【藤枝市・静岡市「駿州の旅」日帰りモデルコース】
江戸時代の面影を求め、東海道の日本遺産歴史スポットをめぐる

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筆者 : GOOD LUCK TRIP

日本のほぼ中央に位置し、世界遺産の富士山があることでも知られる静岡。
かつて「駿州」と呼ばれていたこのエリアは、江戸(現在の東京)と京都を結ぶ東海道の通り道として古くから人の往来が多く、江戸時代から続く建物や食文化、伝統工芸、絶景が数多く残り、日本遺産にも認定されています。そんな歴史のある静岡を余すことなく楽しめる日帰り旅へ出かけてみませんか。

「東海道五十三次」とは?

「東海道」とは、江戸時代の将軍・徳川家康の命令によって作られた、江戸と京都(のちに大阪まで延伸)を結ぶ街道です。約492km続く街道沿いには53の宿場が整備され、公用の旅人や荷物を、宿場から宿場へとリレーのように継ぎ送りしたことから「五十三次」と呼ばれていました。
これら東海道の宿場の様子や名所、風景を叙情的に描いた作品が、歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」です。
浮世絵「東海道五十三次」は、江戸時代の庶民の間で大ヒット。日本だけでなく海外でも人気の高い作品です。

歌川広重が描いた浮世絵「東海道五十三次」は世界的にも有名
歌川広重が描いた浮世絵「東海道五十三次」は世界的にも有名

日本初の旅ブームは、ベストセラー小説がきっかけ!

江戸時代は、人びとの自由な移動は制限されていた時代でしたが、神社仏閣を巡る旅や治療目的の旅であれば許されていたため、参詣や温泉療養という理由で旅に出たとされています。そして1802年に、主人公の弥次さん喜多さんが東海道を旅する物語「東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)」が発行されると、物語に出てくる東海道の各所が旅行者で賑わいました。また、歌川広重が描いた浮世絵「東海道五十三次」も旅ブームの火付け役の一つとされています。

静岡市の駿府城公園前には小説の主人公、弥次さん、喜多さんの銅像が立つ
静岡市の駿府城公園前には小説の主人公、弥次さん、喜多さんの銅像が立つ

静岡へのアクセス方法は?

静岡には、国内線と国際線が発着する富士山静岡空港があります。国際線は、ソウル、上海、台北などと結ばれていて、今後は東南アジア路線も増えていく予定。アジア諸国から直接アクセスできるので、比較的簡単に訪れることができます。
すでに日本に滞在中で、都心部からアクセスする場合は、東海道新幹線が便利。東京から約1時間、新大阪から約1時間50分、名古屋から約55分の移動時間で静岡に行くことができます。

※一部運休中の路線があります。最新情報は富士山静岡空港公式サイト等でご確認ください。

富士山静岡空港からのアクセス

今回の目的地は、2つの市を跨いで点在しているので、レンタカーでのドライブがオススメ。富士山静岡空港のターミナルビル1階到着ロビーのレンタカー受付窓口で、行き先を伝えれば、乗り捨てができる県内営業所を教えてくれます。静岡駅周辺で乗り捨てれば、次の旅先へアクセスしやすく、利便性も抜群です。
最初の目的地である「岡部宿 大旅籠柏屋」は、車で約40分。山と海に囲まれた風光明媚な静岡の景色を眺めながらドライブを楽しみましょう。

藤枝市・静岡市「駿州の旅」モデルコース

岡部宿 大旅籠柏屋で、当時の宿や暮らしを学ぶ

「岡部宿 大旅籠柏屋(おおはたごかしばや)」に到着すると、そこはまるで江戸時代にタイムスリップしたかのように、当時の面影を残す木造建築が姿を現します。なかでも2度の大火を乗り越え、1836年に建築された主屋歴史資料館は必見。当時の宿泊施設の様子や人びとの暮らしがわかる貴重な資料が展示されています。中に入ると、まず目に飛び込むのが、「東海道中膝栗毛」の主人公である弥次さん喜多さんの人形。峠を越えて、一休みする当時の姿が想像できます。

約180年前に建築された主屋歴史資料館。2000年から一般公開されています
約180年前に建築された主屋歴史資料館。2000年から一般公開されています
入口の左側「みせの間」には、女将と話す弥次さん喜多さんの姿が
入口の左側「みせの間」には、女将と話す弥次さん喜多さんの姿が

