日本の歴史・文化を満喫しよう!比叡山延暦寺の完全観光ガイド

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筆者 : GOOD LUCK TRIP

比叡山延暦寺」は天台宗の総本山(その宗派を取りまとめる寺院)であり、1,200年を超える歴史を持つ世界文化遺産として有名なお寺。
せっかく「比叡山延暦寺」を訪れるなら、その魅力を満喫したいと思うはずだ。
この記事では「比叡山延暦寺」を初めて訪れる方に向けて、見どころや広大な敷地の中で分けられた3つのエリアごとの特徴はもちろん、おすすめの観光シーズンなど、観光を満喫するために必要な情報をできるだけ詳しく紹介していこう。

目次

比叡山延暦寺ってどんなところ?

「比叡山」とは京都府と滋賀県の県境に位置する山地で、敷地の約9割は滋賀県。
「比叡山」の山内にある約1700ヘクタールの境内に点在する、100ほどの仏堂の総称が「延暦寺」だ。
「比叡山」の山上から東を見渡すと、日本一の大きさを誇る「びわ湖」が、西を見渡すと古都京都の町並が広がる景勝地。
「比叡山」の美しい自然に育まれてきた、1200年の歴史と伝統が高い評価をうけ、1994年にはユネスコ世界文化遺産に登録された。

「比叡山延暦寺」は788年に、仏教僧の最澄(さいちょう)により建てられた。
創建当時は「一乗止観院」という名前であったが、最澄の死後に天皇から「延暦寺」という名前を授かって、「比叡山延暦寺」と呼ばれるように。
「比叡山延暦寺」は世界の平和と平安を祈る寺院であり、さらには人材育成の道場でもあった。
法然上人(ほうねんしょうにん)・親鸞聖人(しんらんしょうにん)・道元禅師(どうげんぜんじ)・日蓮聖人(にちれんしょうにん)といった、日本の仏教界の名だたる僧たちも、「比叡山延暦寺」で僧侶になるための修行や儀式を受けた。
このことから「日本仏教の母山」とも呼ばれている。
織田信長(おだ のぶなが)による焼き討ちにあい、多くの仏堂や塔が失われるものの、豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)や徳川家康(とくがわ いえやす)に仕えた僧などの尽力により復興した。

比叡山から見下ろす、滋賀県の琵琶湖
比叡山から見下ろす、滋賀県の琵琶湖

比叡山延暦寺へのアクセス

「比叡山延暦寺」へのアクセスには、京都市内と滋賀県大津市から向かう2つのルートがある。お勧めは滋賀県大津市のルート。
滋賀県大津市坂本は最澄の生まれ育った場所で、「比叡山延暦寺」の塔頭や昔ながらの景観が残っており、見どころが多い。「比叡山の表玄関」とも呼ばれている。

京都市からのアクセス

京都市から「比叡山延暦寺」への主なアクセス方法は以下の2パターンだ。

  • JR京都駅から比叡山ドライブバスを利用する方法
  • 京阪電車とケーブルカー・ロープウェイを利用する方法

JR京都駅から比叡山ドライブバスを利用する方法

ひとつ目はJR京都駅から「比叡山延暦寺」へ向かう、比叡山ドライブバスに乗る方法。
途中で乗り換える必要がないため、一番便利な行き方だ。
ただし、1月4日から春分の日の前日までは、バスが運行していないため、注意が必要。
JR京都駅から「比叡山延暦寺」の最寄りのバス停「延暦寺バスセンター」までの所要時間は約70分。
バスの本数は1日に4本と少ないため、乗り遅れないように行きと帰りのバスの時刻表を事前に確認しておこう。

京阪電車とケーブルカー・ロープウェイを利用する方法

ふたつ目は京阪電車とケーブルカー・ロープウェイを利用する方法。
京都市にある叡山電鉄叡山線の出町柳駅から、八瀬比叡山口駅まで電車で移動。
改札を出て、徒歩5分の位置にある叡山ケーブルのケーブル八瀬駅に向かう。
八瀬ケーブル駅にて叡山ロープウェイへ乗り継ぎ、待ち時間を省くと約3分で比叡山の山頂まで行ける。
ロープウェイは運行していない期間があるため、注意が必要だ。
バスに比べて乗り換えは多いが、ケーブルカーやロープウェイから比叡山の自然景観や京都の市街地を一望できる。
時間をかけて、景色をゆっくり楽しみたい方にお勧めの方法だ。

