【回転寿司の偏愛ガイドがおすすめ】知るほどに深い回転寿司の世界&おすすめご当地寿司9選

【回転寿司の偏愛ガイドがおすすめ】知るほどに深い回転寿司の世界&おすすめご当地寿司9選

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筆者 : GOOD LUCK TRIP
監修 : 米川 伸生

約70年前に誕生し、今では日本を代表する食文化として知られる回転寿司。レーンの上を流れる多彩な寿司を眺めながら、あれこれ迷いながら好きなものを自分で取る体験は、ワクワク感に満ちている。今回は、幼少期から回転寿司を偏愛し、これまで延べ5,000店以上を訪ねてきた回転寿司評論家の米川伸生さんに、知っているようで知らない回転寿司の世界へ誘っていただこう。

回転寿司は、こうして誕生した

回転寿司が誕生したのは、昭和33年(1958)。東京タワー完成、皇太子妃決定、1万円札発行などの出来事があった年です。大阪で立ち食い寿司店を営んでいた白石義明氏がビール工場を見学し、ベルトコンベアで運ばれるビールの製造工程からヒントを得たといわれています。

当時、白石氏のお店は寿司四貫を20円という低価格で提供し、大繁盛していました。しかし、職人の数が少なかったので多くの客から殺到する注文を捌くのに苦労していたそうです。そんな時に工場見学でベルトコンベアを見て、「ベルトコンベアに寿司を乗せて回せば、職人が少なくても多くのお客さんに対応できる。しかも、好きなネタを自分で選んで食べてもらえる」と思いついたわけですね。そこから、試行錯誤を重ねながら回転寿司用のベルトコンベアを開発。約10年の歳月をかけ現在の主流となっているスタイル「コンベア旋回式食事台」を完成させ、特許を取得しました。そして、1958年4月、東大阪市に「廻る元禄寿司」1号店をオープンしたのです。
その後、昭和45年(1970)に開催された大阪万博に出展。回転寿司が全国的に知れわたり、普及していくようになりました。

出会いは4歳。回転寿司偏愛歴

もともと寿司が大好きで、祖母の家へ行った時に出前を取ってくれる、桶に入った寿司を食べるのが楽しみでした。そんな私が回転寿司の世界にハマっていくきっかけとなったのも、4歳の時に訪れた大阪万博。万博会場に出展している元禄寿司を訪ね、回転寿司と初の出会いを果たして衝撃を受けたのです。「お寿司が回ってる!」って(笑)。
翌年の5歳の頃には、祖母の家がある東京池袋にも元禄寿司ができて、よく連れて行ってもらいました。それまで外食といえば、デパートの大食堂でお子様ランチを食べて、ご飯に立てられた国旗を集めるのが定番。そんな子どもに、「回るお寿司」のお店に行く楽しみが加わったのです。しかも、寿司といえば出前が当たり前で決まったネタしか食べられなかったんですが、回転寿司なら好きなネタを好きなだけ食べられる。これはもう、お子様ランチの国旗を圧倒的に上回るような楽しみでしたね。

それからの関心は回転寿司にロックオン。小学5年の時に引っ越した五反田にも元禄寿司があって、回転寿司は日常の身近な存在になっていきました。大学時代に実家を出て一人暮らしを始めてから10回近く引っ越しましたが、物件選びの基準は”近所に良い回転寿司店があるかどうか”でしたし。また、学生の頃は年に2回は車で全国を旅して、ご当地の回転寿司店を訪ねていましたね。楽しかったです、ほんとに(笑)。

国内外で延べ5,000店以上を訪ねてきた回転寿司評論家の米川伸生さん
国内外で延べ5,000店以上を訪ねてきた回転寿司評論家の米川伸生さん

回転寿司店は食のアミューズメントパークだ!

