悠久の歴史と文化を感じられる東大寺の観光ガイド

悠久の歴史と文化を感じられる東大寺の観光ガイド

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筆者 : GOOD LUCK TRIP

「奈良の大仏」で有名な「東大寺」。
国宝や重要文化財に指定される歴史的建造物が多いだけでなく、心を穏やかにする写経や写仏など、手軽に参加可能な仏教体験もある。
毎日行われる「十一面護摩祈祷」、歴史を学べる「東大寺ミュージアム」も見逃せない。
見どころ盛りだくさんの「東大寺」を満喫するために知っておきたい、歴史と必見スポットを紹介しよう。

東大寺ってどんなところ?

奈良県奈良市、660haの奈良公園にある「東大寺」。
1998年に「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録された、奈良を代表する寺院だ。
注目すべき点は、なんと言っても「奈良の大仏さま」として知られる「盧舎那仏坐像」が安置されていること。
他にも三月堂の名で有名な「法華堂」、「大仏殿」や「南大門」など、国宝や重要文化財に指定された歴史的建造物が多数存在している。
校倉造の「正倉院」、重さ約26tの梵鐘を吊るした鐘楼、錣葺屋根の「念仏堂」も必見だ。
「大仏殿」には、観光客に人気のお土産も盛りだくさん。
8種類の生薬を配合した入浴剤や手ぬぐい、大仏がデザインされたクリアファイルや長寿箸など、「東大寺」でしか買えないグッズを見逃さないようにしよう。

若草山のススキ越しに見る東大寺大仏殿と奈良の町並み
若草山のススキ越しに見る東大寺大仏殿と奈良の町並み

東大寺の歴史と成り立ち

728年に聖武天皇(しょうむてんのう)の皇太子・基親王(もといしんのう)の冥福を祈る目的で「金鍾山寺」が建てられた。
聖武天皇が国を治めていた時代は、飢饉や疫病の流行など多くの災いが起きていた。「仏様の力で国を守ろう」と考えた聖武天皇は、寺院を建立するように指示。
その指示によって「金鍾山寺」は、国分寺(天皇の指示によって建立した寺院)へと昇格し「金光明寺」に名称を変えた。「金光明寺」は現在の「東大寺」の前身である。
743年に国の平和を願って、聖武天皇が大仏を造るように指示。
その指示によって造られた大仏が、現在の東大寺に安置されている「盧舎那仏」だ。
その後も様々な建造物が建てられて、平和を祈願する「東大寺」が完成した。
しかし、855年の大地震や落雷で、講堂や南大門などの建物が倒壊。
1180年には平重衡(たいらのしげひら)による焼き討ちにより、大仏殿も焼失した。
1190年に大仏殿を再建するも、戦国時代には複数の建物が戦火に巻き込まれ焼失。
江戸時代に修理が認められ、失われた建造物の復興も成し遂げられた。
明治以降は改修と修理を繰り返し、現在に至る。

国の平和と繁栄を願って造られた「盧舎那仏」
国の平和と繁栄を願って造られた「盧舎那仏」

東大寺へのアクセス

京都や奈良の観光の移動拠点となる、「近鉄京都駅」と「JR奈良駅」からのアクセスを案内しよう。

交通手段 経路 所要時間
電車 近鉄京都線「京都駅」から特急に乗り、近鉄奈良線「奈良駅」下車。「奈良駅」から徒歩20分 約1時間
バス 「JR奈良駅」より市内循環バスへ乗車、「東大寺大仏殿・春日大社前」下車、徒歩5分 約15分

「近鉄京都駅」は「JR京都駅」に隣接し、徒歩で乗り換え可能だ。
近鉄奈良線「奈良駅」下車後は約1.4kmも歩くため、履き慣れた靴をお勧めする。

東大寺の拝観料と拝観時間

「東大寺」のある「奈良公園」は24時間開放されており、入場料もかからない。
ただ、「東大寺」は拝観時間が限られており、施設によっては拝観料がかかるため、以下の情報を参考にしてほしい。

東大寺の拝観時間

「大仏殿」と「東大寺ミュージアム」は季節によって拝観時間が異なるため、観光の際は気をつけてほしい。

大仏殿
・4月〜10月 7:30~17:30
・11月〜3月 8:00~17:00
法華堂(三月堂)・戒壇院千手堂
8:30~16:00
東大寺ミュージアム
・4月〜10月 9:30~17:30(最終入館17:00)
・11月〜3月 9:30~17:00(最終入館16:30)

東大寺の拝観料

大仏殿・法華堂・千手堂・東大寺ミュージアムの4つの施設は、それぞれ下記の拝観料が必要だ。
支払いは現金のみとなるため、事前に用意しておこう。

中学生以上
600円
小学生
300円

東大寺のお勧め観光シーズンは?

