹介。用意されたのは生と茹でたコマツナをはじめ、ニジマスのマリネ・鯛の昆布マリネ、ツナマヨ、カニカマ、椎茸の煮物、玉子焼き、わさびなど。自分好みに組み合わせて海苔で巻き、各々カスタマイズした味わいを楽しんでいた。



参加者は東京産食材の魅力を発信 そしておうちで味わう東京産食材も披露
食事の後は、学習のまとめとしてコマツナにまつわるクイズの出題、そして質問タイム。その後、自分が触れた東京産食材の魅力をSNSに発信してもらうひと時となった。
最後に、おうちで味わう東京産食材として、「眞利子ファーム」のコマツナや小松菜パスタやケーキ、伊豆諸島の海苔、島レモンのジャムなど東京づくしのおみやげが手渡され、ワークショップが終了した。
小松菜をテーマにした半日の旅だったが、参加者からは「次回も参加したい」「新鮮なコマツナがおいしかった」といった声が多く寄せられた。



「東京産野菜」のよくある質問
Q
東京で多く生産されている野菜は何ですか?
栽培面積ではコマツナ、ホウレンソウ、ジャガイモが上位3位です。産出額ではトマト、コマツナ、ナスが上位3品目です。(2023年)
Q
東京の特産の食材を教えてください。
野菜以外にもおいしい肉や魚、日本茶などの加工品もあります。東京の特産物を調べたいときはこちら。
Q
「東京産」をおみやげとして手に入れるならどこがお勧めですか?
東京都庁にあるお土産コーナー「TOKYO GIFTS 62」や新宿駅からほど近い、「JA東京アグリパーク」、東京諸島のおみやげなら東京諸島への玄関口、竹芝ふ頭の「東京愛らんどショップ」などがあります。
まとめ
小さく限られた敷地でも驚くべき効率で生産されている「小松菜」。海と川の恵みを受け、伝統を受け継ぐ人々の農業がその美味しさを育んでいた。
東京の野菜や食材を知ることは、東京の歴史、風土、文化を知ることに繋がっていく。
東京旅の途中で東京産野菜を使ったレストランに立ち寄り、まだ知られざる東京の“食の物語”に触れて、味わってみてはいかがだろうか。