回転寿司店には、さまざまな魅力があります。まずは、提供するものが寿司であることです。寿司は、日本人の好きな食べ物として不動のトップであり続ける人気料理。子どもから高齢者まで、幅広い層から愛されています。さらに、回転寿司には生魚が苦手な人でも楽しめるメニューの品揃えが豊富。食べる人を選ばない、オールラウンダーなのです。

また、手軽さや気軽さ。誕生から70年近い歴史を重ねる中で、時代の波や社会の変化に対応しながら、回転寿司は進化を遂げてきました。「安かろう悪かろう」の時代もありましたが、それも今は昔。手軽な値段なのに本格的、気軽に入れるのに居心地が良いといった、手軽さや気軽さとプラスアルファの価値も回転寿司の魅力のひとつです。
そして、ぐるぐる回るレーンに載って次から次へ寿司が流れてくる、ワクワク感に満ちたエンターテインメント性。テーマパークでアトラクションを選ぶのと同じように、回っている寿司を眺めてどれから食べようかと迷える時間もたまらなく楽しい。これこそ、他の外食店にはない回転寿司店ならではの魅力でしょう。
大好きな寿司を、手軽で気軽に、ワクワクしながら味わって楽しむ。まさに回転寿司店はアミューズメントパークなのです。

レーンに乗って寿司が流れてくる様子に、ワクワク感が高まる
レーンに乗って寿司が流れてくる様子に、ワクワク感が高まる

「回転寿司はどこも同じ」なんかじゃない!

「回転寿司は、全国どこで食べてもさして変わらないのではないか」と思われている方が残念ながら多いと感じています。大手チェーンを想像すればそうかもしれません。しかし、全国にはその時期にその場所に行かなければ食べることができない寿司を提供するお店がどこにでもあります。

それが「ご当地回転寿司」です。そこではナメラ、アラカブ、ソイ、ガスエビ、どんちっちなど見たことも聞いたこともないような魚の寿司が提供されています。たとえば、秋の北海道では鵡川産のシシャモが、冬の北陸では1年でたった7週間しか提供されない香箱ガニが、夏の北陸では活ホヤが、といったように地元でしか味わえない寿司が期間限定で味わえるのです。

北海道では、生ホッケの握りが食べられる
北海道では、生ホッケの握りが食べられる

ご当地回転寿司を、ぜひ旅の目的に!

ご当地回転寿司の魅力は、何といっても「その時期にその場所でしか食べられない」という食体験。旅の目的や楽しみは人それぞれさまざまだとは思いますが、食が占めるウエイトは大きいですよね。だからこそ、ご当地回転寿司を旅の目的にしていただきたい。「旅先での貴重な食事の機会を回転寿司に?」という感覚があるかもしれませんが、わざわざ目的にする価値は大いにあります。先ほどもお話したように、現代のご当地回転寿司は、ただ単に安く寿司が食べられるファストフード店のような存在ではないのです。

もちろん、寿司だけでなく一品料理も絶品揃い。普段の生活ではまずお目にかかれない魚の刺身や、地元食材を盛り込んだ創作料理など、"ココでしかできない”食体験が楽しめます。地酒にこだわるお店も多いので、酒と食のペアリングでご当地ならではの食をしみじみ味わうのもおすすめです。

地酒と合わせることで、ご当地食材の味がさらに引き立つ
地酒と合わせることで、ご当地食材の味がさらに引き立つ

わざわざ訪ねる価値アリ!ご当地回転寿司店9選

好きな寿司ダネを聞かれた時、いつも私は「地域や季節によって食べたい寿司は変わります。旬の魚や地元の食材を、ご当地ならではの調理法で仕上げた寿司が一番の楽しみです」と答えます。ここでは、私の実体験をもとに、日本各地のご当地回転寿司の中からエリアごとにおすすめを厳選しました。回転寿司はどこも同じではないことを、実感していただけると幸いです。

1.【北海道】函館まるかつ水産 本店(北海道函館市)

函館名産の活イカを存分に味わえる名店

北海道は、「東の回転寿司の横綱」と言われるほど素晴らしい回転寿司店が多い地域ですが、函館にあるこちらのお店では全国で唯一、一年中「活イカ」の寿司が食べられるという貴重な店です。
店舗内には巨大なイカ専用の生簀があり、オーダーが入るとそこから泳いでいるイカを取り出し、捌いて提供するのです。捌きたてでないと決して見ることができない透明な身質は芸術っそのもの。美味しいイカの食感といえば、プッツリと噛み切れるところにありますが、こちらはじんわりと歯が身に食い込んでいくという感じでイカの概念が根底から覆されます。
イカの名産地ならではの回転寿司店ではないでしょうか。