弥次さん喜多さんの人形の後ろには、2階へと続く階段があり、一般旅行者が宿泊した客間があります。昔のつくりの建物のため、階段は急こう配。手すりを持ちながらゆっくりと、江戸時代の人たちに思いを馳せながら登るのも一興です。
2階客間の奥には、当時の宿場の役割や様子を、貴重な資料を通じて学べる展示コーナーも。木製の携帯用枕、火打ち道具入れ、当時の通貨である銅銭など旅の道具が飾られ、現代の旅に持っていくものとの違いをうかがい知ることができます。

一般の旅行者が利用していた2階の客間。所持品を少なくすることが重要だった江戸時代の旅人の服装にも注目
一般の旅行者が利用していた2階の客間。所持品を少なくすることが重要だった江戸時代の旅人の服装にも注目
展示コーナーには、宿場や東海道の旅についての資料が盛りだくさん
展示コーナーには、宿場や東海道の旅についての資料が盛りだくさん
提灯、ろうそくなどの実用品のほか、たばこ道具などの嗜好品も持ち歩いていたとされています
提灯、ろうそくなどの実用品のほか、たばこ道具などの嗜好品も持ち歩いていたとされています

再び1階へと戻り、通路の反対側へ。こちらは武士が宿泊していた本座敷。本座敷の畳には、2階客間の畳にはなかった、ヘリ(畳の強度や清潔さを保つための縁の装飾)があり、貴重な欄間が飾られるなど、格式高い雰囲気を楽しめます。
また、本座敷からは日本庭園を望むことができ、その景色は日本の美を感じることができます。その場で座り、ほっと一息ついて、和建築に身を委ねてみてはいかがでしょうか?

本座敷から眺める日本庭園の景色。ゆったりとしたひと時を味わうことができます
本座敷から眺める日本庭園の景色。ゆったりとしたひと時を味わうことができます
組子細工の欄間。こだわりが感じられる細かい意匠もチェック
組子細工の欄間。こだわりが感じられる細かい意匠もチェック

お土産やカフェなども要チェック

敷地内には、物産店やカフェ、ギャラリーなども併設されています。物産店は、地場特産品をはじめ、レトロな駄菓子やおもちゃなどを販売。特に、1636年創業の静岡最古の酒蔵、初亀醸造の酒粕を使用した商品が人気だそうです。
カフェでは、地元の食材を使った創作料理やデザートなどを味わうことができ、ギャラリーでは、絵画や工芸などの企画展も開催されています。ともに江戸期と明治期に建築され蔵として利用していた建物をリノベーションしているので、外から眺めたり、写真撮影をしたりと見るだけでも価値が高い建物です。

静岡県の民芸品や工芸品などがズラリ。隣接する茶屋では柏餅も販売
静岡県の民芸品や工芸品などがズラリ。隣接する茶屋では柏餅も販売
右側がカフェ、左側がギャラリー。なまこ壁など風情を感じられる佇まいが魅力
右側がカフェ、左側がギャラリー。なまこ壁など風情を感じられる佇まいが魅力

駿府の工房 匠宿で、日本の伝統工芸に触れる

「岡部宿 大旅籠柏屋」から車を走らせること約10分。東海道五十三次の宿場町・丸子宿にある「駿府の工房 匠宿」にたどり着きます。こちらは、2021年5月にリニューアルしたばかりの伝統工芸を体験できる施設で、木のぬくもり溢れる、洗練された和風建築も魅力です。

入口には、静岡の伝統的な凧である駿河凧が飾られ、エントランスには、駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)でつくられた照明が目に飛び込んできます。駿河竹千筋細工とは、江戸時代の1840年ごろに生み出された技法で、丸ひご(竹の棒を丸く削ったもの)を一本一本手作業により組み立てていき、その姿が千本の筋に見えることから名づけられたとされる竹細工です。

自然豊かな山々に囲まれ、ひと際輝きを放つ和建築
自然豊かな山々に囲まれ、ひと際輝きを放つ和建築
エントランスの駿河竹千筋細工の照明は作家の谷俊幸さんの作品。思わず見とれてしまう美しさがあります
エントランスの駿河竹千筋細工の照明は作家の谷俊幸さんの作品。思わず見とれてしまう美しさがあります

そんな駿河竹千筋細工の制作体験にチャレンジ。ペン立て、小物入れ、コースターなど、自分のつくりたいメニューを選びます。今回は、丸いフォルムと竹ひごの曲線が美しい「ペン立て こはる」をつくりました。
まずは、あらかじめ用意されている竹細工キットを並べ、必要なものが揃っているか確認。説明書を見ながら組み立てていきます。竹を編み板状にしたあじろを丸く切り、ペン立ての底の部分である下輪に入れます。その後、44個の穴が開いている上下の輪に竹ひごを丁寧に差していきます。すべて差し終えて、ゆがみを調整し、ボンドを塗れば完成。所要時間30分ほどの簡単な体験なうえに、迷ったらスタッフが丁寧に教えてくれるので、初心者でも安心です。

