【瀬戸内国際芸術祭2025の秋会期ガイド】日程・会場・見どころなど完全網羅!

【瀬戸内国際芸術祭2025の秋会期ガイド】日程・会場・見どころなど完全網羅!

更新 :
筆者 : GOOD LUCK TRIP

現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2025」の秋会期が、いよいよ2025年10月3日から始まる。
今回、宇多津町が新エリアに加わり、古民家や港、神社といったローカルな場を生かした充実の作品群が各会場で展示される。
この記事では、瀬戸内国際芸術祭の秋会期の基本情報をはじめ、各会場の概要・展示作品について紹介していく。
押さえておきたい情報からモデルコースまで網羅的にまとめたので、ぜひ最後まで読んでほしい。

日本最大級のアートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」

「瀬戸内国際芸術祭」は、瀬戸内海の沿岸部と島々を舞台に3年に1度、春・夏・秋の会期に分かれて開催される現代アートの祭典。
毎回国内外の著名アーティストが多数参加しており、6回目となる2025は17のエリアで総数約256点の作品展示が行われる。
作品鑑賞だけでなく、島の暮らし・食文化を通じて地域の魅力を再発見できる点も特徴で、来場者はアートと風景が融合した非日常的な体験を味わえる。
瀬戸内国際芸術祭の基本情報や楽しむためのポイント、チケットなどの情報は以下の記事を参考にしてほしい。

瀬戸内海の沿岸部と島々で開催される現代アートの祭典
Photo: Keizo Kioku/Shintaro Miyawaki 瀬戸内海の沿岸部と島々で開催される現代アートの祭典

瀬戸内国際芸術祭の秋会期はいつからいつまで?

瀬戸内国際芸術祭の秋会期は、2025年10月3日(金)〜2025年11月9日(日)の計38日間にわたり開催され、多彩なアートイベントや作品展示が行われる。
秋会期終了後(瀬戸内国際芸術祭終了後)も、展示され続ける作品や施設は多いので、会期外でも瀬戸内海の島々に足を運んでみてほしい。

瀬戸内の絶景と芸術に触れる旅へ
瀬戸内の絶景と芸術に触れる旅へ

瀬戸内国際芸術祭の秋会期の会場

瀬戸内国際芸術祭の秋会期の会場は以下の表にまとめた。
全会期を通して会場となる9エリアは秋会期の期間中も楽しめるので、併せて訪れるのもお勧めだ。

全会期
直島/豊島/女木島/男木島/小豆島/大島/犬島/高松港エリア/宇野港エリア
秋会期
本島/高見島/粟島/伊吹島/宇多津エリア
瀬戸内国際芸術祭の会場マップ
瀬戸内国際芸術祭の会場マップ

瀬戸内国際芸術祭の秋会期のみ会場となる5つのエリア

秋会期のみ会場となる5エリアの基本情報とアート作品の一部を紹介していく。
それぞれは離れた場所に位置するものの、比較的近くにあるので2〜3日かければ、5エリアを訪れることも可能だ。
ぜひ内容を参考に気になった会場、作品をひとつでも多く巡ってほしい。

古い町並みと新しい町並みが共存する「宇多津エリア」

瀬戸内海に面した香川県のほぼ中央にある「宇多津町」は県内で最も小さな港町。
古代の港「鵜足の津(うたりのつ)」に起源を持ち、平安時代(794年〜1185年)から現在まで海上交通の要衝として発展を続ける。
神社仏閣・町家が残る「古い町並み」と、瀬戸大橋の開通を契機に再整備された「新しい町並み」の共存が大きな特徴。
コンパクトな町内で新旧が調和した景観を楽しめるほか、歴史や文化を体感できるスポットも多い。
また、全国的に「塩のまち」で知られ、現在も昔ながらの塩づくりが受け継がれている。
拠点の高松駅から宇多津駅までは、直通のJR予讃(よさん)線に乗れば、20〜40分でアクセスが可能だ。
エリア内は、JR宇多津駅・宇多津町役場・宇多津臨海公園の3か所を結ぶ臨時無料シャトルバス(平日は30分に1本・土日祝は15分に1本間隔)を使うと移動が便利。
瀬戸内国際芸術祭2025は、古街(こまち)周辺・港沿いの各場所で展示が行われる。
宇多津エリア展示されている作品の概要を紹介していこう。