活イカをはじめ贅沢なネタが並ぶ
活イカをはじめ贅沢なネタが並ぶ

2.【東北】すし清次郎 フェザン店(岩手県盛岡市)

東北の食材を贅沢に使った、ご当地寿司

『東北の王者』といえるのが「すし清次郎」です。岩手県盛岡市に本社を置く水産会社の経営だけに良質な魚が味わえるのはもちろんですが、東北の食材を使ったご当地寿司がなんといっても素晴らしい。ブランドとうもろこしの嶽きみを使用した「焼きもろこしバター醤油」や「前沢牛炙り握り」、「天然活ホヤ握り」などなど、創作系を含めた珍しい寿司の数々に心踊らされます。2025年5月の「第10回全日本回転寿司MVP選手権」では、フェザン店の店長が優勝するなど、職人さんの素晴らしさにも注目ください。

※「すし清次郎 フェザン店」は、現在はタッチパネル式の注文。

産地ならではの新鮮素材だからこその逸品、焼きもろこしバター醤油
産地ならではの新鮮素材だからこその逸品、焼きもろこしバター醤油

3.【関東】群馬を握る、まぐろ問屋 いちもん 伊勢崎本店(群馬県伊勢崎市)

寿司の世界観が変わる、地元食材の創作系が多彩

ここ数年で一番感心した店がこちら。「海なし県の群馬で寿司?」と疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、それだからできることの創意工夫にはじめて「ご当地寿司のなんたるか」を教わった気がしています。
単に地元食材を使用するだけではなく、その食材を提供している企業と二人三脚で開発していいるという『生産者の顔が見える寿司』は、地元名産の黒豆納豆やたくわん、うずら、ブランド牛、ブランド鱒など多岐に渡り、「ご当地寿司」の真骨頂といっても過言ではありません。
それらすべてが一皿になった「群馬を握る絆盛り」はまさに象徴的な寿司と言えるでしょう。

群馬を握る絆盛り
群馬を握る絆盛り

5.【北陸】金沢まいもん寿司 本店(石川県金沢市)

エンタメ性では日本一。五感で楽しむ回転寿司

実は愛知県は鮮魚店と水産会社が経営する回転寿司店が全国で最も多く、ハイレベルなお店が多い全国でも指折りの回転寿司激戦区。そんな中で一際輝くのがエンターテイメント回転寿司の「魚魚丸」です。こちらのコンセプトは『五感で楽しむ回転寿司』。安くて美味しいは当たり前、さらに見て、触って、聞いて楽しむ回転寿司を実践しているのです。中でも全店で毎日複数回開催されている「藁焼きショー」では定番の鰹だけではなく、旬の様々な食材が味わえるとあって人気です。
参加型のイベントが盛りだくさん、まさに「回転寿司のアミューズメントパーク」なのです。

臨場感と迫力満点の名物イベント「藁焼きショー」
臨場感と迫力満点の名物イベント「藁焼きショー」

5.【北陸】金沢まいもん寿司 本店(石川県金沢市)

「ご当地回転寿司」の代名詞。金沢に「まいもん」あり!

全国の主要都市各地に展開しており、ご当地回転寿司を牽引しているのが「金沢まいもん寿司」。
ある意味、どこでも北陸の味が味わえる身近な店となってはいますが、金沢に来なければ味わえない寿司があまりにも強烈。金沢港が近いことから30分前に水揚げされた魚がなんとレーンに回ってくるのです。鮮度抜群の寿司、中でも甲殻類は東京や大阪のまいもん寿司で食べるものとは別物とも思える味わいです。
回転寿司への思い、技術、サービスなどすべてにおいて業界トップレベル。
「金沢に訪れずして回転寿司は語れない」。そう思わせてくれる名店です。

旬のおすすめが満載
旬のおすすめが満載

6.【北陸】氷見回転寿司 粋鮨 高岡店(富山県高岡市)

