竹垣

竹垣

「間」の思想が息づく、光と風を感じる日本の伝統美。

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「竹垣」とは、高さ1〜2メートル程度の竹で作られた日本特有の垣根のこと。日本の庭園や建築文化に根付く「間(ま)」の思想が生かされているものだ。空間の余白や光・風の通り道を意識することで、単なる防護以上に景観や空間の調和に寄与。「竹垣」は庭や建物に安らぎと趣を与える、日本独自の景観要素となっている。「竹垣」は平安時代(794〜1185年)の文献に登場。その頃から庭園や建築の景観意識と結びついていることがうかがえる。

用途や美意識に応じたいくつかの種類がある「竹垣」。「建仁寺垣(けんにんじがき)」は寺院や格式ある庭園に用いられ、武士や貴族の落ち着いた美意識を反映する。「四ツ目垣(よつめがき)」は町家や茶庭で広く使われ、庶民の生活空間に調和する控えめな装飾性を持つ。「矢来垣(やらいがき)」は武家屋敷で防護性と装飾性を兼ね、江戸の階級社会や美的価値観を映している。「竹垣」は江戸時代(1603〜1867年)の浮世絵や名所図会にも描かれ、当時の生活景観の一部として記録されている。

熟練職人の手仕事で作られる「竹垣」は、竹の選別や節の向き、編み方に細やかな技が注がれる。縄にはシュロの黒縄を用い、結び方で締まり具合や装飾性を調整。竹の形や間隔にも職人の美意識が宿る。現代でも庭園や茶庭、旅館で広く用いられていることが多い。青竹は数年で煤竹色に変化。また、縄の性質により結び目が締まることで「竹垣」全体が穏やかな表情に育つ。こうした経年変化は、日本人が自然や時間の移ろいを趣として楽しむ文化的価値を示している。

ポイント

  • 「竹垣」は庭や建物の景観を整える日本独自の垣根。
  • 「間」の思想で余白や光・風の通り道を意識している。
  • 建仁寺垣・四ツ目垣・矢来垣など用途で種類が分かれる。
  • 江戸時代の浮世絵や名所図会に生活景観として描かれた。
  • 熟練職人の技と経年変化で趣ある景観要素として育つ。

写真

  • 縦に並べて結ぶ「建仁寺垣」

    縦に並べて結ぶ「建仁寺垣」

  • 縦横に編む「四ツ目垣」

    縦横に編む「四ツ目垣」

  • 斜めに編む「矢来垣」

    斜めに編む「矢来垣」

  • 龍安寺の桜。四季の風情を引き立てる竹垣

    龍安寺の桜。四季の風情を引き立てる竹垣

  • 竹垣作りも庭師の仕事のひとつ

    竹垣作りも庭師の仕事のひとつ

  • 竹垣の種類に合わせた結び方に

    竹垣の種類に合わせた結び方に

基本情報

正式名称
竹垣
材料
真竹(まだけ)、孟宗竹(もうそうちく)、淡竹(はちく)
種類
建仁寺垣、四ツ目垣、矢来垣、根来垣(ねごろがき)、金閣垣(きんかくがき)、桃山垣(ももやまがき)
結び方
いぼ結び、巻き結び、角結び、かがり結び、平結び