滋賀県大津市からのアクセス

滋賀県大津市から「比叡山延暦寺」に向かう場合は、JR比叡山坂本駅から出発する。JR比叡山坂本駅からケーブル坂本駅まで、徒歩なら約20分。
バスやタクシーも利用できるが、道中には昔ながらの景色や「比叡山延暦寺」の塔頭が残っており、見どころが多いため、徒歩で駅まで向かうのがお勧めだ。
ケーブル坂本駅から比叡山鉄道坂本ケーブルに乗り、ケーブル延暦寺駅で降りる。
ケーブル延暦寺駅から「比叡山延暦寺」の総本堂である「根本中堂」まで、徒歩約7分で移動できる。
ケーブルカーの本数が1時間に約2本と少ないため、乗り遅れないよう注意が必要。

比叡山延暦寺の拝観料と参拝時間

「比叡山延暦寺」の参拝料金は「東塔」「西塔」「横川」の3エリア共通券で大人1人あたり1,000円。中高生の場合は600円、小学生の場合は300円で参拝が可能。
国宝殿の拝観料は大人500円、中高生は300円、小学生は100円となっている。
参拝時間は通常9:00〜16:00だが、冬季の「西塔・横川地区」は9:30〜16:00と短くなるため注意が必要だ。

参拝時間

東塔地区・山麓 滋賀院 生源寺
9:00〜16:00
西塔・横川地区
1〜2月 9:30〜16:00
3〜11月 9:00〜16:00
12月 9:30〜16:00

拝観料

東塔・西塔・横川共通券
大人:1,000円
中高生:600円
小学生:300円
国宝殿(宝物館)拝観料
大人:500円
中高生:300円
小学生:300円

比叡山延暦寺のお勧め観光シーズンは?

「比叡山延暦寺」の観光なら秋がお勧め。
約2,000本のモミジがいたるところで色づき、歴史的建造物と紅葉が調和した美しい景観が広がる。
冬には雪景色を楽しむことができ、春には約40種類の樹種の桜が咲き、趣ゆたかな美しさを楽しめるため、好みに合わせて観光時期を調整しよう。

紅葉が彩る「比叡山延暦寺」
紅葉が彩る「比叡山延暦寺」

効率よく観光するなら知っておくべき比叡山延暦寺3つのエリア

「比叡山延暦寺」は3つのエリアに分かれている。
東側の「東塔(とうどう)」西側の「西塔(さいとう)」北側の「横川(よかわ)」、それぞれのエリアにお堂や塔が点在する。
全てのエリアを観光する時間が取れない場合は、「東塔」に絞って観光しよう。
「東塔」には歴史的に重要な建物が多く残り、延暦寺の中心とも呼ばれる地区。
延暦寺の観光では外せないエリアだ。

延暦寺発祥の地「東塔」

「東塔」は最澄が延暦寺を開いた発祥の地であり、延暦寺の総本堂にあたる「根本中堂」を中心とするエリア。
国宝の「根元中堂」、国重要文化財に指定される「大講堂」や鐘楼が国重要文化財に指定される「阿弥陀堂」など、重要な建物が集まっている。
約1,200年間灯り続ける「不滅の法灯」も、「東堂」に安置されている。
「東塔」には延暦寺バスセンターがあるため、比叡山山頂や西塔・横川地区へのアクセスも良く、京都市内行きの路線バスや大津市坂本へ降りる坂本ケーブルも利用できる。
観光所要時間は1時間〜2時間ほど。
エリア内で食事をとる場合は、1時間プラスで想定しておこう。

