日本人の美の精神宿る“金継ぎ”の魅力

日本人の美の精神宿る“金継ぎ”の魅力

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筆者 : 元村颯香
監修 : 鹿田喜造漆店

お気に入りだったコップが割れてしまったら。あなたはどうしますか?割れたまま大切にとっておきますか?捨ててしまいますか?…もし修繕して新たな命を宿すことができる、と言われたらどうでしょうか。
実は古くから日本人は、割れてしまった器などを「金継ぎ」という技法で修繕して再び使用していました。室町時代に「茶の湯」文化とともに、割れた器などを修繕する技法である「金継ぎ」が発展しました。割れてしまった跡を隠して修繕するのではなく、漆を使って傷を修繕したあとに金銀粉を撒いてあえて目立たせ、器にうまれた新たな景色として楽しむ、といった技法です。

これもやはり、室町時代に「茶の湯」文化において生まれた「侘び寂び」の精神から結実されています。
傷を受け入れ、不完全なものにも美を見出す、日本人の美学が生み出したものが、この「金継ぎ」です。
また、金継ぎを自分でするのは難しいという認識がありましたが、近年1日体験教室やキットの販売などがあり、気軽に楽しんで趣味にする人も増加しています。さらに、社会的背景やサステナブル志向の広まりによって再び評価されています。2019年にアメリカのサンダンス映画祭で「Kintsugi」という短編映画が上映されたことで、海外でも静かなブームとなっています。

今回の記事では金継ぎの歴史から工程、そして再び注目されるようになった背景をご紹介します。

金継ぎの概要

起源

“「漆」を使ってモノを修理する”という方法が始まったとされているのは、実は縄文時代のことです。漆を使って修繕された槍などの武器が縄文時代の地層から出土されているのです。この頃、中国大陸でも漆を使った接着の技術が確認されています。液状の漆では素手で触ってしまうとかぶれてしまう場合がありますが、完全に乾燥させると人体には安全性が非常に高く、極めて強力な硬化作用をもつ漆は、壊れたモノを修理するための接着剤として大昔から重宝されていたことがわかります。ただ、この時代はまだ漆を使って修理しているのみに留まっていて、その修繕の痕を金で装飾するということはしていませんでした。
金継ぎの起源は諸説ありますが、室町時代に始まったというものが有力な説です。金継ぎの誕生にあたって「茶の湯」の文化が大きく関わっていると考えられています。室町時代、第八代将軍である足利義政(あしかが・よしまさ)は京都東山の禅寺・銀閣寺に隠居をし、「茶の湯」や「いけばな」「水墨画」など、禅宗の影響で生まれた文化を推進し、それらの文化は広まっていきました。「茶の湯」文化が流行することで、茶道具も発展。茶碗は当初は中国や朝鮮から輸入することが多かったのですが、やがて京都をはじめ、各地で生産されるようになりました。それら「茶の湯」で使用されていた茶道具は大変高級品だったため、割れてしまったりヒビが入ってしまったりした茶器を漆でくっつけ、そこに金を施したのが金継ぎの始まりと考えられています。そうやって誕生した金継ぎという技法を、義政と同じく茶の湯文化に大きく貢献した、千利休が広めました。千利休は豪華絢爛よりも情緒を重んじ、「質素の中にも美を求め」、「廃れ、色あせていく物寂しいさまに感じる美しさ」である「侘び寂び」を求めていたため、その概念に沿った金継ぎという技法を高く評価したと考えられています。

金継ぎを施した器
金継ぎを施した器

金継ぎに宿る日本独自の美意識

金を蒔いて修繕したところを「景色」と呼びます。茶の湯文化が流行した時代には、金継ぎを施すことで生まれた傷の模様を、美しい自然の景色に見立てて楽しんでいたと考えられています。傷をなかったことにするのではなく、傷そのものもその壊れた器の歴史と捉えて、その傷さえ愛でました。不完全なものの中に美しさを見出していたのです。

