
日本人の日常生活に根付く文化を体験!銭湯の魅力と楽しみ方ガイド
日本人にとって「銭湯」は、身近なものでありながら非日常を感じられる特別な場所だ。
入浴施設というだけでなく、心のリセットや地域コミュニティの場など、文化的な役割も担ってきた。
長い歴史の中で形を変えつつも、現在も日本人の日常に溶け込んでいる。
この記事では銭湯の概要と楽しみ方をはじめ、利用の流れ・マナーといった気になるポイントを詳しく紹介する。
全国でお勧めの銭湯もまとめたので、銭湯文化に興味がある人は最後まで読んでほしい。
日本人が日常的に利用する公衆浴場「銭湯」
銭湯とは、地域住民が日常的に利用する公衆浴場のことを指す。
各自治体の公衆浴場条例(一般公衆浴場)に基づき営業される施設で、基本的には入浴を主目的とし、男女別の大浴場・洗い場を備える。
水道水を加温した温湯を使う銭湯のほか、源泉を使う「温泉銭湯」もあり、設備・規模は施設によって様々。
日本人にとっては古くから地域コミュニティの場として機能し、世代を超えた交流拠点や心身のリフレッシュなど、大切な役割を担ってきた。
時代の変化とともに減少傾向であるものの、現代社会の今も重要な場所であり続けている。
古くから日本人の生活に根付く銭湯の歴史
銭湯の起源は奈良時代(710年〜794年)に遡る。
当時のお寺では、仏教の教えに基づく「沐浴(もくよく)」という清めの儀式として浴場を設け、貧者・病人に入浴の場を振る舞う「施浴(せよく)」が無料で行われていた。
鎌倉時代(1185年〜1333年)に入ると、庶民の間でも入浴習慣が広まったが、荘園制度の崩壊とともにお寺の財政状況がひっ迫していく。
そこで入浴料を取る形態が生まれ、この有料入浴施設が銭湯の始まりと考えられている。
江戸時代(1603年〜1868年)になると銭湯は急速に普及し、生活の一部に定着する。
明治時代(1868年〜1912年)以降は混浴の禁止、様々な設備改良によって近代化が進んだ。
戦後は住宅の風呂普及で利用者が減る一方、昭和後期にはスーパー銭湯が登場し、多様な入浴文化へスタイルを変えた。
近年は価値が再評価されており、銭湯は古くから日本人の日常に深く結びついた文化遺産と言えるだろう。

文化的空間としての一面を持つ銭湯
銭湯は入浴を楽しめるだけでなく、地域の生活文化や建築・アートに触れられる「文化的空間」が魅力だ。
遠くからも目印となる高い煙突は町のランドマーク的存在で、瓦屋根や唐破風(からはふ)を備えた重厚な外観は地域に根ざした風格を放つ。
庶民的なデザインの看板・暖簾、色ガラスの出入り口といった随所に顔を見せる、独自の工夫も見どころ。
内部に目を向けると、銭湯の象徴的な存在で見守りの役割も果たす「番台」がお客さんとの交流のきっかけを作っている。
浴場の壁一面に描かれた富士山、四季の風景などのペンキ絵は銭湯ならではの光景で、非日常的で不思議な感覚を味わえる。
その他、タイル細工・木製の格子窓をはじめ、様々な所に宿る暮らしの知恵と美意識にも注目してほしい。

東京と大阪の銭湯の違い
同じ銭湯でも歴史的背景や街の成り立ちなどの理由から、エリアごとに特徴は大きく異なる。
ここでは、東京(関東)と大阪(関西)の銭湯の違いを下記の表にまとめた。
気風や生活習慣といった地域性が見られるので、様々な場所で楽しむのもお勧めだ。
- | 東京 | 大阪 |
---|---|---|
全体 | デザイン・利便性を重視、おしゃれな施設が多い | 庶民性・人情味が強く、老舗銭湯や地域密着型の銭湯が多い |
特徴・雰囲気 | 小規模でシンプルな浴場構成、常連客との交流が根付く店が多い | サウナ文化が根付き大規模施設も充実、大阪らしい賑やかな空間が多い |
料金(上限) | 550円 | 600円 |
壁画 | 富士山などのペンキ絵が多い | 長持ちするタイル絵が多い |
湯船の位置 | 浴場の奥に湯船が設置されている | 浴場の中央に湯船が配置されている |
湯桶のサイズ | 大きめ(蛇口でお湯を汲む習慣から) | 小さめ(湯船からお湯をすくう習慣から) |
現代のライフスタイルに合わせて進化した「ネオ銭湯」
近年では、従来の銭湯を現代的にリニューアルした「ネオ銭湯」が注目を集めている。
昔ながらの情緒を大切にしつつも、モダンでおしゃれなデザインの内外装をはじめ、今時のライフスタイルやデザイン志向に合わせた作りが特徴だ。
サウナ・炭酸泉といった多彩なお風呂の設備・各種サービスも充実が図られており、銭湯を進化させた公衆浴場だと想像すればわかりやすいだろう。
また、ビアバー・DJブース、マッサージ併設の施設もあり、入浴以外の時間を楽しめるのも魅力のひとつ。
気軽に訪問できるうえに、日本の入浴文化を新たな形で再発見させてくれるので足を運んでみてほしい。