重要な建物が集まる「東塔」
重要な建物が集まる「東塔」

延暦寺最古の建築物「釈迦堂」がある「西塔」

「東塔」から北に1kmほどの所にある「西塔」。
「西塔」の本堂であり、国重要文化財に指定されている「釈迦堂」や、最澄の遺骸が眠る「浄土院」、弁慶が建物全体を担いだと伝説が語り継がれる「常行堂・法華堂」など、歴史ある建物が集まっている。
研修道場である「居士林」もあり、そこでは実際に修行体験ができる。
「東塔」から「西塔」へ向かう場合は、シャトルバスにて約5分。
徒歩の場合は20分ほど。
「横川」から向かう場合は、シャトルバスにて10分ほど要する。
「西塔」の観光には、30分ほど見ておけば充分だろう。

延暦寺最古の建築物「釈迦堂」
延暦寺最古の建築物「釈迦堂」

木々がうっそうと茂る静謐なエリア「横川」

「西塔」から北へ4kmほど進んだ場所にある「横川」。
遣唐使船がモデルとなった舞台造りの本堂「横川中堂」や、おみくじ発祥の地といわれる「四季講堂」、天台宗を大成させた慈覚大師 円仁(えんにん)が写経した仏教経典を納めていた多宝塔「根本如宝塔」がある。
「東塔」から「横川」へ向かう場合は、シャトルバスにて15分。
徒歩の場合、東海道自然歩道を通り、100分以上かかる。
「西塔」から向かう場合は、シャトルバスにて10分ほど。
「横川」の観光所要時間は40分ほどだろう。

「横川」の本堂「横川中堂」
「横川」の本堂「横川中堂」

比叡山延暦寺の絶対に見逃せない見どころ5選

ユネスコ世界文化遺産に認定された「比叡山延暦寺」は、広大な境内に多数のお堂があり、丸1日かけて楽しめる観光スポットだ。
ここでは最も重要な建造物が集まる「東塔」に絞り、「比叡山延暦寺」を訪れるなら絶対に見逃せない見どころを紹介しよう。

1. 根本中堂

東塔にある「根本中堂」は、延暦寺最大の仏堂であり、延暦寺の総本堂にあたる。
建物は国宝に、廻廊は国重要文化財に指定されている歴史的名所だ。
「根本中堂」の本尊を安置する場所では、1,200年灯り続ける灯明「不滅の法灯」が見られる。
延暦寺観光で必ず訪れるべきスポットだ。

「比叡山延暦寺」の総本堂である「根本中堂」
「比叡山延暦寺」の総本堂である「根本中堂」

2. 法華総持院東塔

最澄は国を鎮め国民の幸せを祈るために、日本全国6ヵ所に宝塔の建立を計画。
最澄の死後に、全ての宝塔が完成した。
その宝塔を総括する重要な役割を担っているのが、「法華総持院東塔」だ。
国宝的人材づくりの旗印としても名高い場所である。
織田信長の焼き討ちで焼失したが、約400年後の1980年に再建された。

六所宝塔を総括する役割を持つ「法華総持院東塔」
六所宝塔を総括する役割を持つ「法華総持院東塔」

3. 大講堂

「根本中堂」の近くにあり、国指定の重要文化財である「大講堂」。
824年に創建されるも、何度も焼失・復興を繰り返しており、現在の建物は1963年に山麓坂本の讃仏堂を移築したものだ。
大講堂内部には本尊である大日如来に加え、比叡山で修行した法然・親鸞など、各宗派の宗祖の木像が祀られている。
拝礼する場所では、仏教・天台宗ゆかりの高僧の肖像画が見られる。

国指定の重要文化財の「大講堂」
国指定の重要文化財の「大講堂」

4. 阿弥陀堂

「東塔」で最も標高の高い場所に建つ「阿弥陀堂」。
延暦寺開創1150年を記念し、1937年に建てられた道場である。
阿弥陀如来がご本尊として祀られており、先祖を供養する場として使用されている。
天井まわりの部材には平安時代後期〜鎌倉時代中期の様式である、極彩色が施されているのも特徴のひとつだ。
国重要文化財に指定されている、お堂前の鐘楼も見逃せない。

1937年に建てられた道場「阿弥陀堂」
1937年に建てられた道場「阿弥陀堂」

5. 文殊楼

根本中堂前の高い石段を登った場所にある「文殊楼」。
「比叡山延暦寺」の正門の役目を果たす重要な楼門だ。
比叡山をトレッキングする際の代表的なルートである本坂を登ってくると、まずこの門をくぐることになる。
知恵の神様である「文殊菩薩」が祀られており、学業のご利益があると、受験生の合格祈願などで賑わう。