金継ぎを施した皿
金継ぎを施した皿

金継ぎの工程

金継ぎは、陶器、磁器、ガラス、漆器などほとんどの素材で行うことができます。1つを仕上げるのには3ヶ月ほど時間がかかります。各工程の間に漆をじっくりと乾かす時間が必要だからです。この漆を乾かす工程を短くしてしまうと仕上がりに差ができてしまうので、しっかりと寝かすことが必要です。
金継ぎの工程はさまざまありますが、今回はその一例をご紹介します。

①漆を乾かす“ムロ”を作る

金継ぎをする器が余裕をもって入るくらいの蓋つきの木箱やダンボール、プラスチックケースを用意します。霧吹きなどを使って、用意した箱の内部を水で濡らします。漆は空気中の水分を取り込みながら硬化するため、箱の底には濡れた雑巾を敷いておきます。

②麦漆を作る

破片同士をくっつけるための麦漆を作ります。小麦粉を使いますが、この小麦粉のグルテンと漆の粘着力によって強力な接着力が生まれます。この麦漆は非常に強力でちょっとやそっとの力では剥がせないほどだそうです。
小麦粉を水で溶いて、小麦粉を溶いた水と同じ量の生漆(きうるし・3-4で詳しく説明)を加えてヘラでしっかりと練っていきます。練っていくと粘り気が出てくるので、十分に粘り気が出たら、天然素材100%の昔からある接着剤の完成です。麦漆は保管しておくと乾きが遅くなってしまうため、その都度作ります。

③破片をくっつける

・麦漆で欠けた陶器同士をくっつける

欠けてしまった断面にそれぞれヘラで麦漆をつけ、つなぎ合わせます。

麦漆接着
麦漆接着

はみ出したところはティッシュなどで拭き取ります。乾かしている間にずれてしまうこともあるので、マスキングテープなどで固定しておきます。最初の半日はそのまま置いておき、そのあとは①で作ったムロに入れて乾かしていきます。1ヶ月ほどムロの中で漆を硬化させていきます。

・欠けた部分がない場合は地と錆びで形を作る

欠けた部分がなくなってしまった場合もあります。その時は欠けた部分を、「錆び」を粘土のようにして形作る必要があります。
「錆び」は砥の粉に水を加え、よく練り、そこに生漆を加え、さらに練って耳たぶくらいの固さになるように作ります。砥の粉:水:生漆=10:5:5の分量で作ります。厚みをもたせたり強度を増大させたりするために砥の粉に地の粉を加えることもあります。
ほかに欠けた部分が大きい場合は木を使って形づくり、麦漆を使う要領でくっつけます。その後「錆び」で木が見えなくなるように覆います。
最初の半日はそのまま置いておき、そのあとは①で作ったムロに入れて乾かしていきます。1ヶ月ほどムロの中で漆を完全に硬化させていきます。

④はみだしているところをきれいにする

麦漆がはみ出しているところを空研ぎペーパーや耐水ペーパー、クリスタル砥石、小刀などで研ぎ落します。欠損部分を錆びで作った場合は、空研ぎペーパー、耐水ペーパーなどで器に合わせて形を整えます。ここで注意したいのは、ペーパーや砥石などで器を傷つけないこと。十分気を付けて作業していきます。

⑤研いだところをさらに目が細かいペーパーで研ぐ

④で研いだり継いだりしたところを、より目が細かい耐水ペーパーやクリスタル砥石でもう一度研ぎ、面を整えていきます。錆びで形づくったところはその部分全てを研いでおきます。こうすることで次の工程の漆で線を描いたり面を塗ったりする作業がしやすくなります。ここでも陶器を傷つけないように注意して行います。

⑥中塗りをする

中塗りは仕上がりを左右するとても大切な工程です。蒔絵筆を使って研いだところに黒呂色を塗ります。錆びで形づくったところは地塗り筆を使ってその部分全てを黒呂色で塗り込みます。すぐにムロに入れて1日ほど漆を乾かします。3回くらい丁寧に中塗りをするのがおススメです。