新旧の街並みが共存する宇多津
新旧の街並みが共存する宇多津

山本基「時を紡ぐ」

宇多津町役場から徒歩約2分、古街エリアにある歴史的建造物「倉の館・三角邸(旧堺邸)」の和室空間で展開されるインスタレーション。
塩を素材に無数の泡のようなセルを床一面に描き連ねている。
打ち寄せる波や潮の流れを想起させる造形によって、日常の断片が織り重なる風景を生み出す。
一つひとつのセルには大切な人との時間・思い出が込められ、鑑賞者は記憶の移ろいを体感できる。

山本基「時を紡ぐ」(ときをつむぐ)(作品イメージ)
山本基「時を紡ぐ」(ときをつむぐ)(作品イメージ)
開館時間
10:00 〜 20:00
最終入館時間:19:45
休業日
会期中無休
料金
500円

ゼン・テー「The Imperative Landscape(2025)」

古街エリアにある「伊勢之宮神社」・「八幡神社」・「旧鈴木理容店」の3か所で展開されるインスタレーション。
シンガポール出身のゼン・テー氏が現地での丁寧なリサーチを重ねて制作しており、地域の生活や祭礼との結びつきが作品に強く現れている。
特徴は、神社や古い街並みという伝統的な場所を巧みに活かした没入的で内省的な空間。
会場ごとに異なる物語・風景を楽しめ、鑑賞者は宇多津の町と時間、自然・文化などを多層的に感じ取れる。

ゼン・テー 「The Imperative Landscape(2025)」(作品イメージ)
ゼン・テー 「The Imperative Landscape(2025)」(作品イメージ)
開館時間
10:00 〜 20:00
最終入館時間:19:45
休業日
会期中無休
料金
500円

西澤利高「色のない翼の彼方」

宇多津臨海公園近くにある「海ホタル」と「復元塩田」の間に設置された屋外作品。
西澤氏が幅約210cm×高さ130cm×奥行き80cmのアクリル板2枚を手作業で削り出し、磨きをかけることで透明感と有機的な形状を持たせている。
これは瀬戸内海に広がる風景と鑑賞者の距離感を揺さぶることを狙った、作品コンセプト「水平線への記憶と距離」の表現を示す。
一見遠くにいる使者が実はすぐそばにいるという、詩的なイメージが作品の核だ。

西澤利高 「色のない翼の彼方」(作品イメージ)
西澤利高 「色のない翼の彼方」(作品イメージ)
開館時間
屋外展示作品
休業日
会期中無休
料金
無料

伝統的な技術を伝える古い町並みが残る「本島」

香川県丸亀市にある「本島(ほんじま)」は、瀬戸大橋の西側に浮かぶ塩飽(しわく)諸島の中心的な島。
塩飽水軍(16世紀に活躍した船乗り集団)の本拠地として操船技術で栄え、織田信長(おだのぶなが)ら、時の権力者から高い評価を受けた歴史を持つ。
また、腕利きの船乗りたちは優れた造船技術を活かして幕末に宮大工・家大工へ転身、塩飽大工と呼ばれる職人を多く輩出した。
現在も伝統的な技術を伝える古いまち並が良好な状態で残り、笠島地区は香川県内で唯一「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されている。
拠点の高松駅からJR予讃線で丸亀駅まで行き、徒歩8分の丸亀港からフェリーに乗れば、1時間30分前後で会場の本島港までアクセスできる。
エリア内の移動は、漆喰塗りの白壁、千本格子窓・虫籠(むしこ)窓といった、歴史的な景観を楽しめる、徒歩かレンタサイクルがお勧め。
瀬戸内国際芸術祭2025は、泊(とまり)エリアと笠島エリアに分かれて作品の展示が行われる。その一部を紹介しよう。