銭湯と温泉の違い
銭湯と似たような役割、特徴を持つのが「温泉」と「スーパー銭湯」だ。
いずれも湯で整うことが目的だが、厳密には細かな違いがあるので、それぞれを比較する形で表にまとめた。
簡単に言えば、銭湯は地域の日常に密着した簡素な施設、温泉は天然の湯を生かした観光向け施設、スーパー銭湯は設備が充実したレジャー性の高い施設である。
項目 | 銭湯 | 温泉 | スーパー銭湯 |
---|---|---|---|
法律の適用 | 公衆浴場法の「一般公衆浴場」 | 温泉法 | 公衆浴場法の「その他の公衆浴場」 |
お湯の種類 | 主に水道水を加温※温泉水使う場所もあり | 地下から湧出する天然の温泉(定義を満たすもの) | 水道水・温泉水(施設ごとに異なる) |
利用目的 | 日常的な入浴・衛生 | 観光・療養・リラクゼーション | 娯楽・癒し・リフレッシュ |
料金設定 | 都道府県の条例で統一(300〜600円) | 規定なし、施設・宿泊の質で大幅に変動 | 自由に設定、銭湯より高め(1,000円〜) |
規模・設備 | 比較的小規模、浴槽・洗い場が中心 | 露天・貸切風呂・源泉掛け流しなど多彩 | 岩盤浴・食事処・休憩スペースなど付加設備が多い |
銭湯の魅力を満喫できる3つの楽しみ方
銭湯は入浴の場であると同時に他にもたくさんの魅力が詰まっている。
日本独自の建築・美意識を体現した外観・内観をはじめ、銭湯ならではの趣など、訪日観光客にとっては驚きが多いだろう。
代表的な3つの楽しみ方を紹介するので参考にしてほしい。
湯船に浸かりながら背景絵を楽しむ
銭湯の背景絵とは、浴場正面の壁一面に描かれた大型のペンキ絵を指す。
特に東京を中心とした関東の銭湯に多く見られる伝統的な装飾芸術で、全国各地の名所や風光明媚な景色がモチーフになっている。
地域による違いもあり、近年では海外の山、キャラクターといったユニークなデザインも増えてきた。
日本の象徴で縁起が良いとされるため、富士山が背景絵として最も有名だ。
古来より日本人にとって神聖で信仰の対象であったこと、空間に奥行きが生まれて入浴中のリラックスを助けるといった理由もあり、富士山が描かれている銭湯は多い。
湯船に浸かりながら背景絵をゆったり眺めてリラックスしよう。

地元の人々との交流を楽しむ
地元の人々と同じ時間を過ごして交流できるのも銭湯ならではの楽しみだ。
脱衣所・休憩所で常連客や住民と話し、一緒に湯船に浸かることで、日本の日常生活をリアルに感じられる。
裸で同じ空間を共有するので国籍・身分・職業といった垣根もなくなり、自然に対等な立場でつながりを築きやすいのもポイント。
初めての人でも溶け込める温かさがあり、生きたコミュニティを通じて、インターネットではわからない、その町の日常生活を体験できるはずだ。

お風呂上がりに瓶牛乳を味わう
お風呂上がりに味わう牛乳は、銭湯などの入浴施設における醍醐味のひとつ。
腰に手を当てて牛乳を一気に飲む習慣は日本の伝統的なスタイルで、銭湯で過ごす時間を一層豊かにする。
熱でほてった体にひんやりとしたガラス瓶の冷たさが心地よく、牛乳のまろやかな甘みが喉と体を満たす瞬間は言葉にできないほど格別だ。
見た目もノスタルジック、飲み終えた後の返却瓶が並ぶ光景にも風情を感じられる。
最近は牛乳のほかにコーヒー牛乳やフルーツ牛乳、軽食が並ぶこともあり、好みで選べるのもうれしい。
ちなみに、昭和30年代に牛乳の消費を増やすために、乳業メーカーが販路として活用したのが銭湯に牛乳が置いてある理由だ。