氷見漁港から朝獲れ鮮魚を直送。その数、常時10種超え

どうも金沢ばかりが注目される北陸ですが、「天然の生簀」といわれる富山湾を擁した富山も勝るとも劣らない、回転寿司の熱い県です。中でも「粋鮨」は氷見港より毎日10種類以上の鮮魚を直送しており、まるごと富山が味わえる燻銀の回転寿司店です。
「ご当地回転寿司」と朝どれの鮮魚は切っても切れない関係ですが、毎日これだけの数の鮮魚を仕入れている店は全国でも稀です。氷見の朝どれ鮮魚が満載の「氷見づくし盛り」は毎日でも食べたくなる一品です。

氷見の朝獲れ旬魚が中心に自慢のネタを揃えた10貫盛り
氷見の朝獲れ旬魚が中心に自慢のネタを揃えた10貫盛り

7.【関西】CHOJIRO 法善寺店 Hozenji Flagship Store(大阪府大阪市)

美しさも味わいたい、旬のメニューが天下一品!

回転寿司発祥の地である大阪にもとびきりの一店があります。大阪ミナミの風情ある路地、法善寺横丁にある「CHOJIRO」は、高級感あふれる店内で極上の寿司が味わえる店です。
回転寿司では2〜3ヶ月ごとに替わる旬のメニューに各社とも力を入れていますが、このメニューの完成度がとにかく素晴らしい。味はもちろん、見た目の美しさも高級和食店レベル。 回転寿司の新たな世界が堪能できることでしょう。

見た目にも美味しい旬メニュー。炙りキダイ
見た目にも美味しい旬メニュー。炙りキダイ

8.【中四国】すし遊館あさひ ゆめモール西条店(広島県東広島市)

一年を通して生本マグロが食べられる貴重な一軒

西日本で最も回転寿司のレベルが高い広島県。ここに画期的な取り組みをしている店があります。『中四国の雄』といわれる「すし遊館」の新業態、「すし遊館あさひ」です。
こちらの魅力は、何といっても生の本マグロ。回転寿司店で扱われていること自体が珍しいうえに、一年を通じて常時メニューに並んでいるのは驚きです。そしてもうひとつ。なんと同じ店内に本格カウンターの寿司店が併設されているのです。しかも価格は超リーズナブル!本格寿司店デビューが気軽にできるだけでなく、気分で回転寿司かカウンター寿司かを選べるのというのもうれしく、近所に是非とも欲しいお店の一つです。

まぐろファンなら見逃せない生本まぐろをはじめバラエティ豊富なネタが並ぶ
まぐろファンなら見逃せない生本まぐろをはじめバラエティ豊富なネタが並ぶ

9.【九州・沖縄】廻る寿司 めっけもん ドルフィンポート店(鹿児島県鹿児島市)

味はもちろん地元と人を大切にする、「回転寿司店の原点」が楽しめる

回転寿司のエンターテイメント性の原点といえば、レーンに寿司があふれんばかりにまわっていること。タッチパネルオーダーが主流となったいま、その楽しさを満喫できる店は希少な存在となっていますが、「めっけもん」には原点の楽しさが脈々と受け継がれているのです。
レーンは流れる満載の寿司と共に名物となっているのが、「真心こめて人が握る寿司」というモットーを愚直なまでに貫く職人の皆さま。とにかく元気で明るく、サービビスも満点。全国からわざわざ職人さん目当てに会いにくる人もいるくらいです。回転寿司の醍醐味を味わいに是非、訪れてみてください。

元気で明るく、常に客席を気遣う職人さん
元気で明るく、常に客席を気遣う職人さん

まとめ

手軽&気軽に寿司の醍醐味を楽しめて、地域ならではの食を体験できるご当地回転寿司。米川さんが言うように、わざわざ訪ねてみる価値は大いにありそうだ。次の旅先では、食事のプランに回転寿司を加えてみるのも一興。これまで抱いていた回転寿司のイメージがガラリと変わるご馳走の数々が、きっと旅を豊かにしてくれるはずだ。

米川 伸生

監修

回転寿司評論家

米川 伸生

回転寿司店は食のアミューズメントパークだ!