重要伝統的建造物群保存地区に選定されたまち並も見どころ
重要伝統的建造物群保存地区に選定されたまち並も見どころ

ジャッガイ・シリブート「ディスパッチ」

泊エリアの古民家に、本島をはじめ地域住民から集められた衣服・小物を使い、大きな幟(のぼり)のようなタペストリーを設置したインスタレーション。
素材には、ジャッガイ・シリブート氏の「後世に何を残したいか」・「いちばん大切な記憶は」の問いかけに対する住民の回答が丁寧な手刺繍によって施されている。
服という日常の痕跡が人々の記憶や季節の移ろい、生命の循環の儚さを表現し、個人史を次世代に紡ぐ。

ジャッガイ・シリブート 「ディスパッチ」Photo: Nicolas Wefers(作品イメージ)
ジャッガイ・シリブート 「ディスパッチ」Photo: Nicolas Wefers(作品イメージ)
開館時間
9:30 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
500円

エカテリーナ・ムロムツェワ「House of Shadows(影の家)」

笠島エリアのまち並にある空き家全体を使ったインスタレーション。
木彫のオブジェや人形、絵が描かれたプラスチックシートなど、部屋ごとに異なるモチーフがゆっくりと回転し、その影が布・紙の上に投影される視覚的な仕掛けが特徴だ。
影の動きに同期して、島民から集めた子どもの時や最近見た夢を録音したサウンドが流れている。
影と音が重なると「集合的な明晰夢(lucid dreaming)」のような空間を生み、鑑賞者の感性を刺激する。

エカテリーナ・ムロムツェワ「House of Shadows(影の家)」
エカテリーナ・ムロムツェワ「House of Shadows(影の家)」
開館時間
9:30 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
500円

筧康明「Echoes as Air Flows」

泊エリアに展示されているネットワーク型インスタレーション。
鑑賞者が作品に息を吹き込むことで遠隔地と連動して作品が変化する仕組み。
離れた場所にいる別の鑑賞者とのつながりを感じられるインタラクティブな仕掛けが特徴だ。

筧康明「Echoes as Air Flows」
筧康明「Echoes as Air Flows」
開館時間
9:30 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
無料

眞壁陸二「咸臨の家」

泊エリアにある、咸臨丸(かんりんまる/日本初の蒸気軍艦)の水夫(かこ/乗組員)だった横井松太郎氏の生家を舞台にしたインスタレーション。
江戸時代(1603年〜1868年)の杉戸絵、モスクのタイル、教会のモザイク画などを発想の原点に絵画の文化を超えた色彩豊かな空間が特徴だ。

眞壁陸二「咸臨の家」
Photo:Yasushi Ichikawa 眞壁陸二「咸臨の家」
開館時間
9:30 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
500円

Vertrek「出航」

泊エリア、本島港の玄関口に立つ、日本初の太平洋横断帆船「咸臨丸」をモチーフにした鋼の彫刻。
帆を張って宙に浮かぶかのようなデザインが印象的で、海を背景としたシルエットや錆びた質感が塩飽諸島出身の船員たちの歴史的な航海を想起させる。
島に上陸後すぐに目に入るため、地域のランドマーク的なアイコンにもなっている。