銭湯を利用する際に必要な持ち物
銭湯を利用する際に持参した方が良い持ち物をカテゴリー別にまとめた。
施設によって設備・レンタル品・アメニティの有無は異なるので、必需品だけは用意しておこう。
必需品
- 現金
- 入浴料・自販機・牛乳瓶などに必要、小銭を用意しておくと役に立つ
- タオル類
- 浴場で使うフェイスタオルと体を拭くバスタオルの2種類
- 着替え類
- 湯上がりのための上下服のほか、下着・靴下も忘れずに
- シャンプー・リンス・石鹸
- 販売・貸出・備え付けの場合もあるが持参が安心
あると便利なもの
- ビニール袋
- 濡れタオルや下着などを入れる
- ポーチ
- シャンプーなどをまとめて浴場に持ち込める
- 水筒・ペットボトル
- 入浴後の水分補給用(冷水機・自販機がない施設もある)
- ヘアゴム・シャワーキャップ
- 髪の長い人はマナーを守るために
- 化粧落とし・スキンケア
- 必要に応じて
銭湯を利用する流れ
銭湯を利用する際の一般的な流れは以下の通り。
施設によってルールは異なるが、基本的にはこの手順を押さえておけばスムーズに過ごせる。
- 1. 到着
- 靴を下駄箱にしまう ※鍵付きタイプの場合は忘れずに保管
- 2. 入館・支払い
- 番台で入浴料を支払う ※必要に応じてタオルなどをレンタル
- 3. 脱衣所
- 脱衣所で服を脱ぎ、荷物をロッカー等に収納 ※貴重品の管理に気をつける
- 4. かけ湯・洗い場
- 最初にかけ湯で体を流し、洗い場で髪と身体を洗う
- 5. 入浴
- 浴槽でリラックス ※長湯に気を付ける
- 6. 脱浴・小休憩
- 入浴後、脱衣所や休憩所で水分補給をして着替えを済ませる
- 7. 退館
- 忘れ物がないか確認後、お礼を言って退館
銭湯を利用するために知っておくべきマナーとルール
銭湯は地元民をはじめ、たくさんの人が利用する公共施設である。
お互いに気持ちの良い時間を過ごすためにも、しっかりとマナーを守らなければならない。
一人ひとりの心遣いが全員の快適につながるので、以下に記載したルールは必ず頭に入れておこう。
- 基本事項
-
・入館前にルールを確認し、遵守する
・体調不良時や飲酒後は行かない
・他者への配慮を忘れずに静かに利用する
・脱衣所ではスマホを使わない(盗撮防止)
・タトゥー、入れ墨がある人は確認する(基本的にNGの施設が多い) - 浴場内
-
・大声や私語を控える
・裸で入浴する
・体を洗う前(湯舟に入る前)に必ずかけ湯をする
・シャワーは座って使う(周りの人への水はね防止)
・使用したイスや洗面器は軽く流して元の位置に戻す
・タオルを湯船に入れない(頭にのせるか脇におく)
・長い髪はヘアゴムで結ぶ(湯船に入れるのはマナー違反)
・浴場から脱衣所に戻る時は手前で体を拭く
銭湯文化を楽しみたいなら東京と大阪へ
銭湯文化を満喫したいなら、東京と大阪がお勧めだ。
両都市は銭湯の数が全国1位・2位(令和5年度 厚労省「衛生行政報告例」)であり、多彩な銭湯が点在している。
また、どちらも日本を代表する人気スポットが多いので、銭湯だけでなく観光もしっかりと楽しめる。
それぞれの街で銭湯巡りをすれば、土地柄の違いを知り、多様な入浴文化をより深く体感できるだろう。
伝統と流行どちらも感じられる東京のお勧め銭湯5選
ここからは、東京でお勧めの銭湯を紹介していこう。
いずれも創業が古く、伝統的な外観や歴史的建築を生かしながら、現代のニーズに合わせて設備・サービスを進化させている人気の場所だ。
観光途中にもふらっと立ち寄れるので、近くを通った際はぜひ足を運んでほしい。
1. 明神湯
東急池上線「雪が谷大塚駅」から徒歩約14分、大田区の閑静な住宅街に位置する昔ながらの銭湯。
外観は伝統的な和風の宮造り様式を保ち、富士山の大きなペンキ絵や折上格天井の広い脱衣場、木製ロッカーといった昭和レトロな空間が魅力だ。
浴槽はジェットバス・薬湯など日替わりの変化を楽しめ、番台文化を残す温かい接客で地域に愛されている。
映画・ドラマのロケ地にも使われる風格ある佇まいは、ノスタルジックな気分を味わうのにぴったり。