「比叡山延暦寺」の正門にあたる「文殊楼」
「比叡山延暦寺」の正門にあたる「文殊楼」

比叡山延暦寺の周辺観光スポット3選

比叡山延暦寺周辺には人気の観光スポットとなっているお寺や神社が多い。
日本の歴史と文化を満喫するためにも、ぜひこれから紹介する3つの観光スポットにも訪れてほしい。

1. 浮御堂(満月寺)

琵琶湖大橋南側の湖岸にある臨済宗大徳寺派の禅寺、海門山満月寺。その境内には、琵琶湖へ橋を渡した先にお堂が建っている。湖面に浮いているように見えることから浮御堂と呼ばれる、琵琶湖でも指折りの景勝地だ。
室町時代に選定された近江八景の一つ「堅田の落雁」としても名高い地。江戸時代以降、多くの俳人や文人墨客に愛され、浮御堂にちなんだ句や作品が残されている。

古くから近江八景の一つ「堅田の落雁」として知られてきた、琵琶湖を代表する景勝地
古くから近江八景の一つ「堅田の落雁」として知られてきた、琵琶湖を代表する景勝地

2. 白鬚神社

日本一の面積を誇る琵琶湖の北西部に立ち、創建から2000年以上とされる近江最古の大社。国道161号線を挟んだ湖中に朱塗りの大鳥居があり、広島県宮島にある嚴島神社を思わせる光景から、「近江の嚴島」とも呼ばれている。
全国に多数ある白鬚神社の総本社で、猿田彦命を御祭神として祀る。「白鬚」の社名の通り、古くから長寿白鬚の神として厚く信仰され、延命長寿にご利益があるとされる。

琵琶湖中にたつ大鳥居がシンボルの絶景パワースポットとして知られる神社
琵琶湖中にたつ大鳥居がシンボルの絶景パワースポットとして知られる神社

3. 山王総本宮 日吉大社

比叡山の麓におよそ2100年前に建立され、全国3800社の日吉・日枝・山王神社の総本宮。当時の都から見て表鬼門(北東)に位置することから都の魔除け、災難を防ぐ社として、また近くにある比叡山延暦寺の守護神として信仰されている。ご利益は、方角にまつわる災いを防ぐ「方除け」、人生の災いを事前に防ぐ「厄除け」。

ご利益をもたらしてくれる、シンボル「神猿」を見つけ出そう
ご利益をもたらしてくれる、シンボル「神猿」を見つけ出そう

比叡山延暦寺に関するよくある質問

Q

比叡山延暦寺はどこにあるの?

A

標高848mの比叡山全域を寺院の境内とし、京都府京都市と滋賀県大津市をまたぐ位置にあります。

Q

比叡山延暦寺を観光するのに必要な時間は?

A

東塔・西塔・横川エリアを観光する場合は、車ありで3〜4時間、車なしで4〜6時間必要。根本中堂や大講堂のある東塔エリアのみの場合は1〜2時間必要です。

Q

比叡山延暦寺はなぜ焼き打ちされたの?

A

織田信長を裏切った敵対勢力を匿った比叡山延暦寺。信長は延暦寺に対して味方になり、敵対勢力を追い出すよう通告しましたが、延暦寺は信長の通告にいっさい応答しなかったため焼き打ちにされました。

Q

比叡山の紅葉の時期は?

A

例年、10月下旬から11月中旬が見頃です。

Q

比叡山の桜の見頃は?

A

例年、4月下旬から5月上旬が見頃です。

まとめ

1,200年の歴史と美しい自然景観を併せ持つ「比叡山延暦寺」。
「比叡山延暦寺」の見どころから、満喫するために知っておくべき歴史やエリア構成、周辺の観光スポットまで、「比叡山延暦寺」を観光し尽くすために必要な情報をすべて紹介してきた。
「比叡山延暦寺」に初めて訪れる方は、ぜひこの記事を見ながら参拝してほしい。