Vertrek「出航」
Photo:Kimito Takahashi Vertrek「出航」
開館時間
屋外展示作品
休業日
無休
料金
無料

古民家が階段上に建つ独特な景観が特徴の「高見島」

香川県仲多度郡多度津町にある「高見島」は、多度津町の北西沖約7.5kmに浮かぶ円錐型の島。
かつては除虫菊の生産で栄えた歴史を持つが、現在はほとんど生産していない。
30人ほどが暮らす島内は平地が少なく、急な斜面に家々が階段状に建ち並び、自然石を使った乱れ積みの石垣など独特の景観が広がる。
古い町並みや空き家も残っており、その佇まいからは伝統的な生活の面影が漂う。
これらの多くは江戸時代に建築されたもので、塩飽大工として活躍した島民の技術を物語っている。
拠点の高松駅からJR予讃線などで多度津駅まで行き、徒歩約20分の多度津港からフェリーに乗れば、2時間前後で会場の高見島港までアクセスできる。
エリア内への車両の乗り入れは不可、公共交通機関もなく、移動手段は徒歩のみ。
島の路地は狭く急な坂も多いため、歩きやすい靴での来場がお勧め。
瀬戸内国際芸術祭2025は、浜・浦地区で展示が行われる。ここからは、高見島の主な作品の概要を紹介していく。

独特の景観を形づくる階段上に建つ古民家
独特の景観を形づくる階段上に建つ古民家

EAT&ART TARO「エイリアンフード 島の外来種」

食をテーマにしているEAT&ART TARO氏は、芸術祭などで過疎地に多くの人が集まり食事をする状況に違和感を覚えてきた。
本展示では高見島港から徒歩5分ほどの場所に飲食スペースを設け、高見島で採れた外来植物を使ったお茶やカレーを提供。
来場者に味わってもらうことで島の現実を体感し、食料バランスについて考える機会を作っている。
また、島の植物分布や採集量、人口、食事事情のリサーチ結果も展示される。

EAT&ART TARO「エイリアンフード 島の外来種」(作品イメージ)
EAT&ART TARO「エイリアンフード 島の外来種」(作品イメージ)
開館時間
10:10 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
共通チケット2,000円(ta02、ta05、ta07、ta10、ta13、ta22、ta23の作品をあわせた料金)

村田のぞみ「まなうらの景色2022」

極細のステンレス線を無数につなぎ合わせて、荒波の海と静かな海のコントラストを海辺沿いの古民家で表現したインスタレーション。
天井から床へと雲のような広がりを持つ繊細な線描、立体の陰影が光の反射を受けて刻々と表情を変える光景が鑑賞者を包み込む。
「まなうら」はまぶたの裏(心の中に深く刻み込まれた光景)を意味し、この家が見た過去の景色、そして未来を想像する空間になってほしいという村田氏の願いが込められている。

村田のぞみ「まなうらの景色2022」
Photo:Mitsushige Kida 村田のぞみ「まなうらの景色2022」
開館時間
10:10 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
共通チケット2,000円(ta02、ta05、ta07、ta10、ta13、ta22、ta23の作品をあわせた料金)

藤野裕美子「過日の同居」

2019年の展示以降、高見島で廃村となった板持地区への取材を繰り返しながら、継続的に制作をしている作品。
集落の路地にある一軒家の空間全体を舞台に展開される。
素材には岩絵具・麻紙といった日本画材が用いられ、伝統的な技法で島の情景や生活の断片を異なる時間軸で繊細に表現。
過去と今を織り交ぜることで、地域の物語を空間的に伝える。

藤野裕美子「過日の同居」
Photo:Mitsushige Kida 藤野裕美子「過日の同居」
開館時間
10:10 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
共通チケット2,000円(ta02、ta05、ta07、ta10、ta13、ta22、ta23の作品をあわせた料金)

小枝繁昭「はなのこえ・こころのいろ2025/除虫菊の家」

高見島で出会った花々を主題に、写真・襖絵・陶製のオブジェとして表現した多層的かつ色彩豊かなインスタレーション。
写真とペインティングを組み合わせた小枝氏の独自手法によって、鑑賞者に花を見る瞬間の眼差しについて問いかける。
2025年の展示は高見島港から徒歩10分ほどの民家を舞台に3部構成の新展開で、高見島の豊かな自然や島の歴史、日常の風景を空間全体に浮かび上がらせる。