2. 改良湯
JR山手線「渋谷駅」と「恵比寿駅」のほぼ中間(両駅より徒歩約10分)にある、大正5(1916)年創業の老舗銭湯。
昭和から続く銭湯文化を残しつつ2018年にリニューアル、快適設備で若い世代や観光客を呼び込み、地元常連客と新しい客層が混ざる居心地の良さが魅力。
外壁に描かれた巨大なクジラの絵が目印で、内装はモダンなデザイン、浴場には現代作家による背景画が配されている。
浴槽は肌にやさしい軟水を使った炭酸泉風呂・中温風呂・水風呂、サウナ(別料金)を備えるほか、イベント湯も定期的に開催。
都会の中でリラックスできる癒しのスポットとして人気だ。

3. タカラ湯
各線「北千住駅」より徒歩20分ほどの場所にある、威風堂々たる破風造り(宮造り)が印象的な銭湯。
「キングオブ縁側」と呼ばれる美しい日本庭園が自慢で、庭園に咲く四季の花々は都内随一との声も。
また、縁側越しに庭を眺めながら湯上がりにくつろげる趣は旅館さながらで、昭和の風情が色濃く残るレトロな意匠が写真映えする。
入り口の弓矢のオブジェや板看板をはじめ、館内の格天井・富士山の背景画など、銭湯文化を伝える様々な造作も見どころ。
薬湯・気泡風呂・赤外線風呂といった複数種類の浴槽のほか、井戸水を薪で沸かす柔らかい湯質も好評だ。

4. 黄金湯
JR「錦糸町駅」から徒歩6分ほど、江戸情緒が漂う下町エリアにある「黄金湯」は今までにない形を追い求め続ける銭湯。
創業は昭和7(1932)年と古いが、2020年の全面リニューアルによって、現代的でユニークなデザインの空間に生まれ変わった。
入り口の番台バーはビアバーとDJブースを備え、お風呂上がりにクラフトビールや交流を楽しめる。
また、5種類の浴槽をはじめ、ロウリュサウナ(別料金)・宿泊施設・飲食店など、設備が非常に充実しており、新しい銭湯文化を体験できる。
※利用時間最大1時間30分(宿泊時を除く)、タトゥーのある人も入浴可

5. 武蔵小山温泉 清水湯
大正12(1923)年創業の老舗銭湯。敷地内には黒湯と黄金湯の2つの天然温泉が湧出しており、贅沢にかけ流しで使用。
銭湯価格で2種類の天然温泉が楽しめると人気を集めている。
深さ200メートルから湧き出る琥珀色の黒湯は、都内の黒湯でも特にきめが細かく、澄んだ琥珀色の上質の温泉。保湿・保温効果が高く、美肌の湯として知られている。

多彩な浴槽・サービスを楽しめる大阪のお勧め銭湯5選
続いて、大阪でお勧めの銭湯も紹介していく。
大阪の銭湯文化を象徴する施設で、多彩な浴槽に加えて、休憩スペースや軽食コーナーといった設備の充実が魅力だ。
東京とは異なる趣、雰囲気を楽しめるはずなので、気になった銭湯に足を運んでほしい。
1. 夢の公衆浴場 五色
豊中市庄内栄町、阪急宝塚線「庄内駅」から徒歩約15分の場所にある大型の公衆浴場。
銭湯というカテゴリーでは日本最大級の規模を誇り、浴槽も高温・露天・高濃度炭酸泉など全11種類の多彩なラインアップが揃う。
ロビー中央の鯉が泳ぐ噴水、浴場のモザイクタイルやペンキ絵も見どころで視覚的にも楽しめる。
また、年中無休・24時間営業(月曜午前は設備点検で閉館)、無料の駐車場60台完備、深夜料金なしと、いつでも気軽に利用しやすい環境も魅力だ。