⑦中研ぎをする

⑥で黒呂色を塗ったところを耐水ペーパーやクリスタル砥石で研ぎ、面を整えます。

⑧地描きをする

研いだところに「絵漆」を薄く丁寧に塗ります。薄く描くことがとても重要で、厚いとこの後の金を蒔いたときに金が沈んでしまう原因になります。金が沈んでしまうと金の使用量も多くなってしまうことに。

地描き
地描き

⑨金粉を蒔く

丸粉(まるふん)を粉筒に入れて、絵漆で描いたところに指でトントンと金粉を蒔いていきます。
ムロに入れて2日から3日乾かします。

金蒔き
金蒔き

⑩余分な金粉を回収

⑨で金粉を蒔くと余分な所にたくさん金粉がつきます。漆が乾いてから毛棒で払うようにして金粉を回収します。

⑪蒔いた金粉を漆で固める

金を蒔いた所に上ずり漆を使って筆で薄く塗ります。塗ったところはティッシュを軽く押し当てて上ずり漆を吸い取ります。ティッシュに漆がつかなくなるまで行うのがキレイに仕上げるためのポイントです。ムロに入れて1日ほど乾かします。

⑫金を光らせる準備

砥の粉をヘラで潰す「砥の粉胴摺り」を行います。潰した砥の粉と種油を同じ量くらいでしっかり練ります。脱脂綿につけて、金を蒔いたところを力を入れずに軽いタッチで丁寧に磨いていきます。

⑬金磨き

最後の工程です。石粉(いしこ)を指につけ、指が熱くなるくらいしっかりと力を入れて、金継ぎした部分を磨きます。

金磨き
金磨き

金が光ってきたらできあがりです。もし金が光らない場合は⑫に戻って⑫と⑬を繰り返します。

仕上げは金粉や銀粉で行うことが一般的ですが、漆だけで仕上げる場合もあります。その際には漆に粉末の顔料を混ぜて作ったものを使います。顔料は朱色、あさぎ色、ピンク色などがあり、子ども用の器を金継ぎする場合などはこういった可愛い色を使うこともしばしばあります。

金・銀以外の色
金・銀以外の色

また、強度を保つために、コップの持ち手などに金継ぎをする場合は米粉と漆を混ぜたもので和紙を貼り付けて補強することもあり、金継ぎの工程には職人によってさまざまで、個性があります。

補強した持ち手
補強した持ち手

自宅で趣味として金継ぎをする方は漆を使わずにもっと簡易的に行うこともできます。

金継ぎに欠かせない漆

漆とは

漆は、ウルシ科ウルシ属であるウルシの木から採取される樹液を精製したもので、“天然素材の接着剤”です。他に類を見ない唯一無二の素材。樹液の分泌が活発になる6月頃から幹に傷を付けて採取しますが、1本の木から採れる量はわずか200ml。しかもウルシの樹液は植えてから採取するまで10年以上の年月がかかります。とても限られた、貴重な天然資源なのです。

漆の生産地

日本、中国、朝鮮半島、東南アジアなどに広く分布しています。その中でも日本でとれる漆は「ウルシオール」が多くて良質で、最高品質と言われています。しかし日本国内で使われている漆のほとんどは中国産で、日本産はわずか数%程度。(2~5%程度と言われています。)かつては漆を作るために日本各地でウルシの木が栽培されていたのですが、現在は岩手県二戸市浄法寺地区、茨城県栃木県などごく限られた地域のみで栽培されています。
特に岩手県二戸市浄法寺地区は国内生産量のうち約75%を占めています。江戸時代からこの地域では植林をしていたという記録が残っています。明治以降は伐採後に萌芽を管理し、ウルシ林の再生に力を入れて、日本産の漆を守っています。

漆を採取“漆掻き”