小枝繁昭「はなのこえ・こころのいろ2025/除虫菊の家」(作品イメージ)
小枝繁昭「はなのこえ・こころのいろ2025/除虫菊の家」(作品イメージ)
開館時間
10:10 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
共通チケット2,000円(ta02、ta05、ta07、ta10、ta13、ta22、ta23の作品をあわせた料金)

中島伽耶子「時のふる家」

高見島港のすぐそばにある古民家を舞台に、時の流れに翻弄される島の姿を表現した作品。
壁を貫通する複数のアクリル板によって自然光が室内に導かれ、暗闇に光の線が浮かび上がる静寂な空間をつくり出している。
電気を用いず、太陽の動きや天候という偶発性を取り込むこの手法は、光の移ろい・時間の経過とともに表情を変えていくのが特徴だ。
古い家と新しい光の交錯は、鑑賞者に過去・現在・未来が重なり合うような感覚を与える。

中島伽耶子「時のふる家」
Photo:Yasushi Ichikawa 中島伽耶子「時のふる家」
開館時間
10:10 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
共通チケット2,000円(ta02、ta05、ta07、ta10、ta13、ta22、ta23の作品をあわせた料金)

離島ならではの自然景観が広がる「粟島」

香川県三豊市にある「粟島(あわしま)」は、荘内半島の沖合に浮かぶ小さな島。
潮の流れで3つの島がスクリュー状に砂州でつながった独特の地形を持つ。
穏やかな時間が流れる非日常の離島空間が魅力で、きらめく星空や白砂の砂浜の夕日が美しい。
5月〜10月シーズンを迎える「海ほたる」も見どころ。
また、江戸時代に北前船の寄港地として栄えたほか、1897年に日本初の地方海員養成学校設立など多くの船乗りを輩出してきた。
瀬戸内国際芸術祭2025では、島全体が一丸となり祭典を盛り上げる。
会期中は粟島の見どころ・食事スポットなどをまとめたマップ(あわっぷ)が配布され、島の風景や暮らしに触れながら楽しめるのも特徴だ。
拠点の高松駅からは、以下のルートで行くと、2時間前後でアクセスできる。

  1. 予讃線で詫間駅
  2. 詫間駅からバスで須田港
  3. 須田港から旅客船で粟島港

島の中心部に展示が集まっているのでエリア内は徒歩で巡れる。粟島の作品の一部を紹介しよう。

独特な地形を持つ粟島
独特な地形を持つ粟島

グエン・チン・ティ「Awashima, Fall」

粟島の中心部にある、およそ築100年超の旧郵便局を小劇場として再生した作品。
グエン・チン・ティ氏は島に暮らした元船員たちの交信手段や生活音に着想を得て、かつての通信文化・島の記憶を空間全体に呼び起こしている。
島民・来訪者から寄せられたメッセージをモールス信号に変換し、それを自動演奏することで楽器が郵便局員の役割を担い、交信の痕跡を芸術的に表現。
音を通じて時を越えた人と人とのつながりを構築する。

グエン・チン・ティ「Awashima, Fall」
グエン・チン・ティ「Awashima, Fall」
開館時間
10:00 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
500円

トゥアン・マミ「《ボーダレス》ベトナム移民の庭(No.11)」

旧粟島小学校の「灯台の庭」、粟島漁港付近の「移民の庭の神殿」で展開されるインスタレーション。
トゥアン・マミ氏は、島の歴史や住民の物語、三豊市で暮らすベトナム移民についてフィールドワークを行い、その声と日常をもとにつくり上げた。
地域の色を生かしながら、多様なバックグラウンドを持つ人たちの出会い・交流を促す。

トゥアン・マミ「《ボーダレス》ベトナム移民の庭(No.11)」
Photo:Le Hoang Nam トゥアン・マミ「《ボーダレス》ベトナム移民の庭(No.11)」
開館時間
10:00 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
無料