「東大寺」の観光は、春と秋がお勧めだ。
春は二月堂で「修二会」と呼ばれる、1250年以上続く行事が開催される。
特に見ごたえがあるのは、舞台上で松明を振り回す「お松明」。
漆黒の夜に燃える松明は、驚くほど幻想的で美しい。
火の粉を浴びると厄除けになるが、火傷には注意しよう。
秋は、境内の紅葉を堪能できる。
モミジやイチョウが彩る、鏡池と大仏殿が並ぶ光景はまるで絵画。
秋に訪れたら、情緒あふれる境内をゆっくり散策してほしい。

「修二会」の見どころである「お松明」の様子
「修二会」の見どころである「お松明」の様子
秋には境内を紅葉が彩る
秋には境内を紅葉が彩る

東大寺の絶対に訪れるべきスポット5選

国宝や重要文化財に指定される、歴史的価値が高い建造物が多い「東大寺」。
「大仏殿」や「南大門」をはじめとする、仏教建築を語る上で欠かせない建造物も見どころだ。
見どころが多い「東大寺」の中でも、絶対に訪れるべきスポットを厳選して紹介しよう。

1. 世界最大級の木造建築物「大仏殿」

「東大寺」の本堂である「大仏殿」は、高さ約48m・幅57mで、世界最大級の木造建築物。1952年には、国宝へ指定された。
現在の建物は江戸時代に再建されたものだが、創建当時の「大仏殿」は横幅が現在より約1.5倍も広かったと伝えられる。
「大仏殿」には「奈良の大仏」として親しまれている「盧舎那仏坐像」が安置されており、高さ約15m・重さ250tと圧倒的な大きさを誇る。
大仏の鼻の穴と、同じサイズの穴が開けられた柱があり、穴をくぐれば無病息災・祈願成就のご利益を授かると伝わる。

世界最大級の木造建築物の「大仏殿」
世界最大級の木造建築物の「大仏殿」
「奈良の大仏」として親しまれている巨大な仏像
「奈良の大仏」として親しまれている巨大な仏像
大人は通り抜けるのが難しいサイズの柱の穴
大人は通り抜けるのが難しいサイズの柱の穴

2. 見どころ盛りだくさんの「南大門」

日本で最大級の重層門。
入母屋造の五間三戸二重門と複雑な構造で、国宝にも指定されている。
21mの大円柱が18本組み込まれ、ベースを含めた門の高さは約25mにも及ぶ。
門の中は西側に阿形、東側に吽形の金剛力士(仁王)像を配置。
金剛力士像も南大門と同じように国宝へ指定され、日本史の教科書には必ず紹介されている。
1203年に当時の仏師によって、わずか69日で仕上げられたというから驚きだ。
夏になると、大仏殿や中門回廊と共にライトアップ。
陰影がはっきりし、彫刻の美しさも際立つ。
裏側には日本最古の狛犬と伝わる、重要文化財の石獅子像が設置されている。

複雑な構造で見るものを魅了する「南大門」
複雑な構造で見るものを魅了する「南大門」
「金剛力士(仁王)像」も見逃せない
「金剛力士(仁王)像」も見逃せない

3. 春の風物詩である修二会が行われる「二月堂」

旧暦の2月にお堂で行われる法要に由来し、「二月堂」と呼ばれるようになった。
1667年に火事で焼失し、2年後の1669年に再建。
屋根は寄棟造、建物は舞台造で国宝に指定されている。
舞台造とは、自然の地形を利用して床を設置する建築様式。
建物へ向かう南側の石段には、1段目〜3段目まで模様が刻印されている。
唐草文様や青海波、網代など、当時の職人が刻んだ美しい模様も見逃せない。

石段にも見どころがある「二月堂」
石段にも見どころがある「二月堂」

4. 国宝が眠る「戒壇院戒壇堂」

754年に唐の僧侶である鑑真和上(がんじんわじょう)が日本を訪れ、その時の天皇は仏教徒となった。
天皇が仏教の戒律を受けて、守ることを誓った場所に「戒壇院戒壇堂」は建てられた。
1180年の火災で焼失するも、1732年に再建。
「戒壇院戒壇堂」自体も県の指定重要文化財に指定されており、多聞天・広目天・増長天・持国天からなる国宝の「四天王像」も安置している。
2020年7月1日〜2023年秋まで、補修と耐震工事のため、一時的に拝観を停止している。その代わりに「戒壇院千手堂」を特別公開中。
2023年秋には再開予定だ。