ウルシの樹液を採取できるのは樹齢10年以上のものです。漆の採取は「漆掻き」と呼ばれ、毎年6月頃から10月頃まで行われています。木の幹に掻き傷をつけて、出てきた樹液をヘラで掻き集めます。現在主流になっているのは「殺し掻き」という採取方法です。その場合、樹液を採取してしまった木は伐採されますが、切り株から芽吹いた新しい芽を10年以上かけて再び漆が採れるように育てます。

漆の種類

金継ぎの工程ではさまざまな漆が使われています。一部をご紹介します。

生漆 (きうるし)
ウルシの木から採取した樹液を濾し、ゴミなどを取り除いた漆のことです。水分を多く含んでいるため浸透性が高く早く硬化します。修繕のほぼ全ての工程で使われています。
透漆 (すきうるし)
生漆に攪拌作業である「なやし」と、水分を飛ばす作業の「くろめ」を行い、塗り用に精製した漆のことです。木地呂漆(きじろうるし)や素黒目(すぐろめ)、赤呂色(あかろいろ)ともいいます。金を蒔いたときに定着させる「粉固め(ふんがため)」などの工程で使用します。
黒呂色漆 (ろいろうるし)
透漆に鉄分を加えて酸化させた漆のことです。色は黒色で下地に水分が入るのを防ぐ役目を担っています。下塗りの際に使用します。
絵漆 (えうるし)
攪拌した生漆に弁柄(べんがら)という顔料を練り込んで作っています。金粉を蒔くときに下付けとして使います。

金継ぎに使われる金について

仕上げの工程で使われる重要な材料のひとつが「金粉」です。なかでもよく使用されるのは「丸粉」(まるふん)と「消し粉」(けしふん)、平極粉(ひらごくふん)です。光沢などの違いがあるため、それぞれの特徴を理解した上で、仕上がりをイメージして使い分けるといいです。ここではその特徴や使い分けや仕上がりの違いなどをご紹介します。

丸粉(まるふん)とは

金の薄延べ箔を焼いて粉末状にしたものを球状の粒子に整えたもので、高価なものです。顕微鏡で見ると粒子が丸く滑らかで均一な球体になっています。金継ぎで使用すると、1粒1粒が球体のため、粉に厚みがあり磨くのに手間がかかってしまう一方で、丈夫でもちが良く、光を反射しやすいので磨けば磨くほど艶が出て、金粉の中でもひときわ強い光沢になります。
仕上がりは金が目立ち、華やかで、高級感があります。ですので、高級な金継ぎ作品では、この丸粉が使用されていることが多く、純度の高い金を原料とした丸粉を使うと、色が変わりにくく長い期間その美しさが保たれます。美術品の修復などでもこの丸粉が使用されます。丸粉は大きさによって20種類くらいありますが、金継ぎで使う丸粉は最も細かいものかその次に細かいものを使います。

金丸粉
金丸粉

消し粉(けしふん)とは

金箔や金粉を細かくすりつぶしてできています。粒子の形状は、丸粉と違って不規則であるため、丸粉に比べると光の反射が抑えられるというのが大きな特徴のひとつです。仕上がりはマットな質感になります。名前の通り艶が「消える」ような仕上がりのため、落ち着いていたり自然になじんだりする印象になります。金継ぎをあまり目立たせない場合や器の雰囲気によってはこの消し粉を使用します。丸粉に比べると安価であるため、趣味で金継ぎをする方の間でも使用されています。
扱いやすい金粉のため、初心者にも向いている金粉のひとつです。