青野文昭「帰り着く家-瀬戸内粟島古家滞留積層脳海図像・2025」

粟島中心部の空き家を会場に展開される屋内インスタレーション。
「なおす」という営みへの関心を出発点に、島で拾い集めた破損物・廃棄物、日用品を用いて島の記憶をたどる。
粟島の風景や文化を重層的に映し出す本作は、訪れる人に島の歴史的な厚みを静かに伝える。
特に重要であり続けた「船」の断片を使うことで、粟島と向きあっているのも特徴だ。

青野文昭「帰り着く家-瀬戸内粟島古家滞留積層脳海図像・2025」(作品イメージ)
青野文昭「帰り着く家-瀬戸内粟島古家滞留積層脳海図像・2025」(作品イメージ)
開館時間
10:00 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
無料

柏木崇吾「粟島の記憶を染める」

粟島の自然環境や漂流物、歴史と生活の記憶を織り直し、島を「生きたキャンバス」として再解釈した作品。
中心部の集落内に設けられた会場で、3つの主題―粟島の痕跡としての素材、時間の流れの可視化、島と人々の関係性の結び直し―を軸に展開される。
また、柏木氏がワークショップを開催し、島民・来訪者とともに制作ピースを作品に取り込むという、参加型のプロセスも重要な要素となっている。

柏木崇吾「粟島の記憶を染める」(作品イメージ)
柏木崇吾「粟島の記憶を染める」(作品イメージ)
開館時間
10:00 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
共通チケット(aw01-1,14,15)1,000円

日比野克彦「瀬戸内海底探査船美術館プロジェクト ソコソコ想像所」

粟島の中心部にある「粟島芸術家村」を拠点に展開されるアートプロジェクト。
ソコソコ想像所では、海底から引き上げられた遺物や自然物、漂着物を展示している。
それらが語りかける物語を通じて鑑賞者は、海底の世界・瀬戸内海の歴史に思いを馳せる。

日比野克彦「瀬戸内海底探査船美術館プロジェクト ソコソコ想像所」
Photo:Kimito Takahashi 日比野克彦「瀬戸内海底探査船美術館プロジェクト ソコソコ想像所」
開館時間
10:00 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
共通チケット(aw01-1,14,15)1,000円

タオリグ・サリナ「航海する記憶の船 ―ノマドギャラリー in 粟島」

粟島中心部に設置された、粟島の元船乗りたちの思い出を追体験できるインスタレーション。
タオリグ・サリナ氏は、中国内モンゴル自治区出身のアーティストで、国家・民族などを超えた「感情交流」をテーマに、空間や体験に重きを置く作品を制作している。
大海原を航海した船乗りと、大草原で暮らす遊牧民。ともに移動しながら暮らしを紡いできたその姿が重なり合い、幻想的な空間を生み出す。

タオリグ・サリナ「航海する記憶の船 ―ノマドギャラリー in 粟島」
タオリグ・サリナ「航海する記憶の船 ―ノマドギャラリー in 粟島」
開館時間
10:00 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
共通チケット(aw01-1,14,15)1,000円

古くから漁業を生業にしてきた「伊吹島」

香川県観音寺市にある「伊吹島」は、観音寺港の西約10km、燧灘(ひうちなだ)に浮かぶ県内最西端の小さな島。
安山岩・花崗岩などからなる台状の地形で、周囲は急傾斜の崖が海岸沿いにそびえ、台地には平地が開けている。
古くより漁業と海運の文化が根付いており、特にパッチ網漁によるいりこ(煮干し)漁が盛んだ。
名産品の「伊吹いりこ」は、讃岐うどん出汁として全国におなじみのブランド。
また、八十八カ所めぐり(島四国めぐり)や、平安時代の京言葉のアクセントを日本で唯一残すなど、伝統的な風習が受け継がれているのも特徴。
拠点の高松駅からは、以下のルートで行くと、2時間〜3時間でアクセスできる。

  1. JR線特急で観音寺駅
  2. 観音寺駅からバスで観音寺港
  3. 観音寺港から高速船で伊吹島真浦港

エリア内の移動は徒歩が基本、急な坂道が多いので歩きやすい靴での来場がお勧め。
瀬戸内国際芸術祭2025では、島の中心部で7作品の展示が行われる。その一部の作品を紹介しよう。