県の指定重要文化財に指定されている「戒壇院戒壇堂」
県の指定重要文化財に指定されている「戒壇院戒壇堂」

5. 東大寺最古の建造物「法華堂(三月堂)」

733年から747年の間に創建されたと伝わる、「東大寺」で最も古い建物。
当初から正堂と礼堂の双堂形式が採用されていたが、礼堂は1199年に僧侶の重源(ちょうげん)によって新築されたものだ。
「東大寺」の前身である「金鍾山寺」の建物のひとつとされ、華厳経が日本で初めて講義された場所でもある。
「法華堂」も国宝に指定されている。

東大寺で最も古い建物である「法華堂」
東大寺で最も古い建物である「法華堂」

東大寺周辺の観光スポット3選

奈良公園の歴史は古く、「東大寺」以外にも多くの文化遺産が残されている。
神社や仏閣、豊かな自然を身近に感じ、奈良を思い出に刻んでほしい。
「東大寺」の見学と合わせて、ぜひ立ち寄ってもらいたいスポットを紹介しよう。

1. 興福寺

藤原鎌足の私邸、山階寺として山背国・山階陶原(やましろのくに・やましなすえはら)に建てられたのがはじまりで、和銅3(710)年、平城京遷都にともない藤原不比等の計画により現在の場所に移され、「興福寺」と改名。
奈良時代には四大寺、平安時代には七大寺のひとつとして栄えたが、1180年の平重衡の南都焼討で大半を焼失。
鎌倉時代に復興するが、その後も被災と再建を繰り返し、江戸時代に入り享保2(1717)年の火災で、北円堂、東金堂、五重塔、三重塔、食堂(じきどう)以外の中心伽藍を焼失した。
その後、徐々に復興が進み、2018年には中金堂が約300年ぶりに復興を果たした。

世界遺産に登録される古刹で、奈良時代の四大寺のひとつとして栄えた寺院
世界遺産に登録される古刹で、奈良時代の四大寺のひとつとして栄えた寺院

2. 春日大社

奈良時代の初め、平城京の守護と国の繁栄のために茨城県の鹿島から武甕槌命が神鹿に乗って御蓋山に降り立ったとされ、768年に御蓋山の麓に御本殿を造営、武甕槌命、経津主命、天児屋根命、比売神の4柱の神様を祀ったことが始まりとされている。
現在も年間2200回におよぶ神事が行われ、特に3月13日に行われる「春日祭」は1200年以上続く日本三大勅祭のひとつ。
御蓋山(春日山)は古来より神様が鎮まる聖地として信仰を集めた神山。
平安時代には狩猟・伐採が禁じられたことから原生林が現在も残り、国の特別天然記念物にも指定されている。
1998年には春日大社および春日山原始林は世界遺産「古都奈良の文化財」のひとつとして登録された。

平城京の守護と国の繁栄のために創建された全国に約3,000社ある春日神社の総本山
平城京の守護と国の繁栄のために創建された全国に約3,000社ある春日神社の総本山

3. 瑜伽山園地(旧山口氏南都別邸庭園)

奈良公園の南端、浮見堂と鷺池の南側に位置する広さ約1.3haの園地。
瑜伽山と鷺池などが一体となる絶景地として、昭和2年(1927)に国指定文化財「名勝 奈良公園」への追加指定を受けた。
この地は、明治期から大正期に大阪財界で活躍した山口吉郎兵衛氏の別荘があった場所で、かつて文人墨客が交流を図ったという史実も残る。
園地内の庭園は近代の奈良公園を代表する庭園で、県による復元整備を経て2020年から一般公開が始まった。
庭園には瑜伽山の起伏を活かした園路があり、高低差のある庭をゆったりと回遊できる。

2020年に一般公開された、旧財閥別荘跡地の庭園
2020年に一般公開された、旧財閥別荘跡地の庭園

東大寺に関するよくある質問

Q

東大寺の見どころは?

A

大仏殿・南大門・二月堂・戒壇院戒壇堂・法華堂です。

Q

東大寺は誰が何のために建てたの?

A

聖武天皇の発案で、仏の加護により国を安定させるため。

Q

奈良の大仏は誰が作ったの?

A

飛鳥時代〜奈良時代に活躍した僧侶の行基(ぎょうき)です。

まとめ

国宝・重要文化財に指定された歴史的建造物をはじめ、見どころが多い「東大寺」。
悠久の歴史と文化を感じられる境内を散策すれば、驚きと感動が止まらないだろう。
「東大寺」の他にも、歴史と文化を感じられるスポットが多い奈良を旅するなら、こちらの記事もチェックしてほしい。