平極粉(ひらごくふん)とは

丸粉と消し粉の中間的な性質を持つのがこの平極粉です。金箔を焼成・粉砕してから作られる金粉の中でも微細な部類に入ります。粉の粒が非常に細かく、薄く平たい形をしているのが特徴です。そのため、仕上がりは光の反射が柔らかく、しっとりとした上品な光沢をもったものになります。丸粉ほど非常に強い光沢はありませんが、かといって消し粉よりは明るく金色が控えめに美しく映えます。滑らかでしっとりとした様子になるので、上品さが求められる作品の仕上げに使用します。とてもバランスのとれた金粉です。
粉の定着力が良いため、初心者にも扱いやすい金粉のひとつです。また、細かい線を描くことや繊細な模様を描くことに向いています。金継ぎだけでなく蒔絵などの伝統工芸でも重宝される金粉のひとつです。

ほかにも切粉や濃金粉や淡金粉などが、金継ぎに使用される金粉の種類です。仕上げの工程で使用する金粉をどれにするかで、仕上がりの印象が全く変わるため、金粉選びは非常に重要です。金継ぎをする器の風合いや使い方、理想の金の輝きに合わせて金粉の種類を選ぶことが金継ぎの美しさをさらに引き立てるポイントになります。

金継ぎを体験してみよう!

金継ぎ体験を行う鹿田喜造漆店

初心者でも金継ぎを体験できる場所が京都にあります。1867年創業の「鹿田喜造漆店」です。漆や漆工材料の卸や小売り販売を行っているこちらのお店は、「漆」についての知識と経験が豊富で、漆や金継ぎについてどんなことを伺っても教えていただけます!160年近く、代々受け継いできた技術を守り、磨きをかけて漆や金継ぎのすばらしさを後世に伝えていこうとしています。金継ぎの修理の依頼は年間200~300件もあるそうで、伝統的な技法を使って金継ぎをするため1つ数か月かけて大切に直していくそうです。これまでに、手を肩幅に広げたくらいの大きさの器や、30パーツ以上に割れてしまった器を金継ぎしたこともあるそうで、鹿田さんの手にかかると直せないものはないほどの、金継ぎのエキスパートです。
1日体験教室は5~6年ほど前から「体験をしたい!」という要望が増えたため、始めたそうです。割れたり欠けたりした大切な器を持参して、それを修繕することもできますが、もしそのような器がなければお店で用意してもらった器で金継ぎを体験することができます。1ヶ月で40~50人くらいは体験する人がいるという人気ぶりです。特に3月~4月は観光客も増えるため体験する人が多いそうです。

金継ぎの1日体験教室について

鹿田喜造漆店さんではコーヒーを飲みながら気軽に楽しく金継ぎを体験できます。所要時間は2時間~2時間半程度。もちろん直した器は持って帰って自分で使うことができます。まったく初めての方や細かい作業が苦手な方でも問題ありません!優しく丁寧に金継ぎのやり方について教えてもらえますよ。

体験の様子
体験の様子

①体験で使用する器を選ぶ

まずは体験で使う器を選びます。色や形から選ぶのもいいですが、割れ方や欠け方がその器によって違います。金継ぎで修繕をしたあと、どんな模様になるのかをイメージしながら選ぶのもいいと思います。器はアップグレードで京都府の代表的な伝統的工芸品である清水焼に変更することもできます。もちろん割れたり欠けたりした自身の器を持ってきて修繕もOKです。

②実際に金継ぎを体験

職人の方から割れとヒビの修繕技法を教えてもらいます。

  • 割れ…破片同士を専用の樹脂でつなぎ合わせます。その接着したところに漆を塗ります。
  • ヒビ…漆をとった筆でヒビをなぞっていきます。ヒビに沿って筆できれいになぞる必要があるため、集中力が必要なのだそうです。

割れもヒビも漆を塗ったあとは、真綿を使って器に真鍮粉か錫粉を蒔いていきます。ほかにも色漆といって、弁柄色や朱色、あさぎ色やピンク色を選択することもできます。さらにこちらもアップグレードで金粉や銀粉に変更することもできます。
持って帰って2~3週間置いて乾かしたらできあがり。