漁業と海運の文化が根付く伊吹島
漁業と海運の文化が根付く伊吹島

ジョンペット・クスウィダナント「反響」

伊吹島の中心部にある、廃校を舞台に展開されるインスタレーション。
実際に使われていた子供たちの衣装を再利用し、当時の活気を彷彿させるマーチングバンドを再現。
まるで幽霊のマーチングバンドがセッションしているかのような空間をつくり出した。
作品を通じてかつての学校の賑わいを呼び起こし、島に残る高齢者の記憶と減少する若者たちがつながることを目指す。

ジョンペット・クスウィダナント「反響」
Photo:Jompet Kuswidananto ジョンペット・クスウィダナント「反響」
開館時間
9:00 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
500円

岡村桂三郎「西冥の魚」

伊吹島での調査から着想を得た絵画インスタレーション。
屏風状の大判パネルに巨大な魚、無数の小魚群が波間にうねるように描かれている。
厚く塗られた下地に刻線を入れ、ぶちまけた岩絵の具の粒が鱗模様を生み出す独自の手法を用いた、生命力の鮮やかな表現も見どころ。
中心部に点在する「旧伊吹分団屯所」・「伊吹島民俗資料館」・「旧伊吹小学校」で展示される。

岡村桂三郎「西冥の魚」
Photo:Mareo Suemasa 岡村桂三郎「西冥の魚」
開館時間
9:00 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
500円

オラフ・ホルツアプフェル「野生の獲物」

伊吹島の中心部にある、古民家を会場に展開されるインスタレーション。
ドイツ童話「漁師とその妻」をモチーフに、染め・編み・大工といった日本とドイツ双方の職人技を取り込んだ舞台装置的な構成が特徴だ。
島の伝統的な織物技術や木工技術と西洋の技術を組み合わせて、生命力あふれる空間をつくり出している。

オラフ・ホルツアプフェル「野生の獲物」(作品イメージ)
オラフ・ホルツアプフェル「野生の獲物」(作品イメージ)
開館時間
9:00 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
500円

ブンポール・ポーティザン「最後の避難所」

伊吹島の中心集落に据えられた屋外彫刻作品。
竹と金属を組み合わせて神輿のようなフォルムを作り上げたオブジェは、ブンポール・ポーティザン氏が新世代の島民に着想を得たもの。
竹は団結と協力の精神を象徴し、金属は「家」や漁師の道具といった島の生活性を象徴的に表現している。
金属の網目は堅固でありながらも透けて見え、存在しながら忘れ去られつつある文化の脆さや儚さ、継承の重要性を鑑賞者に示唆する。

ブンポール・ポーティザン「最後の避難所」(作品イメージ)
ブンポール・ポーティザン「最後の避難所」(作品イメージ)
開館時間
屋外展示作品
休業日
会期中無休
料金
無料

アレクサンドラ・コヴァレヴァ&佐藤敬/KASA「ものがみる夢」

伊吹島中心部の屋内に展示されるインスタレーション。
島民の生活を支えてきた日用品や道具を集め、それらを素材として島の風景「海の庭」を表現。
漁業が盛んな伊吹島の漁網を幾層にも重ねて「海」に見立てることで、窓の外に広がる瀬戸内海と視覚的につなげている。
網のほつれ、縫い跡が波のように陽光を受けて輝く様も見どころ。

アレクサンドラ・コヴァレヴァ&佐藤敬/KASA「ものがみる夢」
アレクサンドラ・コヴァレヴァ&佐藤敬/KASA「ものがみる夢」
開館時間
10:00 〜 16:30
休業日
10月23日・10月30日
料金
500円