道具が揃っているのを確認後、あじろを丸く切っていきます
道具が揃っているのを確認後、あじろを丸く切っていきます
竹ひごを、上下の輪に差し込む工程。片手で上から押さえるようにして差していくのがコツ
竹ひごを、上下の輪に差し込む工程。片手で上から押さえるようにして差していくのがコツ
すべての竹ひごを差し込めば完成。ペン立てのほか、サイズの合った器やグラスを入れれば、花器としても使うことができます
すべての竹ひごを差し込めば完成。ペン立てのほか、サイズの合った器やグラスを入れれば、花器としても使うことができます

駿河竹千筋細工のほか、染めもの、陶芸、漆、木工など数々の伝統工芸を体験できます。そのほとんどが、予約なしの当日申し込みでも体験できるので、現地で実際に作品に触れてから自分好みの体験を決めましょう。
また、「ギャラリーTeto Teto」では、匠宿に在籍する職人の作品をはじめ、日本全国から集めた工芸品や民芸品を購入できます。取り揃えている作品は、伝統技術を使って、今の暮らしに合わせたモダンな日用品ばかり。工芸体験した後に訪れればまた違った視点で、商品選びを楽しめるはずです。

藍染め体験は、Tシャツやハンカチ、ストールなどから選べます
藍染め体験は、Tシャツやハンカチ、ストールなどから選べます
漆が塗ってあるお箸を砥石で研ぎ、色漆と貝殻の模様を出す体験。旅の思い出に
漆が塗ってあるお箸を砥石で研ぎ、色漆と貝殻の模様を出す体験。旅の思い出に
お茶染めの手ぬぐいやストール、駿河竹千筋細工のバッグや花器など、見た目も美しい作品が揃っています
お茶染めの手ぬぐいやストール、駿河竹千筋細工のバッグや花器など、見た目も美しい作品が揃っています

静岡の食材を使ったランチを堪能しよう

「駿府の工房 匠宿」には、地元・丸子産のハチミツを使用したカフェ「HACHI & MITSU」が併設。静岡の食材を使ったランチやドリンク、デザートなどを味わうことができます。
今回いただいたのが、HACHI&MITSUハンバーグ。数種類から選べるソースの中でもハニーマスタードがおすすめです。酸味を感じられるマスタードに地元のハチミツを入れることで、まろやかでコク深い味わいになります。添えられている旬の野菜もほとんどが静岡産。静岡の“おいしい”を満喫できます。

インテリアパネルなどに伝統工芸品を取り入れた、落ち着いた店内
インテリアパネルなどに伝統工芸品を取り入れた、落ち着いた店内
HACHI&MITSUハンバーグ1,800円。パンorライスとスープがセットになっています。
HACHI&MITSUハンバーグ1,800円。パンorライスとスープがセットになっています。

江戸時代から愛され続ける安倍川もちを味わう

次に向かったのは、江戸時代から続く老舗和菓子店「石部屋」。こちらの名物は安倍川もちです。
1600年代からつくられていたと伝わり、腹持ちがいいため当時から旅人に愛され、常に街道の茶店で売られていたとされています。もともとはつきたての白い餅だけでしたが、その後、きな粉をまぶし、やがて駿河の白砂糖をかけるように。そして白砂糖を使い始めた1804年に創業したのが「石部屋」です。
安倍川もちの魅力は何といってもつきたての餅。注文を受けてから湯煎で温めているお餅をひと口サイズにちぎり、あんこで包んだり、きな粉と白砂糖をまぶしたりします。柔らかさの中にもしっかりとした歯ごたえがあり、餅本来のおいしさに気づかせてくれます。

こし餡と、きな粉と砂糖をまぶしたものが各4個入りで800円。テイクアウトもあり
こし餡と、きな粉と砂糖をまぶしたものが各4個入りで800円。テイクアウトもあり
昔と変わらない製法でつくる、15代目の長田満さん
昔と変わらない製法でつくる、15代目の長田満さん
安倍川の近くに立地。観光客やハイカーなどがひっきりなしで訪れます
安倍川の近くに立地。観光客やハイカーなどがひっきりなしで訪れます

もう一つの名物・からみ餅もお忘れなく

静岡の名産品であるわさび、醤油とともに楽しむ、からみ餅もぜひ味わいたい一品です。安倍川もちと同じく、湯煎した餅を注文後にちぎり、提供されるのですが、あんこやきな粉がかかっていない分、また違う食感を楽しむことができます。こちらはイートインでしか食べられないのでご注意を。