2. 朝日温泉
大阪市住之江区、南海高野線「沢ノ町駅」から徒歩約10分の場所にある地域密着型の公衆浴場。
地元メディアを中心に様々な媒体で取り上げられており、独自のお店運営で注目を集める有名な施設だ。
定期的な音楽ライブ・子ども向けのイベントをはじめ、カーリング大会やファイヤーショーなどエンタメ要素が満載でファミリー層の人気も高い。
全ての浴槽で軟水を利用しているため肌にやさしく、入浴後はしっとりとした感触を得られるのも魅力。

3. ヘルシー温泉タテバ
大阪市浪速区、地下鉄千日前線「桜川駅」、JR環状線「芦原橋駅」から徒歩10分ほどの場所にある銭湯。
内湯・露天・ジェットバス・炭酸泉といった多彩な浴槽に加え、サウナ設備の充実が大きな特徴だ。
ドライサウナ・塩サウナ・スチームサウナ(無料)を男女日替わりで入れ替え運用、水風呂は深めでしっかり冷やせるつくりになっている。
外気浴・休憩スペースのととのう導線も万全で、サウナ好きの期待に応える。
さらに、軽食コーナー・飲み物販売・マッサージ機・日焼けサロンも完備し、手ぶらで訪れても楽しめるのもポイント。

4. 湯処 あべの橋
各線「天王寺駅」より徒歩約5分、あべのキューズモールの西側にある駅チカの庶民派銭湯。
大阪市港区の「天然温泉テルメ龍宮」から天然温泉を毎日搬送しており、冷え性・病後回復に効能があると言われる清潔で新鮮な温泉を楽しめるのが最大の魅力だ。
さらに、大浴場はジェットバスや白湯、電気風呂・スチームサウナ(無料)など充実した設備でゆっくりとくつろげる。
広めのロビー・高級マッサージチェア・ドリンク類の取り揃えもあり、お手ごろな銭湯価格で湯めぐり気分を味わえるだろう。

5. 千鳥温泉
大阪市、阪神なんば線「千鳥橋駅」から徒歩6分の場所にある銭湯。
浴室にある小さな豆タイルで描かれた富士山の背景絵は珍しく、他ではあまり見られない。
浴室と脱衣場には昭和の風情が漂うものの、待合室は明るくて広いため、誰でも利用しやすい雰囲気となっている。
また、脱衣場にあるレトロなマッサージ機も特徴のひとつ。サウナを無料で利用できるのも嬉しいポイントだ。

東京・大阪だけじゃない!日本全国各地に点在する魅力的な銭湯8選
銭湯文化は東京・大阪だけのものでなく全国に存在し、地域や施設ごとに歴史を持っている。
最後に北は北海道、南は福岡まで、各地に散らばるお勧めの銭湯を紹介しよう。
外観・内観ともに日本的な伝統美を残している施設が多く、風情を楽しみながら疲れを癒せる。
いずれもリーズナブルな価格設定かつ手軽に入れるため、該当の地域を観光する際は立ち寄ってほしい。
【北海道】月見湯
札幌市豊平区、札幌市営地下鉄東豊線「福住駅」より徒歩約10分の場所にある銭湯。
100台以上収容できる無料の駐車場を完備しているため、車でのアクセスがお勧め。
家族経営のアットホームな接客とメンテナンスが行き届いた清潔な空間、昔懐かしいレトロ感が魅力で観光客からの人気も高い。
高温湯・バイブラバス・ラドン風呂など多彩な浴槽が揃うほか、充実のサウナサービスも特徴のひとつ。
サウナヒーター世界シェアNo.1のHARVIAを導入、専属の熱波師によるロウリュ・熱波サービスも定期的に行われるのでサウナ好きは必見だ。

【宮城】駒の湯
仙台市の中心部・国分町エリアにある老舗銭湯。
繫華街にありながらも古き良き時代の面影を残しており、昭和にタイムスリップしたかのような気分を味わえる。
日本三景のひとつであり、宮城が誇る「松島」の風景が描かれた浴場のペンキ絵も見どころ。
規模はコンパクトだが、ドライサウナ・コインランドリー・タオルやシャンプー類の販売など、旅行客も利用しやすい環境が整っている。
また、入浴料が1人480円というリーズナブルな点もうれしい。