秋会期ならではの体験を満喫できる2泊3日のモデルコース

瀬戸内国際芸術祭は会場、展示数が多いため、どのように計画を立てればいいのか迷うだろう。
そんな方はこれから紹介していく、モデルコースを参考にするのがお勧め。
秋会期のみとなるエリアを中心に巡る2泊3日の旅程だが、スケジュールに余裕がない場合も、内容を軸に考えれば自身に合ったプランが作りやすい。

1泊目

初日は岡山県の児島観光港から、高速船に乗って本島港へ出発。
本島のアート作品を楽しんだ後、宇多津駅に向かい宇多津エリアを巡るプランだ。
満足のいくまで鑑賞したら、好みに合わせて宇多津・丸亀・高松周辺のいずれかにあるホテルに泊まり翌日に備えよう。

  1. 児島観光港から高速船で出発(9時30分発)
  2. 本島の作品を鑑賞
  3. 本島港からフェリーで丸亀港へ
  4. 丸亀港から徒歩約10分で丸亀駅へ
  5. 丸亀駅から電車で約5分の宇多津駅へ
  6. 宇多津エリアの古街/臨海部の作品を鑑賞
  7. 宇多津・丸亀・高松周辺で宿泊

2泊目

2日目は粟島と高見島に展示されているアート作品を巡り、最後は前日と同様に宇多津・丸亀・高松周辺のいずれかに戻るプラン。
荷物などを考えると宿泊先は同じ方が便利だが、よりアクティブに楽しむなら、異なる場所を選ぶのもお勧め。
また、記載した時刻のフェリー・高速船に乗り遅れないよう、時間に余裕を持って行動しよう。

  1. 宇多津駅・丸亀駅・高松駅のいずれかから電車で出発
  2. 詫間駅からシャトルバスで約15分の須田港へ
  3. 須田港から高速船で出発(9時10分発)
  4. 粟島の作品を鑑賞し、13時30分発の高速船で出発
  5. 高見島の作品を鑑賞し、17時35分発のフェリーで出発
  6. 多度津港からシャトルバスで約10分の多度津駅へ
  7. 多度津駅から宿泊先の宇多津・丸亀・高松周辺へ

3泊目

最終日は昼前から14時過ぎまで伊吹島の作品を鑑賞して、秋会期会場となる5エリアを巡る3日間の旅を締めくくる。
展示や地域の文化、様々な人たちとの交流を振り返りながら、帰路の高松駅もしくは高松空港に向かうと良いだろう。

  1. 宇多津駅・丸亀駅・高松駅のいずれかから電車で出発
  2. 観音寺駅から徒歩約5分の観音寺港へ
  3. 観音寺港から高速船で出発(10時50分発)
  4. 伊吹島の作品を鑑賞し、15時発の高速船で出発
  5. 観音寺港からシャトルバスと徒歩で約10分の 観音寺駅へ
  6. 高松駅もしくは高松空港から帰路へ

瀬戸内国際芸術祭の秋会期に関するよくある質問

Q

瀬戸内国際芸術祭の秋会期はいつからいつまで?

A

2025年10月3日(金)〜2025年11月9日(日)の38日間にわたって開催されます。

Q

瀬戸内国際芸術祭の秋会期で会場となるエリアは?

A

全会期の9会場(直島・高松港エリアなど)に、秋会期のみの本島・高見島・粟島・伊吹島・宇多津エリアの5会場を加えた、全14エリアです。

まとめ

瀬戸内国際芸術祭2025の秋会期の基本情報、会場・展示作品の概要を中心に知っておくと役に立つ情報を紹介してきた。
秋会期では、屋内展示の繊細な演出から屋外彫刻、地元食材を使った参加型プロジェクトまで幅広く、島の暮らしや歴史に根ざした体験ができる。
美しい瀬戸内海の景観や自然を楽しみながら、島々を巡る移動、島民との交流も瀬戸内国際芸術祭の魅力のひとつ。
この機会に日本を代表する現代アートの祭典に足を運んでみてはいかがだろうか。
全会期エリア・チケット・グッズなど、瀬戸内国際芸術祭の全体については以下の記事を読んでほしい。