こちらの鹿田喜造漆店では金継ぎを体験するだけではありません。
作業の途中で、漆器でコーヒーをいただくことができます。コーヒーをいただきながら職人の方から漆の歴史や概要などについての座学を受けられます。職人の方から直接聞く漆の話は、漆専門店ならでは。写真付きのパネルを使って、わかりやすく説明してくれます。

1日体験教室の利用者は日本人半分、外国人観光客が半分といった割合だそうです。ツアーで来られる方は通訳をつけて来られるそう。個人の方は通訳士をつけてもらうことも可能で、簡単な英語とアプリでも対応が可能だということです。それぞれに合った方法でぜひ体験して、日本人の精神がよく表れた金継ぎに触れてみてください。

鹿田喜造漆店 店舗情報

日本語名称
鹿田喜造漆店
住所
〒600-8042 京都府京都市下京区麩屋町通仏光寺上る俵屋町290
電話
075-351-7106
FAX
075-351-3166
メール
info@shikataurushi.com
公式サイト
公式サイト

金継ぎをした器の扱い方

金継ぎをした器を取り扱う際にはいくつか注意点があります。
金継ぎをした部分が長く保たれるように注意してみてください。

①電子レンジでの使用をしない

金属製の器を入れたときと同様に金継ぎをした器も電子レンジに入れると火花が散ってしまいます。金継ぎをした部分が傷み、剥がれてしまう原因となるので避けましょう。

②食洗器を使用しない

水圧や熱風で金継ぎをした部分が剥がれやすくなります。

③金継ぎをした後はしっかりと乾かしてから使う

仕上がってからすぐに使い出すのはNGです。金継ぎをした後、2~3週間はしっかりと乾かしてから使いましょう。

社会的背景から再び評価された金継ぎ

被災した思い出の器に金継ぎを

金継ぎは古くからある技法ですが、近年再評価されています。そのきっかけとなったのが、2011年3月11日に起こった東日本大震災です。震源を三陸沖とする、国内観測史上最大のマグニチュード9.0の大地震で東北を中心に東日本各地で甚大な被害をもたらしました。大きな揺れや大津波、火災などによって、この地震が原因で全壊棟数は13万棟以上にものぼります。東日本大震災で大切だったり形見だったりした器が割れてしまった人が数多くいました。
そんなとき、金継ぎ師の元にはたくさんの修繕の依頼があったといいます。復興に終わりはないですが、思い出の詰まった器を直すことができる金継ぎが心の復興にも役立ち、再び注目を集めました。日本は地震が多い地域で、その後の熊本地震(2016年)や大阪府北部地震(2018年)、能登半島地震(2024年)でも被災した大切な器を金継ぎで直したという方は多くいらっしゃいました。

コロナ禍で金継ぎがブームに!

さらに、2019年に発生した新型コロナウイルスの拡大によるステイホーム期間では、家の中で新しい趣味として始められる金継ぎがメディアで紹介されると、若い世代を中心に人気を集めました。いわゆる“インスタ映え”する金継ぎはSNSで拡散され、日本だけではなく海外の方々も注目するようになったのです。元々西洋では一般的には割れてしまった器は縁起が悪いと考えられているため、日本人のこの金継ぎの技法が新鮮に映ったという背景もあるようです。

まとめ

たしかに、器が割れてしまったらついついそのまま捨ててしまいがちです。しかしながら、金継ぎという技法を知っているだけで「直す」という新しい選択肢が増えます。決して元通りそのままにはなりませんが、傷の修繕もその器の歴史ととらえ、愛するというのはとても日本人らしい精神です。日本で金継ぎの1日体験教室に参加すると、やり方を学ぶことができます。そのあとは日本独特の金継ぎの技法をぜひご家庭でも体験してみてください。最近では自宅で簡単に金継ぎができるキットも販売しています。この記事が、金継ぎを通して日本人の精神をお伝えするだけでなく、新しい趣味との出会いのきっかけになればと思います。

元村颯香

筆者

フリーアナウンサー

元村颯香

伝統文化や芸能、歴史を中心に発信