わさび醤油で味わう、からみ餅800円も絶品
わさび醤油で味わう、からみ餅800円も絶品
店内には明治・大正時代の写真などが飾られ、その歴史の深さを感じることができます
店内には明治・大正時代の写真などが飾られ、その歴史の深さを感じることができます

三保松原の歴史と文化をわかりやすく解説

静岡の銘菓で腹ごしらえした後は、県道84号線を南下し、国道150号線を東へ。海沿いのドライブを満喫しながら進むと次の目的地が見えてきます。
ここは海岸線から望む、富士山と松林が人気の絶景スポット「三保松原(みほのまつばら)」。2019年3月には、古くから日本人に愛され続ける価値や魅力、松原保全の大切さを発信する、静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」がオープンし、案内所としての機能も果たしています。

まずは2種類の映像を鑑賞できる映像シアターへ。三保松原と雄大な富士山の姿が映し出され、これから直に眺める富士山への気持ちを高ぶらせてくれます。展示室では、景勝地としての三保松原をはじめ、富士山信仰、日本の伝統芸能である能の演目の舞台となった羽衣伝説、室町時代の絵図や江戸時代の浮世絵などに代表される芸術との関係などを学ぶことができます。日本語、英語、中国語、韓国語対応の劇場型音声ガイドもあるので、より理解を深められます。

約3分と約6分の映像で、三保松原と富士山について解説してくれます
約3分と約6分の映像で、三保松原と富士山について解説してくれます
三保松原についてわかりやすく学べるように6つのテーマで構成
三保松原についてわかりやすく学べるように6つのテーマで構成

静岡市三保松原文化創造センター「みほしるべ」は、三保松原散策の休憩所としても活用できます。三保松原に関する浮世絵ポスターが飾られる通り土間には、ベンチが設置され、館内には、無料で使えるコインロッカーもあります。また、冬季の土日祝限定で、松の入浴剤を使用した足湯を楽しむことができます。
その他、ミュージアムショップも併設され、三保松原にちなんだかわいいオリジナル商品が目白押し。旅の思い出を持ち帰りましょう。

暖かい日差しが差し込む通り土間。浮世絵ポスターや写真などが飾られています
暖かい日差しが差し込む通り土間。浮世絵ポスターや写真などが飾られています
富士山関連のグッズなどが勢ぞろい。足湯のタオルはこちらでゲットしましょう
富士山関連のグッズなどが勢ぞろい。足湯のタオルはこちらでゲットしましょう
屋上からは静岡の街並みの向こう側に佇む富士山を望むことも
屋上からは静岡の街並みの向こう側に佇む富士山を望むことも

絶景富士山のビュースポットへ!

三保松原の歴史や文化を学んだ後は、お待ちかねの富士山が見える海岸へ。松林を抜けて、海岸に出ると左手に、凛とした姿でそびえ立つ富士山が見えます。まずはこちらで記念撮影。そして三保松原、富士山、海を撮影したいなら、海岸沿いを少し南へ下りテトラポット付近まで移動しましょう。まるで絵画のような景色が広がり、見るものを感動させます。その姿を、綺麗に撮影したいなら朝の7時から8時がベスト。澄んだ空気の中、朝日を浴びた富士山の美しは旅の思い出にぴったりです。

約5kmの海岸に3万本ほどの松が生い茂る三保松原
約5kmの海岸に3万本ほどの松が生い茂る三保松原
高さ約15m、枝はり最大25m、幹周り約3.5mの羽衣の松は見もの
高さ約15m、枝はり最大25m、幹周り約3.5mの羽衣の松は見もの
遮るものがない富士山の絶景をカメラでパシャリ!
遮るものがない富士山の絶景をカメラでパシャリ!

まとめ

江戸時代から残る宿場や食、伝統工芸、絶景に触れる1日旅はいかがでしたか。
静岡市での滞在を考えている方は、串に刺した牛すじ、練物、大根、玉子などを煮込み、青のりや魚のだし粉をかけて食べるご当地グルメの静岡おでんを食べて1日を終えるのもおすすめです。また、藤枝市に戻る場合は、朝ラーメンはいかがでしょう? 早朝仕事が多いこのエリアならではの文化で、さっぱりスープは朝から食べても胃もたれなし! その他、久能山東照宮や茶畑などまだまだ魅力がいっぱい。日本の歴史が詰まった藤枝・静岡「駿州の旅」へ出かけてみませんか。