【愛知】金時湯
各線「名古屋駅」から徒歩10分ほどの場所にある利便性の高い銭湯。
昭和3年(1928)年創業と歴史が古く、築50年以上の文化的価値を持つ建造物は愛知県の「登録地域建造物資産No.90」に認定されている。
地下約110〜120メートルの井戸水を汲み上げて沸かす、肌にやさしい柔らかな湯が人気だ。
浴槽は半身浴と全身浴の両方を楽しめる深さが2段に分かれた設計なほか、電気風呂・泡風呂も備え、レトロな雰囲気の中でリラックスできる。
モザイクタイルの看板や昭和の趣を残した内装も特徴的で、昔ながらの銭湯の良さを感じられるだろう。

【福井】東湯
福井県大野市、JR越美北線「越前大野駅」から徒歩約10分の場所にある銭湯。
木造の建物自体が地域を代表する景観として評価されており、「景観特選おおの」に名を連ねる歴史的な佇まいが魅力だ。
昭和の銭湯文化を色濃く残し、入り口の暖簾をくぐると番台や木製ロッカー、瓶牛乳が置かれた湯上がりの風景など、懐かしさを感じる空間が広がる。
浴場は大きなL字型浴槽に玉石タイルという王道のつくりで、薪で焚いた熱い湯やドクダミとヨモギを使用した薬湯に浸かれば、旅の疲れが癒されるだろう。

【京都】船岡温泉
京都市北区紫野、金閣寺にほど近い船岡山の麓にある銭湯、船岡温泉。
脱衣所から浴室まで大正・昭和の趣を色濃く残しており、2003年7月に現役の銭湯としては全国3例目、京都では初となる国の有形登録文化財に指定された。
電気風呂は1933(昭和8)年に日本で初めて設置されたもので、二代目当主が温泉の出ない京都で温泉認可を取るために導入し、「特殊船岡温泉」として認可を受けたのだという。
そして、露天風呂には、庭石として珍重される高級石材で、水をかけると七色に変化するという不思議な銘石・貴船石を贅沢に使っている。

【広島】yubune
生口島・瀬戸田にある宿泊施設で、島の住人と同じ時間と体験を共有することで交流が生まれるよう、銭湯が併設されている。
浴場の壁には瀬戸田の風景や魚の絵が、日本の典型的な銭湯らしくタイルで描かれている。湯船につかってリラックスしながら、タイル画を見上げたい。
もちろん、日帰り入浴も可能だ。

【愛媛】道後温泉 本館
「日本書紀」にも記され、日本最古と言われる道後温泉。
脚を痛めた白鷺が道後温泉で傷を癒やしたという伝説が残されている。
アルカリ性単純泉の湯質は、肌に優しいなめらかなお湯で、刺激が少なく湯治や美容にも適している。
また、道後温泉本館は国の重要文化財にも指定されており、歴史を感じさせる壮麗な建築物。

【福岡】本庄湯
福岡市中央区、西鉄「薬院駅」、福岡市地下鉄「天神南駅」から徒歩圏内にある銭湯。
1955年代の雰囲気を感じられる古風かつコンパクトなつくりで、木の香りが漂う館内や番台スタイル、タイル壁画といった素朴な設備が特徴だ。
備え付けのシャワーは動かせず、熱湯と冷水しか出ないため(自分で調整)、現代では貴重な体験もできるだろう。
天神の繁華街も近いので散策後に立ち寄るのもお勧め。

銭湯に関するよくある質問
Q
銭湯にはタオルやシャンプーなどの貸し出しはあるの?
持参が必要な施設もあれば、無料あるいは有料で貸し出しを行う施設もあります。
Q
銭湯では水着で入浴できる?
多くの施設では水着での入浴はできません。古くより日本の銭湯は身体を清める場所として受け継がれており、衛生面・文化面が禁止の理由に挙げられます。
Q
タトゥーを入れていても入浴できる?
施設によって異なりますが、基本的に入館できないと考えてください。ただ、訪日観光客のワンポイントタトゥーなどは例外とする場合もあります。
まとめ
銭湯の歴史や楽しみ方、知っておきたい利用時のルールを中心に紹介してきた。
手軽な料金設定で入りやすい銭湯は、日本文化を五感で感じられる多彩な魅力を備えている。
伝統的な建築様式の外観、富士山のペンキ絵・番台といった独特の内観、地域住民との交流など、様々な形で満喫できるだろう。
昔ながらの情緒に触れ、日常にある小さな幸福を重ねると、自然と心も軽くなるので実際に味わってほしい。
温泉が好きな人は、日本で人気の温泉郷・秘湯をまとめたこちらの記事も要チェック。